山窩(サンカ)と呼ばれる漂泊民が日本にいた! 謎多き“山の民”との遭遇劇『山歌』
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かつて日本には、山窩(サンカ)と呼ばれる放浪の民が存在したことをご存知だろうか。戸籍を持たず、山から山へと渡り歩き、川魚を獲ったり、農具の箕(み)を編むことを生業としていた。都市伝説的に、日本の先住民族とも、秘密結社的な謎の集団として語られることもあった。
映画の世界では、中島貞夫監督が萩原健一を主演に迎えた『瀬降り物語』(85)で戦時中のサンカたちの生態を描いている。また、小水一男監督の『ほしをつぐもの』(90)ではビートたけし、三池崇史監督の『十三人の刺客』(10)では伊勢谷友介が、それぞれサンカをモチーフにしたと思われる“山の民”を演じている。
虚実が入り混じるサンカ像だが、伊参スタジオ映画祭で2018年度シナリオ大賞を受賞した笹谷遼平監督の劇映画デビュー作『山歌(サンカ)』は、1960年代には姿を消したと言われているサンカの家族を描いた注目すべき作品となっている。
物語の時代設定は、東京五輪が開催された翌年となる1965年。東京で暮らす中学生の則夫(杉田雷麟)は受験勉強に励むため、祖母(内田春菊)がいる田舎でひと夏を過ごすことになる。ある日、則夫はカスリの着物を着た風変わりな少女・ハナ(小向なる)に遭遇する。ハナは驚くほど身のこなしが軽く、山道を息を切らすことなく駆け上がっていく。
野性的な目をしたハナは、父親の省三(渋川清彦)、老婆のタエ(蘭妖子)と山奥で暮らすサンカ一族のひとりだった。ハナたちは山々を行き来しながら生活していた。一方、則夫は学校に居場所がなく、仕事漬けの毎日を送る父親・高志(飯田基祐)とも不仲だった。省三から「学校のことをハナに話してやってくれ」と頼まれた則夫は、彼らが生活の拠点としている瀬降り(テント)をたびたび訪ねるようになる。自然と調和して生きるハナたちの生活が、則夫にはとても新鮮なものに映った。
村人たちは偏見の目でサンカを見下していたが、省三たちの山歩きの行に則夫は同行することに。奥深い山々に入っていくうちに、則夫は目には見えないものたちの声や足音を耳にする。則夫にとって、省三たちはもはや大切な存在だった。だが、村では、高志を中心にゴルフ場の開発計画が進み、サンカたちの生活の場である山々が失われる危機に直面する。
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