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小峠英二、有吉弘行…テレビに映す顔のカオスすぎる“分裂”と“縫合”

小峠英二、有吉弘行…テレビに映す顔のカオスすぎる分裂と縫合の画像1
『ここにタイトルを入力』(フジテレビ系)TVer公式サイトより

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(4月10~16日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

マヂカルラブリー・村上「五感を研ぎ澄ませ! クイズ・ファイブセンス!」

 そういえばいつからか、「マルチタレント」という言葉をあまり聞かなくなっている気がする。もちろん、さまざまなジャンルの番組に出演する人や、多方面に活動を展開する人は多い。というか、もはやほとんどのタレントの活動範囲はマルチになっている。だからわざわざ「マルチタレント」などと呼ぶ意味がなくなってきたのだろうか。

 そんななかにあって、11日の『ここにタイトルを入力』(フジテレビ系)が興味深かった。

 番組は唐突に始まる。マヂカルラブリーの村上が「五感を研ぎ澄ませ! クイズ・ファイブセンス!」とタイトルコール。どうやらクイズ番組がはじまったようだ。パネラー席には武井壮、みちょぱ、小峠英二(バイきんぐ)が座っている。村上の説明によると、同番組は人間の五感をテーマにしたクイズ番組らしい。

 が、さっそく小峠の様子がおかしい。鏡がはられた壁から左半身だけを出して座る小峠。村上が番組趣旨を説明しているあいだも、なにやらブツブツつぶやいている。クイズがはじまっても、小峠のブツブツは止まらない。ヤッターマンがどうだとか、クリィミーマミがどうだとか。一方で、ちゃんとクイズには正解していたりする。

 他の出演者は、そんな小峠をときおり不審に思う様子を見せる。が、決定的なツッコミはなく、番組は順調に進行していく。放っておかれる不可解。解消されない違和感。いったい何が起こっているのか、なんとなく察することはできるが答え合わせは先送りされる。クイズの解答はどんどん進むが、見ている側のハテナはますます積み上がっていく。

 ここで番組は折り返し。スタッフと小峠が打ち合わせをする映像が挿入される。それによると今回、スタッフのミスによりダブルブッキングが発生。小峠は2つの番組の収録に同時に参加しなければならなくなった、ということのようだ。改めて振り返ると強引な展開だが、そもそもこれを強引だと感じるような人間はこんな番組を見ていない。

 にしても、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)のバレバレのドッキリに引っかかっているときなどにも垣間見える、強引な展開に身を任せるときの小峠の安定感とおかしみ。半分呆れて企画に乗っかってる感じが、前提として見る側に伝わってくるからだろうか。

 さて、後半に入って始まったのは『Rest Garden』というトーク番組だ。出演者は俳優の中村俊介、遊井亮子、そして小峠である。もちろん、小峠は鏡でできた壁から右半身だけを出して座っている。なるほど、さっきクイズに答えながらブツブツ言っていたのは、こっちの『ボクらの時代』(フジテレビ系)っぽいトーク番組にも参加していたからだったのか。

 仕組みが全部わかってから見ると、クイズ番組とトーク番組と、両方の収録に同時に参加しながらなんとかつじつまを合わせようとしている小峠が面白い。いや、正確には、「両方の収録に同時に参加しながらなんとかつじつまを合わせようとしている小峠」を演じる小峠が面白いのか。この番組、誰が誰に何を悟らせまいとしているのかが複雑だ。いずれにせよ、実験的な番組でとても面白かった。種明かしのあと確認のためにTVerでもう一度見るなど、配信環境が整ったいまだからこそより楽しめるのかもしれない。

 ところで、あるタレントが種類のちがう2つの番組に同時に出演する、という構図になっていた同番組。あえて深読みするなら、1人のタレントがさまざまな番組で異なる顔を見せながら、なお1人のタレントとしての一貫性を保とうとしている状況のようにも見える。

 クイズに興じる顔と、人生を真面目に語る顔。あるいは、社会問題を語る顔、趣味人としての顔、文筆家としての顔、経営者としての顔、よき父親・母親としての顔……。マルチタレントであることがもはや当たり前ななかにあって、テレビタレントは分裂する顔を縫いあわせながら活動を続けていく。異なる番組のあいだで右往左往するさまを演じる小峠の姿は、なんだかそんな現在のタレント業の戯画にも見えた。

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