『若草物語』をオマージュする『ちむどんどん』 明るさの中に見える不穏な影(第1週)
#朝ドラWATCH #ちむどんどん
CGかと思うほどの澄み切った美しい海と南国の緑にかこまれた、自然いっぱいのふるさと沖縄で、両親と兄妹たちに愛されて、元気いっぱいに育つヒロイン・暢子。朝ドラの「おてんば」な主人公は、高いところに登るか水に落ちるのがお約束。そのお約束がここ何作か途切れていたのに、久しぶりに川に落ちる姿を見ました。
そんな主人公を筆頭に、第1週を見終わってみると「朝ドラってこうだよねー」とみんなが思うような、絵に描いたような王道を進んでいる朝ドラ『ちむどんどん』。『おちょやん』のようなひどい父は出てこないし、『カムカムエヴリバディ』のようにヒロインが3人いるわけでもない。少女時代からの成長をじっくり見せて、ナレーションで今は何年何月か、この頃の沖縄は、などの説明もある。わかりやすい。そして出てくる沖縄のごはんが、どれもこれもおいしそう。朝ごはん食べたばかりなのにまた食べたくなる、なんとも魅力的なビジュアル。4人兄妹の性格もわかりやすく、それぞれおもしろくかわいらしい。
「きれい・わかりやすい・おいしそう・かわいい」
いやー、よくできてる……できすぎじゃない?と、ひねくれた朝ドラウォッチャーとしては、ちょっと思ってしまうのです。少女時代の暢子の明るさに、直視できないまぶしさを感じてもいます。リレー競走で「よかったー、暢子とおんなじチームで」と言われるような、かけっこの速い主人公。そんな視線には入らない場所で、「あの子と一緒だといつも負けるよね」と言われるほうの子どもだったので、余計そう思ってしまう。
物語は『若草物語』のオマージュであることは明らかで、特に長女の良子はしっかり者のメグそのものだし、三女の歌子の音楽好きで病弱なところはベスと同じ。楽しみにしていた料理を近所の貧しい家にあげてしまうエピソードもよく似てるし、親しくなった男の子とポストを使っての文通も出てくる。
元気で明るい主人公に、『若草物語』のような設定。 これは、よくできてはいるけど、ただの説教くさい「いい話」になってしまう朝ドラなのでは……? と、ちょっぴり心配していたんですけど、見ているうちに、明るさの中にちらちらと不穏な影が差してきた気が。
借金がたくさんあるはずなのに、貧しい家に食べものをあげ、息子に変なヘッドバンドを買い、大事な豚をつぶして客に食べさせる両親。この、人に何かをすぐ与えてしまう性格は、まだ子どもたちには語られていない彼らの「謝らないといけない」経験ゆえなのか。
主人公家族の生活にいつの間にか入り込んで、一緒に食事をするようになり、三線まで聞かせてもらう、人懐っこい民俗学者・青柳。けれど彼の、人への親しい態度は、自分の家族には発揮されないようで、息子の和彦はいつも暗い顔をしている。
青空のさとうきび畑で作業するシーンで聞こえる飛行機の爆音のように、姿は見えないけれど何か暗いものが、この明るく王道に見える朝ドラにずっと張り付いている。その暗さが今後どんなふうに表に出てくるのか、朝ドラヒロインのお手本のような暢子は、それでも明るいままでいられるのか。
そして第1週のラスト、倒れたお父ちゃんがその後どうなったかは次週に続く、となったので
すが。 父役の大森南朋さんがそのまま金曜日の『あさイチ』のゲストに出ているのを見て「あ
ー、今ゲストに呼んだということは、つまりお父ちゃんは……」とついつい先読みしてしまうのも、朝ドラウォッチャーのサガ。
■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon
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