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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.662

田中みな実『ずっと独身でいるつもり?』 相手の価値観に合わせて生きることの息苦しさ

むき身の心をさらけ出す田中みな実

田中みな実『ずっと独身でいるつもり?』 相手の価値観に合わせて生きることの息苦しさの画像3
原案者である雨宮まみの実体験が、主人公・まみには投影されている

 男受けする、あざとかわいさで人気者となった田中みな実だが、初主演となる本作では、キスシーンはあるものの過激な性描写は用意されていない。ドラムを叩きまくった『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)のような怪演シーンもない。結婚を控え、揺れ動く30代の女性をごく自然な姿で演じている。

 「結婚には我慢が付き物」と自分自身に言い聞かせていたまみだが、自動車の運転をめぐる公平との考え方の違いをきっかけに、感情が爆発する。演じる役と同化した田中みな実がむき身の心をさらけ出す。泣き、怒り、懺悔し、すべての感情をさらけ出す女優・田中みな実が、映画のクライマックスに現れることになる。

 最後に本作の原案者としてクレジットされているライター・雨宮まみについて触れておきたい。投稿雑誌の編集者を経て、フリーライターとしてAV評を書き始めた。小さい頃から集団生活が苦手だった彼女にとって、ライター業は天職だった。2011年に出版された初の著書『女子をこじらせて』(ポット出版)から「こじらせ女子」という流行語が生まれ、売れっ子ライターとなる。

 映画の中で描かれる、婚約相手の親の「ライター」という職業への理解のなさや、自動車の運転をめぐるエピソードは、雨宮まみ自身の実体験に基づいたものだ。『東京を生きる』(大和書房)など数々の著書を持ち、作家を名乗ってもおかしくなかったが、憧れの職業だった「ライター」という肩書を貫いた。そして、2016年11月15日に40歳で亡くなっている。生涯、独身だった。

 2013年に出版されたエッセイ集『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)の最後の章を、彼女はこう結んでいる。

【自分が自分らしく、小さなことにとらわれずに生きること。そして、誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分が得てきたもので相手を楽しませられるような人間になること。それは、たとえ結婚できなかったとしても、決して無駄なことではないし、結婚する/しないに関わらず、自分の人生を豊かにしてくれるもののような気がしています。】

 何かを犠牲にし、相手の価値観に合わせて窮屈に生きるのではなく、お互いに輝き合える存在でありたい。女子をこじらせ、ライター業を突き進んだ雨宮まみの理想は、とても尊いものだった。

 

『ずっと独身でいるつもり?』
原案/雨宮まみ 原作/おかざき真里 脚本/坪田文 監督/ふくだももこ
出演/田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、松澤匠、山口紗弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子
配給/日活 11月19日(金)より全国公開
©日活
https://zuddoku-movie.com

最終更新:2021/11/19 08:00
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