【24年秋ドラマ】『あのクズを殴ってやりたいんだ』第9話 完全に玉森裕太のアイドルドラマ、主人公・奈緒は寝てるだけ
#あのクズを殴ってやりたいんだ
ボクシング現役世界王者の晝田瑞希選手がレギュラーで出ていたり、来年には世界タイトルマッチにたどり着きそうな元キックボクシングのスーパースター・那須川天心選手がカメオ出演していたりと、ボクシング好きな人にも興味を持ってほしいという意気込みがビンビンに感じられるドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)も第9話。
始まった当初はアラサー市役所ガールのほこ美ちゃん(奈緒)がボクシングに打ち込むことで成長とか自己実現とか、そういうお話がメインになると予想されました。どっこい「殴られる側」のクズ・海里くん(玉森裕太)が妖艶なクズ男からキラキラ若手カメラマンになっていくという、主にキスマイファン向けのアイドル作品でしたね。
ところで、NEWSのファンは「パーナさん」とか、嵐だったら「アラシック」とかあるけどKis-My-Ft2のファンって何か呼称があるのかなと思って調べたら「俺足族」っていうんだって。「俺足族」、マジかよ。
振り返りましょう。
■ほこ美は寝てただけ
前回、格上の選手とスパーリングを組まれた上、ボコにされて病院送りとなったほこ美さん。幸いにも後遺症が残るようなことはなかったようですが、足首もグネっているし、しばらく入院するようです。
ジムの会長(渡部篤郎)とトレーナーのゆいさん(岡崎紗絵)は「私たちのせいです」と責任を感じているようですが、ホントにそうなので今後は気を付けていただきたい。
一方、一流スポーツカメラマンに弟子入りし、アメリカでの武者修行も終えて充実した写真家生活を送り始めた海里くんでしたが、仲良し同居人のかわいい男・悟(倉悠貴)が、何やら不穏な動きをしているようです。
ほこ美をスパーでKOした選手は、悟が送り込んだ強豪でした。悟はその選手に「KOしたら100万円払う」とメールを送っていたそうです。
さらに、海里くんがかつてお金を引っ張っていた雑誌モデルの女の子をそそのかして海里の仕事先に送り込むなど、徹底的な「海里潰し」が始まっています。
それでも海里くんは写真賞で新人賞を受けるなど、前途洋々。それが気に食わない悟は授賞式に現れ、自分が平山大地(大東駿介)の弟であることを告げます。
かつて、海里とプロボクシングの試合で対戦し、試合後に不幸にも亡くなってしまった平山大地。悟はその恨みから海里に近づき、ボロボロのクズになった海里を観察していたのでした。
「許せない」
「あんたが死ねばよかったのに」
悟は、兄を殺した海里が前を向いたことをどうしても許せず、いろいろ壊しにかかっていたのでした。
その悟の思いをぶつけられた海里くんは家に帰ると、カメラとか写真とかを整理し始め、ほこ美のために買ってきて渡せていなかったネックレスを持って、ほこ美の病室を訪れます。そして「ごめんね」と言って去っていき、なんかトンネルみたいなところで泣き崩れるのでした。
次回は最終回。第1回の冒頭でほこ美がプロのリングに立ち、海里がカメラを持って駆けつけるシーンがありました。思えばあのときから、悲劇のヒーロー然としていたよね、海里くん。
■「ファンなら」という評価
玉森裕太がガチもんの妖艶極まるセクシークズとして登場し、ほこ美と出会って少しずつ感動を取り戻し、いよいよ泣き崩れ、夢に向かって前を向き、それでも過去の傷にとらわれて再び闇堕ちしようとしている。
そういう視点で、なんだっけ「俺足族」か、俺足族的なところから眺めていると、実に玉森のバリエーションを楽しめる作品になっていると思います。玉森ファンにとっては、今まで見たドラマの中で一番好き、となってもいいくらい玉森の魅力が爆発しています。
一方で、冒頭でも書きましたが、このドラマはボクシングファンにも目配せしているんですよね。個人的にはそっちの立場なので、リング禍による死亡事故を「殺した」と表現し、遺族が相手選手を恨んで復讐しているというストーリーが根底にある作品を愛せるわけがありません。シンプルに、平山大地はそれを望んでいますか? と思ってしまうし、競技と暴力を混同する描き方は誤解を招くし、スパー練習におけるルールとマナーに対する意識が極めて低く、安全管理を怠っている指導者を普通に登場させているのもよくないし、何より「試合後に事故で相手が死ぬと、一生許されない」という誤った価値観を流布するのは本当にやめていただきたいんです。なぜなら、今後もそういう事故が起こる可能性があるから。全国放送の生中継でそういうことが起こる可能性もあるから。ほんとやめて。
まあ要するに、「クズに沼る女子」というトレンドから始まった企画なんだと思うんですよね。アラサーのトホホな女子がクズに沼る、そういうドラマを作りましょう。沼ってる女の子に目覚めを与えましょう。トホホの対極にありそうなのが格闘技じゃない? なんかブレイキングダウンとか人気あるんでしょ? もっとストイックなイメージがいいよね、じゃボクシングにしようか。
クズ側も単にクズだと面白くないから、バックグラウンドが欲しいよね。やっぱ悲劇だよね。ボクシング関係の悲劇だよね。人を殺したことにしよう。
印象としては、たぶん海里とほこ美のエピソード半々で「共に成長していく」みたいなものを意図していたと思うんですよね。海里には悟という摩擦要素を置いて、ほこ美には撫ちゃん(玉井詩織)を置いて、優しいアテ馬に大葉さん(小関裕太)を置いてと、わりとテンプレートに沿ったわかりやすい作品を目指していたんだと思う。
それが、キャラクターを掘ってみたら2人のエピソードの厚みに差がありすぎて、結果、玉森エピばかりになっちゃった。そんな感じ。
ボクシングで悲劇を設定しようというところで「殺した」さえ持ってこなければ、もっとライトで楽しいものになった気がするんだよな。例えば網膜剥離で引退を余儀なくされて、片目の視力が極端に落ちた元ボクサーがカメラマンを目指すとかさ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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