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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 有吉弘行“らしさ”全開の蛭子さんとの交流

ギャラクシー賞『有吉クイズ』有吉弘行と蛭子能収の心の交歓の「その後」を振り返る

クズなところも、物覚えの悪さも、蛭子は変わっていなかった

 池で泳ぐ鯉を見ながら、2人の会話は弾んだ。

蛭子 「ここ、スゴいな、鯉」
有吉 「でも蛭子さん、魚は嫌いなんですよね、食べるのは」
蛭子 「食べるの、魚は苦手なんですよ」
有吉 「魚はなんで嫌いなんでしたっけ?」
蛭子 「魚はまず骨があるということと、それから食べても驚くほどの味じゃない」
有吉 「そんなことないですよ!(笑)」

 このあたりの辛辣さは、昔と全然変わっていないようだ。そして、身体的にも変わっていない。石段を登る蛭子の足取りがしっかりしているのだ。

有吉 「あ、全然、足腰もしっかりされてて」
蛭子 「そうなんですよ。歳はとってるけど、意外と歩けるんですよね」

 『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京系)で長距離を歩き、鍛えられた成果だろうか。普段から蛭子はよく歩くそうだ。

蛭子 「公園があるじゃないですか。しょっちゅう歩いて行ってたんですよ。それで、子どもたちが遊んでる様子を見るのが好きだった。子どもたちが1人か2人コケたりすると、面白いです」

 人の不幸が琴線に触れる、蛭子のクズっぷりは健在。やっぱり全然変わってない。

 さて、八芳園といえば有名なのは盆栽である。

蛭子 「盆栽? 盆栽って、ボンクラがやるような(笑)」
有吉 「やりませんよ、立派な人がやるんですよ。全然、興味ないじゃないですか(笑)。感じませんか、何か? だって、こんな小さなお盆の中に命があるっていう」
蛭子 「可哀想ですね」

 普通に悪口だし、盆栽を見て「可哀想」と感じる発想が蛭子節だ。日本庭園に来て、盆栽が心底どうでも良さそうな蛭子。根本は何も変わってなくて、安心した。

有吉 「植物育てたり、動物育てたりとかはないんですか?」
蛭子 「俺はそれはないですね。なんでか知らないけど、山と海はあんまり好きじゃないです」
有吉 「やっぱり、都会がいいんですか?」
蛭子 「都会がいい。一番、都会がいい。都会でご飯を食って帰るのがすごくいいです」
有吉 「今日、自然が見たいって言うからここ来たんですよ!?」
蛭子 「そんなこと言ったっけなあ……(笑)」
有吉 「言いましたよ! 都合のいいときだけ忘れたふりして(笑)」

 「症状のせいで忘れた?」とも思ったが、認知症以前から蛭子は「孫の名前を覚えていない」と堂々と口にする人だった。この物覚えの悪さも、彼の通常運転である。

有吉 「好きな花、ひとつくらいないんですか?」
蛭子 「チューリップみたいなはっきりわかるのが好きです」
有吉 「チューリップ。バラは好きですか? 嫌い?」
蛭子 「嫌いじゃないですよ。なんとも思ってないだけです(笑)」
有吉 「ハッハッハ! だから、花に興味ないんですよね?」
蛭子 「興味ないな(笑)」

 冒頭で「花は好き」と言っていたのに、前言撤回してあっさり自白する蛭子。『バス旅』では旅館より圧倒的にビジネスホテルでの宿泊を好んでいたし、自然より人工的なものを好むのがこの人だった。人も嗜好も昔からまったく変わっていない。

蛭子の絵を見て爆笑する有吉

 庭の縁側で2人はお茶を飲むことに。日に当たって休憩を取るのだ。

有吉 「俺、蛭子さんぐらいの歳になると、落ち着いてみんなに尊敬されるようなおじいさんになれるかなと思ったけど、無理でしょうね。子どものまんまでしょうね」
蛭子 「でも、そっちはわかりません。俺はそうなるかもわかりませんけど」
有吉 「蛭子さん、尊敬はできないけど、気軽に付き合えていいなとは思います」
蛭子 「ああ、そうそう。気軽なおじさんがいいね。それが一番いいなあと思います、本当に。気軽なおじさん、それが一番だよ」
有吉 「一番気軽な70代ですね、僕の中で」
蛭子 「そのほうが本当いいと思いますよ」

 前回のロケ以上に有吉が蛭子に気を遣っていないように見える。「尊敬できない」と言ったり、池に落とす振りをしたり、こんなにぞんざいに接することができる70代は、確かに他にいないだろう。

有吉 「蛭子さん認知症になっちゃったけど、でも全然、なんか僕、普通、いつも」
蛭子 「俺も全然なったっていう感じしませんね。たぶん、なってないと思う」
有吉 「ハッハッハ! そうだね、本人はそうですよね(笑)。僕らもまったく、そんな感じは」

 もともと、蛭子のキャラクターはこんな感じだったし、言葉が出ずに詰まることなんて70代ならよくある。意識もしっかりしているし、認知症っぽくは感じない。

有吉 「前回、僕、結婚したばっかりで蛭子さんに夫婦の似顔絵描いてもらったんですよ。(前回の似顔絵は)似てないし、下書きも消してないし(笑)。でも、嬉しくて、額のお店に行っていい額に入れて今、家に飾ってます」
蛭子 「あ、本当ですか? ああ、良かった」

 絵を贈ったことを蛭子が覚えているかは、わからない。「覚えてますか?」とは確認せずに、有吉は蛭子に提案した。

有吉 「僕、また蛭子さんの絵を見たいし、僕も下手なんですけど絵を描くのが好きだから、お互い似顔絵でも描きませんか? たまにはペン持ってくださいよ。嫌じゃなければ」

 「嫌じゃなければ」「たまにはペン持ってください」という背中の押し方で、蛭子に絵と向き合ってもらおうとする有吉。蛭子の返答は「いいですよ」だった。

蛭子 「ただ、似てない……」
有吉 「似てないのは知ってます(笑)」

 気軽に描けるよう、ハードルを下げる有吉。年上と絡むときのほうが、有吉は“らしさ”が全開となる。

 2人は真剣な表情でペンを握り、画用紙に絵を描き込んでいった。2月28日放送の同番組にて有吉は漫画家・甘詰留太の元を訪れ、漫画の描き方を指導してもらっている。もしかして、このロケのための修業だった? 一方の蛭子を見ると、筆の持ち方はまだそれっぽい。ガロで名を馳せた頃、素性が知られる以前の蛭子には「シュールで突飛な発想をする、狂気の天才肌」というイメージがあった。

 最初に絵を公開したのは有吉のほうである。これが思った以上にうまいのだ。というか、うまくなっている。芸人として売れない頃、漫画家を目指したこともある有吉。漫画家への敬意を少なからず抱いているのだろうか?

 続いては、蛭子が絵を公開する番だ。彼が描いた有吉の似顔絵は、うまくなかった。半年前は蛭子独特のタッチがまだ残っていたが、それも完全になくなっていた。絵を描くために必要なのは観察力、認知機能だ。散歩中は「前回よりも調子は良さそう」と思っていたけれど、絵を見た瞬間に胸が締め付けられた。

有吉 「めちゃめちゃ可愛い、ハハハハ! 作風変わりましたね。なんか、今っぽいっすよ。昔より細かいです。丁寧になってます。まったく似てないですけど。ハッハッハッハ!」

 もし自分があの場にいたら、どう反応していただろうか? 絶句して、言葉を返せなかったかもしれない。有吉は本当にうまくイジっていた。蛭子の絵からいいポイントをちゃんと気付けていたところも、素敵だった。

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