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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.666

異郷での生活はこの世の楽園か地獄の入り口か? “困窮邦人“を追った『なれのはて』

お金がなくても幸せというフィリピン人との価値観の違い

異郷での生活はこの世の楽園か地獄の入り口か? “困窮邦人“を追った『なれのはて』の画像4
フィッシュボールの屋台を営む平山敏春さん。家族と一緒で楽しそう

 本作に登場する困窮邦人たちは、歯が欠けており、痩せ細っている。偏った食生活が原因だろう。オーバーステイ状態であり、病院や歯医者に行くこともままならない。健康を害すると、そのまま命取りになりかねない綱渡り状態である。それでも、お金がないと幸福ではないという日本社会から脱した開放感が彼らのおおらかな表情からは感じられる。

粂田監督「フィリピン人はお金がなくても、家族が一緒なら幸せだという考え方なんです。今の日本とは考え方が異なります。日本で暮らしていると日本の常識に従って生きていくことになりますが、飛行機でわずか4時間の距離にあるフィリピンには異なる価値観で社会が営まれているんです。フィリピンも含め、世界は広い価値観で成り立っているように感じます。物事を見る角度をちょっと変えれば、まったく違った世界が見えてくるんじゃないでしょうか」

 フィリピンの貧困層が暮らすスラム街をロケ取材した『なれのはて 』だが、失業者が溢れ、年金だけでは生活できない今の日本の厳しい社会現状を鮮明に映し出した内容にもなっている。困窮邦人たちは日本から締め出された存在なのか、逆に日本を捨てた人たちなのか。彼らの生活を、あなたは天国のようだと感じるだろうか、それとも地獄だと思うだろうか。

 

『なれのはて』
監督・撮影・編集/粂田剛 音楽/高岡大祐 整音/浦田和治
配給/ブライトホース・フィルム 12月18日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
©Uzo Muzo Production
https://nareno-hate.com

最終更新:2021/12/17 12:00
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