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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.657

非ゾンビ映画も怖い! ジョージ・A・ロメロ監督の“高齢者虐待”映画『アミューズメント・パーク』

ゾンビよりも恐ろしいのは、人間社会の排他性

非ゾンビ映画も怖い! ジョージ・A・ロメロ監督の“高齢者虐待”映画『アミューズメント・パーク』の画像3
感染症が人間社会を分断するSF映画『ザ・クレイジーズ 』

 もう一本の上映作品『ザ・クレイジーズ』(73)も、いかにもロメロ監督らしい。軍事目的で実験開発された細菌が輸送中の事故によって、小さな村に広まってしまう。感染者はおかしくなり、平気で人を殺すようになっていく。見た目はゾンビっぽくないため、感染者と非感染者との区別がゾンビ映画のようにはっきりとはしない。

 軍隊が押し寄せ、村全体を極秘のうちにロックダウンしてしまおうとする。もし、封鎖に失敗したら、この村には核爆弾が投下されることになる。防護スーツを着て完全武装した軍隊、凶器を手に暴れ回る感染者、ロックダウンを嫌って逃げようとする非感染者たち。三つ巴のサバイバル戦が、小さな村で繰り広げられる。

 ロメロ監督が描くゾンビ映画のゾンビたちは、共産主義者のメタファーであるとか、商業主義に毒された現代人の成れの果ての姿であるとか、さまざまな解釈がなされてきた。観客がそれぞれ独自に深読みして世界観を広げていくことを、ロメロ監督は喜んだ。

 今回、日本で上映されるロメロ作品にはゾンビは登場しないが、自分は匿名的存在ではなく、ひとりの生きた存在であることを懸命に叫ぶ主人公たちの姿が描かれている。ゾンビ映画の巨匠として知られるロメロ監督だが、非ゾンビ映画を観ることで、ロメロ作品はより面白さを増すに違いない。

 

『アミューズメント・パーク』
監督/ジョージ・A・ロメロ 出演/リンカーン・マーゼル
配給/ビーズインターナショナル 10月15日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
(c)2020 George A Romero Foundation, All Rights Reserved.

『マーティン 呪われた吸血少年』
監督/ジョージ・A・ロメロ 出演/ジョン・アンプラス、リンカーン・マーゼル
配給/ビーズインターナショナル 10月15日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
(c)1977 MKR Group Inc.

『ザ・クレイジーズ』
監督/ジョージ・A・ロメロ 出演/W・G・マクミラン、レイン・キャロル
配給/ビーズインターナショナル 10月15日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
(c)1973 PITTSBURGH FILMS.ALL RIGHTS RESERVED.
http://garomero.com/

最終更新:2021/10/14 20:00
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