佐久間由衣と奈緒がモラトリアムの悲劇に遭遇する映画『君は永遠にそいつらより若い』
#佐久間由衣 #奈緒
映画『君は永遠にそいつらより若い』が2021年9月17日より公開される。本作は、以下の吉野竜平監督の言葉に、伝えたいことが集約されていると言っていい。
「欠落感を抱えたまま、他者や社会とどう関わって生きていくのか──。『ありのままでいいんだよ』みたいな無責任な言葉ではない、自分なりのメッセージを主人公の姿に託しました」
その「(悲劇的な出来事による)欠落感」や「他者や社会との関わり」は、確かにこの世で生きていくためには避けては通れないだろう。その誰にでも通じる事柄を、変わり者の22歳の女性の姿を通じてシビアに、だが優しいまなざしで綴った作品だったのだ。さらなる魅力を記していこう。
ぐだぐだな日常の裏に潜む悲劇を描く物語
本作のあらすじを一行で記せば「同じ大学に通う1つ年下の女の子と知り合って、独特な関係を築いていく」というもの。主人公は大学卒業を間近に控え就職も決まっているため、バイトをしながらもヒマを持て余すぐだぐだな生活を送っていたのだが、女の子と出会いにより心境が変化していくのである。
その女子大生2人のゲームをしたり部屋で寝泊まりする日常はどこかコミカルで、それだけで楽しく観られるのだが、違う物語の軸もある。それは、期せずして身近な人の死や、痛ましい過去を知るといった、日常の裏に潜む悲劇だ。
人生最後のモラトリアム期間の真っ只中にいる主人公が、そうした「自分にはどうすることもできない悲劇」に遭遇してしまうことが相対的に切実に感じられる。不思議な女の子との掛け合いもとぼけたギャグがたっぷりで楽しいのだが、だからこそ、その痛ましい過去とのギャップが辛く思えるだろう。
これは、全ての生活や人生にも当てはまることなのではないだろうか。日常を楽しく平和に過ごしているようでも、どこかに悲劇が隠れていて、いきなり現出してくることはある。そんな時に、どのように悲劇に立ち向かえばいいのか、どのように生きていけばいいのか。そのヒントを押し付けがましくなく提示してくれるのが、この『君は永遠にそいつらより若い』だったのだ。
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