「ツギクル」「ABC」で吉本の劇場勢が躍進、圧倒的強さの理由は?
#お笑い
『キングオブコント2023』の1回戦が始まり、『M−1グランプリ2023』の開催が発表され、年末に向けていよいよお笑い賞レースが盛り上がり始めているなか、それらの前哨戦とも言える『ツギクル芸人グランプリ2023』と『ABCお笑いグランプリ』の2大会が開催された。
7月8日には『ツギクル芸人グランプリ2023』がフジテレビ系で生放送され、吉本興業所属のナイチンゲールダンスが優勝。翌9日には『第44回ABCお笑いグランプリ』がABCテレビで生放送され、吉本興業所属のダブルヒガシが優勝を果たした。
『ツギクル芸人グランプリ2023』は、日本音楽事業者協会とフジテレビが主催する大会で、民放キー局のバラエティ番組制作スタッフが審査員を務めるのが特徴。テレビでのブレイクが期待できる芸人を発掘する大会となっている。
「お笑い賞レースの決勝戦というと吉本芸人ばかりになりがちですが、『ツギクル芸人グランプリ』については吉本以外の芸人のほうが多く決勝に残っていて、前身大会となる『お笑いハーベスト大賞』においても、昨年までの優勝者はすべて非吉本です。そんななかで、吉本のナイチンゲールダンスが優勝したのは、ちょっと意外でした」(お笑い事務所関係者)
一方の『ABCお笑いグランプリ』は、地上波テレビでの放送も大阪ローカルということもあり、過去の優勝者には大阪吉本所属の芸人が名を連ねている。
「ファイナルステージでは、大阪吉本のダブルヒガシと東京吉本の令和ロマンが同点となり、ファーストステージでの得点差でダブルヒガシが優勝という形でした。令和ロマンは昨年に続いて2年連続の準優勝で、ダブルヒガシだけでなく、十分すぎるくらいに爪痕を残しました」(同)
東西吉本勢の活躍が目立った今回の2つの大会。その背景には、圧倒的な“舞台出番の数”があるという。
「ナイチンゲールダンスは年に700回以上舞台に立っていると話していましたが、今の吉本の若手はとにかく出番が多く、芸歴が浅くてもかなりの経験値を積んでいる。ネタがどんどんブラッシュアップされていくのも当然ですね。さらに言うと、ナイチンゲールダンスや令和ロマンは大学お笑い出身でもあり、プロになる前の蓄積もあって、スタートの時点でのアドバンテージもあるから、余計に舞台出番が増えるわけです」(構成作家)
吉本芸人の出番の多さを支えるのが、自社で所有する劇場だ。大阪であれば「よしもと漫才劇場」、東京であれば「神保町よしもと漫才劇場」や「ヨシモト∞ホール」で若手が切磋琢磨している。
「なかでも注目なのが、ナイチンゲールダンスと令和ロマンが所属する神保町よしもと漫才劇場ですね。もはや賞レース決勝の常連であるヨネダ2000も神保町の所属ですし、今回のABCお笑いグランプリで3位になった素敵じゃないかも神保町所属。今年の下半期の賞レースは神保町芸人が席巻しそうだと、もっぱらの噂です」(同)
ナイチンゲールダンス、令和ロマン、そして大阪のダブルヒガシも含めて、徐々に結果を出し始めている吉本の若手漫才師。その大きな特徴は、“システムに頼らない”ということだという。
「キャリアの浅い漫才師の場合、あるフォーマットを決めて、そこに異なる題材を落とし込んでいく“システム”を活用することが多い。そのシステムがハマれば、大きな笑いにつながりますが、ハマらなかったらアウトだし、システム自体が飽きられてしまうリスクもある。
でも、今結果を出している吉本の若手は、“しゃべくり”や“漫才コント”などのスタイルの違いこそありますが、基本的には“ボケとツッコミ”のオーソドックスな漫才なんです。場の空気や客層によってネタを変えることもできるし、1日に複数回ネタを披露する賞レースでもつねに新鮮な笑いを提供できる。1年に何回も賞レースが開催されるなかで結果を残すには“強いネタ”を複数本用意しなければならないわけですが、彼らは10年目以下の芸歴で、それを実現している。まさに、今年のM-1は彼らが大活躍すると思います」(同)
では、今年のM-1グランプリ決勝戦に初進出が有力視される若手漫才師は、いったい誰なのか。
「まさに、ダブルヒガシ、令和ロマン、ナイチンゲールダンス、素敵じゃないかあたりはもちろん、ツギクル芸人グランプリで2位となったマセキ芸能社のひつじねいりも期待されています。ABCお笑いグランプリの決勝戦に進んでいたハイツ友の会もかなり評価が高い。芸歴5年目以下の大会『UNDER5 AWARD』で優勝した金魚番長も強いです」(同)
例年にも増して、フレッシュな勢力が活躍しそうな今年のお笑い賞レース。年末に向けて、盛り上がっていきそうだ。
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