トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ  > 十三人の合議制、史実では北条時政が主導?

『鎌倉殿の13人』いよいよタイトル回収! 合議制導入は北条時政が主導した?

梶原景時は頼家の“名誉回復”暗躍に失敗して失脚?

『鎌倉殿の13人』いよいよタイトル回収! 合議制導入は北条時政が主導した?の画像2
梶原景時(中村獅童)|ドラマ公式サイトより

 かつては頼朝に讒言し、源義経を貶めることに成功したとして知られる景時ですが、失脚のきっかけとなったのは、頼朝から特に強い信頼を寄せられ、寝室の警固も任せられていた結城(小山)朝光という武士を“ターゲット”としたことでした。

 『鎌倉殿』には頼朝の乳母は比企尼しか登場していませんが、実際は複数人おり、結城の母はそのうちのひとりで、寒河尼(さむかわのあま)と呼ばれている女性でした。そして、乳母である寒河尼に頼まれ、頼朝は彼女の息子である朝光を取り立てて側近くに置いていました。余談めいた紹介になりますが、寒河尼の縁故の一人が、『鎌倉殿』では装束の前がいつも大きく開いているワイルドな姿が印象的な八田知家(はった・ともいえ/市原隼人さん)です。八田も十三人の合議制のメンバーのひとりになっていますね。

 『鎌倉殿』では、畠山重忠(中川大志さん)に「寂しいお方です。心の底から嘆き悲しんでいるのは、お身内を除けばごくひと握り」と、頼朝が亡くなっても御家人の中には本気で悲しむものはほとんどいないと言われてしまっていましたが、史実では朝光らが頼朝の死を深く悼みました。正治元年10月には、結城は「夢でお告げを得た」として「亡き頼朝公のため、一万回の念仏を皆で唱えよう」と侍所の面々に訴え、念仏を唱和しています。この時、彼が「忠臣は二君に仕えずというが、私も頼朝公逝去の際に出家していればよかった」などと涙ながらに口走ったのですが、景時は彼の言葉を「頼家には仕える意思がない」などと“拡大解釈”し、「結城が謀反を企てている」と頼家に讒言してしまったのです。

 ちなみに景時の讒言を朝光が知ったのは、阿波局(ドラマでは実衣)が彼に告げ口したからでした。困った朝光が三浦義村に相談したことで、多くの御家人VS梶原景時の構図が出来上がっていき、景時追放へと傾いていくのですが、この裏には、北条一族を総動員してライバルである景時を権力の中枢から追い出そうという時政の意向があったのではとも思えますね。

 朝光はもともと「容貌美好、口弁分明(=美しい顔つきで、弁論も達者)」の人気者だったので、鎌倉中から多くの同情を集め、先述のとおり三浦義村を含む66人もの有力御家人たちが「景時糾弾訴状」を頼家に提出し、景時は鎌倉を追われることになりました。この時、景時はろくに弁明もしなかったそうです。

 景時は、自身の領国である相模国一宮(いちのみや)でしばらく謹慎していましたが、翌年(正治2年=1200年)1月、京都を目指して旅立っています。一説に景時は、京都の反・鎌倉幕府勢力と結託し、頼朝の一族ではなく、甲斐源氏を源氏の棟梁の座に据えようとしていたともいわれますが、いずれにせよ彼が京都にたどり着くことはありませんでした。景時は、鎌倉から送られてきた軍勢や地元の武士団と駿河の地で激しく交戦し、現在の梶原山山頂にて息子たちとともに自害しています。駿河の地は北条時政の領国でもあるので、何らかの政治的意図が働いたことは容易に想像がつきますね。

 策士として知られる景時にしては、あまりにあっけない最期だと思われるかもしれません。景時が結城(小山)朝光を讒言したのは、頼家の鎌倉殿としての威信を回復させる狙いがあったという見方もあります。梶原にとってもライバルの一人であったはずの朝光に謀反の疑いをかけ、頼家に討たせることで、失われつつあった頼家のカリスマ性が取り戻せると考えたのでは……という見立てによるものですが、実際のところの景時の目的は不明です。『鎌倉殿』では高橋侃さんが結城朝光を演じるということで、この事件がドラマでどう描かれるか楽しみですね。

<過去記事はコチラ>

堀江宏樹(作家/歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。原案監修をつとめるマンガ『La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~』が無料公開中(KADOKAWA)。ほかの著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

Twitter:@horiehiroki

ほりえひろき

最終更新:2023/02/21 12:30
12
ページ上部へ戻る

配給映画