『ミスなか』最終回で「終わり方」がトレンド入りも…“ただごとじゃない”親子関係を描いた一貫性
#ミステリと言う勿れ
菅田将暉主演のフジテレビ系月曜ドラマ『ミステリと言う勿(なか)れ』が、3月28日に最終回を迎えた。ドラマ版『ミスなか』が一貫して取り上げてきたのは、穏やかなだけではない「親と子の関係」だったのかもしれない。
最終回となる第12話は15分拡大で放送され、菅田将暉演じる久能整(くのう・ととのう)が謎解きを披露する「つかの間のトレイン」編と、永山瑛太演じる犬堂我路(いぬどう・がろ)が謎の人物・ジュートを追う「横浜連続殺人事件」編の2本立てとなっていた。
1本目となった「つかの間のトレイン」編は、整が大阪の印象派展に行った帰りの新幹線での出来事を描いたものだった。隣に座った女性・美樹谷紘子(関めぐみ)が読む手紙が目に入った整は、まわりに描かれたイラストの頭文字がメッセージになっていることに気がつく。紘子は育ての母親に、幼い頃に両親を亡くしたため、実の母親だった親友が引き取って育てたと話されていたが、ある日紘子は古い手紙の束が隠されていたのに気づく。それを見ると、実の父が育ての母に向けて「紘子を返してほしい」と何度も訴えていた。育ての母に対する疑念から、実の父に会うため名古屋に向かう途中だと言う紘子。しかし何通にも及ぶ絵手紙を読み解いていくと、浮かび上がったのは「なごやにはくるな」「だまされるな」など警告ばかり。その意図は、娘の異変に気付き、あとをつけてきた育ての母・サキ(高畑淳子)から明かされるのだった。
これまで『ミスなか』が描いてきた大きなテーマに「虐待」があるが、サキが打ち明けた”真実”も切実だった。紘子の生みの母は夫からのDV(家庭内暴力)に苦しみ、子どもにも被害が及ぶ前にと、親友であるサキに預けた。家庭の中で、暴力が生み出す歪み。『ミスなか』では整自身も被虐待児であり、育ての親がいることが明かされている。また、解離性同一性障害を患っていたライカ(門脇麦)や、第6話・第7話の「炎の天使」編に登場した下戸陸太(岡山天音)と井原香音人(早乙女太一)も同じく親から暴力を受けていた。さらに、最終回の2本目「横浜連続殺人事件」編で我路が追っていたジュートこと辻浩増(北村匠海)も、父である殺人鬼・羽喰玄斗(千原ジュニア)の暴力性や歪んだ愛の影響下にあったことが分かる。ドラマ版『ミスなか』は、こうした家庭内で振るわれる暴力のエピソードを軸として構成されたことは明らかだ。
取り上げるテーマに一貫性を感じながらも、しかしまとまりとしてお粗末になってしまった部分は否めない。整のストーリーが「ファイナルエピソード(episode final)」と銘打たれた第10話までで美しく完結していただけに、我路や風呂光聖子(伊藤沙莉)が出張るラスト2話は、独立したストーリーとしては楽しめても、全12話の連続ドラマとしては完全に蛇足だった。
さらに、残されてしまった伏線の数々も中途半端な印象を増長している。ラストシーンで整に会いに来た我路が「一緒に行こう」と整を誘った意味、我路の妹・愛珠(白石麻衣)とジュートが持っていた指輪、謎のカウンセラーの存在など、むしろ最終回でさらなる謎をばらまいており、ドラマ終了後に劇場版など続編の告知発表がないことが意外なほど。SNSでは「『続き見たいだろ?』って感じるこの終わり方はいただけない」「録画失敗した? なんかとんでもない中途半端なところで終わったんだが」などという嘆きが。Twitterでは「終わり方」がトレンド入りし、その反応は続編への高まりというより虚無感。「謎を残して終わったら続編カモン~‼︎ ってなるけど、なぜかならないでいる」と、微妙な印象を抱く人が多かったようだ。
続編を意識しすぎたのか、ドラマ自体のクオリティを損なってしまった点は非常に残念だ。人気作だからと驕るのではなく、続編ではより誠実な作品づくりを行ってほしいものである。
■番組情報
月曜ドラマ『ミステリと言う勿れ』
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、門脇麦、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、遠藤憲一 ほか
音楽:Ken Arai
脚本:相沢友子
プロデュース:草ヶ谷大輔、熊谷理恵(大映テレビ)
演出:松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
主題歌:King Gnu 「カメレオン」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ 第一制作部
公式サイト:fujitv.co.jp/mystery
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