新藤まなみの初主演作『遠くへ、もっと遠くへ』 この夏はいまおかしんじ祭り!
#映画 #パンドラ映画館 #いまおかしんじ
時代の流れは、年を追うごとにスピードを上げていく。流れに乗り続けるのは容易ではないし、うまく波に乗ったつもりでも、後戻りできないところまで流されてしまいかねない。そんな現代人が抱く不安や焦燥感を、優しくじんわりと癒してくれるのが、いまおかしんじ監督の作品だ。
ピンク映画出身の監督たちの多くがそうであるように、いまおか監督の作品も社会の変化に対応するのが不得手な、不器用な人たちが主人公となる。時代の流れに取り残されがちな人たち、マイペースすぎて周囲から浮いてしまった人たちを、いまおか監督はユーモアを込めて、温かく描いてきた。
人気情報番組『王様のブランチ』(TBS系)の元レポーター・新藤まなみが初主演したR15映画『遠くへ、もっと遠くへ』は、「映画芸術」が選ぶ「2020年日本映画ベスト10」の第1位に輝いた『れいこいるか』(20)に続く、いまおか監督の新しい代表作と呼べる魅力的なロードムービーとなっている。
家具店に勤める小夜子(新藤まなみ)はインテリアコーディネーターになるという夢を持ち、日々の仕事に情熱を注いで働いていた。その一方、結婚して5年になる夫との仲は、数年前から怪しくなっている。夫は口にはしないが、小夜子には早く仕事を辞めてもらい、妊活に励んでほしいと思っていることに小夜子は気づいていた。子づくりのために自分の夢を諦めることに、小夜子は抵抗を感じている。
夫と別れるつもりで、ひとり暮らし用の物件を探し始めた小夜子は、不動産屋で働くお人好しな洋平(吉村界人)と知り合う。洋平は3年前に妻・光子(和田瞳)が家を出ていったという。飲み屋で痛飲した小夜子と洋平は、お互いの内情を知り、意気投合。2人は有休を取り、洋平の妻を探す旅に向かうことになる。
美人で浮気性の光子は、手がかりを残して、居場所を転々としていた。洋平が迎えに来るのをどうやら待っていたらしい。光子の足跡を追って、洋平と小夜子は栃木県真岡から北海道札幌へ。妻の思い出をいつまでも引き摺り続ける洋平に、けじめを付けさせようとする小夜子だった。
家を出ていった妻を探し続ける、冴えない夫。この設定を聞いて、洋画好きな人ならヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』(84)を思い出すだろう。まさに本作は、いまおか監督が名作『パリ、テキサス』にオマージュを捧げたロードムービーとなっている。(1/4 P2はこちら)
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