俳優・窪田正孝の“凄さ”とは――映画で振り返る「憑依型」の資質と新たな領域
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窪田正孝が、帰ってくる――。独自のゾーンを持つ人気実力派俳優の新作を、待ち望んでいた方も多かったことだろう。実は2021年はここまで、映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』での回想出演くらいしか、窪田の出演作がなかった。2020年はNHK連続テレビ小説『エール』に映画『ファンシー』『初恋』『映画 えんとつ町のプペル』と出演作ラッシュだったため、ファンはそのギャップに禁断症状を起こしていたのではないか。
しかし、10月からはドラマ『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)が放送開始。そこから、映画『決戦は日曜日』(2022年1月7日公開予定)、『ある男』(2022年公開予定)と出演作が続く。再び、“窪田正孝 旋風”が吹き荒れることになるだろう。
彼の新たな活躍を、最大限楽しむために――。今回は、窪田正孝がこれまでに出演してきた映画で見せつけてきた“凄さ”を、今一度プレイバック。さらに、最新映画『決戦は日曜日』についてもいち早くご紹介。我々自身も、“熱狂”を再点火していこうではないか。
アッパーとダウナー、両極端な表現に見る「憑依型」の資質
俳優・窪田正孝の特色といえばいくつもあるが、やはり鮮烈なのは役に入り込む、その深度だろう。「憑依型」と評されるほどのなりきり具合は、彼の代名詞と言っていいほど語り草になっている。
窪田の没入する演技は、大きく分けて二つのパターンがあるといえるのではないか。ひとつは「押し出す」、もうひとつは「隠す」だ。前者はアッパーな“温”の演技、後者はダウナーな“冷”の演技とでもいおうか。どちらにも圧倒的な“熱”は宿っているのだが、+と-ほどに正反対のキャラクターを形成していく。
前者は、『るろうに剣心』(12)『東京喰種トーキョーグール』シリーズ(17~19)『HiGH&LOW』シリーズ(16~17)『Diner ダイナー』(19)などが挙げられる。キャラクターの“激情”を瞬発的に爆発させる必要性が伴う、難役たちだ。
『るろうに剣心』では、許嫁のために手柄を立てようと京に赴いた下級武士を演じた。彼は祝言を間近に控えたタイミングで、人斬り抜刀斎(佐藤健)と遭遇してしまい、夢半ばにして斬られてしまう。しかし、なんとかして生き延びようと鬼気迫る執念を見せ、その後の抜刀斎=剣心の人生に深く影を落とす“十字傷”をつけるのだ。『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』で件のシーンがリプレイされたことで、改めて窪田の演技に戦慄させられた方も多いことだろう。彼はとかく“極限状況に置かれた人間”の生々しさを体現する術に長けており、大友啓史監督の妥協を許さぬ演出も相まって、壮絶な死にざまを見せつけている。
『東京喰種トーキョーグール』では、自分の体が異形のものとなり、パニックに陥るシーンがおぞましい。冷蔵庫の中の何を食べてももどし、吐瀉物まみれの床をのたうち回りながら気も狂わんばかりになっていく。原作も含めたこの作品の根幹に流れる、“生々しさ”を身一つで表現しているのだ。
『HiGH&LOW』で演じた不良チームのリーダー、スモーキーは、病気を抱えながら無類の戦闘力を誇るというカリスマ的な魅力を持ったキャラクター。入り込むほどにカッコよさが増していくという、窪田の強みを十二分に生かせる役どころでもあった。『Diner ダイナー』では、普段は紳士的だが、スイッチが入ると発狂してしまう殺し屋を熱演。穏やかな平時と、壊れてしまった状態のギャップ、周囲を巻き込むドライブ感が凄まじい。
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