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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 大阪が生んだ“遅咲きのヒーロー”上西雄大
社会派アクション映画『西成ゴローの四億円』特別先行公開記念インタビュー

大阪という土壌が生み出した“遅咲きのヒーロー” 俳優&監督・上西雄大が語る泥まみれの役者人生

「3歳まで戸籍がなかった」理由

大阪という土壌が生み出した“遅咲きのヒーロー” 俳優&監督・上西雄大が語る泥まみれの役者人生の画像4
(撮影=石田 寛)

――劇団主宰、映画制作だけでなく、大阪では焼肉店を経営しているそうですね。安定した生活を送るために、焼肉店の経営に専念するという選択肢もあったと思います。

上西 安定した生活を選ぶなら、そうですよね。僕の父親は焼肉店で財を成し、それから不動産にも手を出すようになりました。父がやっていた店は大きかったんですが、父が亡くなった際に弟と妹と相談して処分したんです。その後、新しい焼肉店を始めました。小さな店ながら繁盛したときもあったんですが、映画制作や舞台公演の度に休業しているので、「真面目に営業しろ」と最近は地元の人たちからお叱りを受けています(苦笑)。『西成ゴローの四億円』の闇金姉妹役の徳竹未夏と古川藍が店長で、従業員もみんな劇団員なので、映画の撮影や公演時はお店を休まざるをえないんです。ちなみに『西成ゴローの四億円』に出てくる小さな焼肉屋が、その店なんです。

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徳竹未夏と古川藍演じる闇金姉妹 ©上西雄大

――家庭内暴力をテーマにした『ひとくず』は、上西監督の実体験が投影された作品。『ひとくず』の舞台あいさつで「3歳まで戸籍がなかった」と語っていましたが、そのこともお聞きできますか?

上西 母親が妊娠していたとき、父親は中絶しろと言ったんです。それで母親は実家に戻って、僕を産みました。父が僕のことを認めるまで、母は頑張って3年間戸籍を入れなかったんです。実家に戻った母は働き、僕は母方の祖母に育てられました。祖母に映画館に連れて行かれ、僕は映画の世界に魅了されるようになったんです。僕が映画の中で描く愛情は、その祖母から注がれたものです。僕が撮った映画は、いちばん最初に祖母に見せたかった。僕が撮った映画の最初に「テンアンツ」のロゴが出ますけど、ロゴの前に映っているおばあちゃんが僕の祖母です。僕が映画を撮るようになったのは、祖母のおかげなんです。

――『ひとくず』をはじめとする上西監督作に、ひりひりするような想いが込められているのにはそんな背景があったんですね。主演&監督作が次々と公開され、海外の映画祭では数多くの賞を受賞。57歳にして大ブレイクを迎えたと言えるのではないでしょうか?

上西 ブレイクしたとは、全然思いません。最近、ようやく想いが報われるようになってきたかなとは思いますが。僕個人は NHKの朝ドラに出れるような俳優になれればいいなぁと……(笑)。でも、一緒に劇団を立ち上げた徳竹未夏、古川藍には人気女優になってほしいと願っています。これまで舞台やって、映画制作を続けてこれたのは、本当にバカの為せる技だったんですが、そんな僕を彼女たちは支え続けてくれた。

 『ひとくず』を映画にしようと考えたときは、みんなから無理だと思われたんです。それで自分たち劇団員だけでは映画はできないので、僕の大好きな俳優・木下ほうかさんに出てほしいと台本を送ってお願いし、西成に近い寺田町のファミレスで夜中にお会いして話し合ったところ、ほうかさんは僕の手を握って「やろう」と承諾してくれた。そのときのレシートは今も大切にしています。ほうかさんが出てくれることが決まったと電話したら、2人は喜んで一緒に泣いてくれたんです。あの日見た、天王寺の夜景は忘れられません。徳竹未夏と古川藍は、本当に報われてほしいなと思います。

 先日の京都国際映画祭では『ひとくず』のディレクターズカット版が上映され、客席から大喝采をいただきました。『ひとくず』ディレクターズカット版はこれから一般公開するつもりなので、『西成ゴローの四億円』『西成ゴローの四億円 死闘篇』ともどもよろしくお願いします。

 

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映画『西成ゴローの四億円』
監督・脚本/上西雄大 製作総指揮/奥山和由
出演/上西雄大、津田寛治、山崎真実、波岡一喜、徳竹未夏、古川藍、奥田瑛二
配給/吉本興業、チームオクヤマ、シネメディア 11月9日(火)よりTOHOシネマズ シャンテにて『西成ゴローの四億円 死闘篇』と合わせて特別先行一挙公開 2022年全国順次ロードショー
©上西雄大
https://goro-movie.com

●上西雄大(うえにし・ゆうだい)
1964年大阪府出身。2012年に映像劇団「テンアンツ」を発足し、関西の舞台を中心に活動を始める。児童相談所を取材したことがきっかけで、その晩のうちに脚本を書き上げ、制作費500万円で映画『ひとくず』を2019年に完成させる。『ひとくず』はミラノ国際映画祭、ロンドン国際映画祭でグランプリと最優秀男優賞を受賞するなど海外の映画祭で絶賛され、2020年3月より渋谷ユーロスペースにて公開された。
赤井英和とのW主演作『ねばぎば 新世界』はニース国際映画祭で外国語映画最優秀作品賞、最優秀脚本賞を受賞し、2021年7月に公開。
『西成ゴローの四億円』はロンドン国際映画祭で外国語長編映画最優秀作品賞と最優秀男優賞、ニース国際映画祭で最優秀外国語映画作品賞、外国語映画最優秀男優賞を受賞。2022年には『西成ゴローの四億円』『西成ゴローの四億円 死闘篇』の2部作と『ヌーのコインロッカーは使用禁止』の公開が控えている。

最終更新:2021/11/18 18:57
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