『ワイルド・スピード』は死んだ人間さえ蘇る―文句をいうやつはいない!
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
今夜の日本テレビ系『金曜ロードショー』はシリーズ最新作が5月19日に日米同時公開されることを記念してカーアクション映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』を地上波初放送。天才的ドライビング・テクニックを誇るアウトロー、ドミニク・トレットと彼の‟ファミリー”たちが世界中のコンピューターシステムを乗っ取ることができる電子機器「アリエス」を狙うテロリストと死闘を繰り広げる、アクション超大作!
ドミニク(ヴィン・ディーゼル)は亡き妻との間にできた一人息子とともに、平穏な暮らしを送っていた。だが、彼の前に再びかつての仲間たちがやってくる。米政府の秘密工作員、ミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)を乗せた輸送機が墜落したという。仲間たちは輸送機の積み荷を回収してほしいという信号を受け取っていた。
ドミニクらは墜落現場から積み荷を回収にむかったのだがそこは、某国の軍事政権が支配する危険地帯。敵の襲撃、地雷原を突破することに成功したものの、積み荷を突如現れた男に奪われてしまう。男の正体はジェイコブ(ジョン・シナ)、ドミニクの弟だった。
二人の間には父親の死に纏わる確執があった。天才レーサーだった父はレース中の事故で命を落とす。その原因がジェイコブにあると知ったドミニクはストリート・レースの対決でジェイコブに勝ち、町から追放する。
長い間、兄の影に隠れ、誰からも認められなかったことに鬱屈を感じていたジェイコブはこの一件でドミニクに強い恨みを抱き、世界をわが物にしようとするテロリストのオットー、前作でドミニクに野望を阻止されたハッカーのサイファー(シャーリーズ・セロン)らと手を組み、復讐のために世界中のコンピューターをハッキング可能な機器「アリエス」を手中に収めようとする。
ドミニクはジェイコブとの過去に決着をつけるべく、彼の‟ファミリー”らとともに因縁の戦いに身を投じることに。
『ワイルド・スピード』シリーズは、世界中の興行成績が史上9番目に高い人気シリーズである。2001年に公開された1作目を見た時、このシリーズが以後20年以上に渡り新作が作られ続け、こんなに稼ぐ人気作になると思った人はほとんどいなかっただろう。
一作目『ワイルド・スピード』は当時ロサンゼルスで流行っていた、日本車を改造したストリート・レースのレポートを元に制作された。だから登場する車のほとんどは日産、トヨタ、ホンダをはじめとする日本車。
続発する貨物車襲撃事件の黒幕と目されるストリート・レースのチャンピオン、ドミニクにただの車好きを装って近づいた潜入捜査官のブライアン(ポール・ウォーカー)との奇妙な友情の物語で、カーマニアの熱い支持を受けスマッシュ・ヒット。主演コンビのディーゼルとウォーカーは忽ち人気スターになり、シリーズ化が決定。
当初は「改造日本車によるストリート・レース映画」というテーマだったシリーズに転機が訪れたのは、3作目の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』。「日本車が主役なんだから、日本を舞台にすればいいだろ!」という解釈で作られた3作目はシリーズ最大の珍作だ。
問題を起こして日本に転校することになったアメリカの高校生ショーンは、「揉め事はすべて車のレースで決着をつける」という独特の校則(!)を持つ学校で腕を磨く。
アメリカ映画によくある変な日本描写がいっぱいで、ショーンは学ラン(全く似合ってない)で満員電車に乗って通学するが、乗客のひとりは工事現場のヘルメットをかぶっている。学校には「オアシス」と書かれた謎の紙が貼られ、学食には謎の懐石料理が並んでいて、トングで取る(笑)。どんな学校だ。
ある日彼は法定速度以上のスピードでかっ飛ばしているところを、パトカーに発見される。しかしパトカーは追ってこない。なぜ?
「この車は改造車だ。日本のポリスは俺たちに追いつけないってわかってるから見逃されてるのさ」
ってなるほど……な、わけないよ!
数々のトンデモ描写、そして主演コンビが登場しない番外編という扱いが災いしたか、『TOKYO DRIFT』はシリーズ中最低の興行になってしまった。しかし車のチューニングやドリフトテクニック、ストリート・レースのシーンが最も激アツな映画。忘れがたい快作として記憶に残っている。
アジア系アメリカ人の監督として一定の成功を収めたジャスティン・リン監督は、このシリーズを手放したくないユニバーサル映画によってシリーズ4作目『ワイルド・スピード MAX』の監督に続けて起用。
主演コンビのディーゼルとウォーカーも復帰した4作目はそれまでのストリート・レース映画の設定を一新。主演コンビと彼らの‟ファミリー”が改造車をぶっ飛ばして激しいカーチェイスを繰り広げ、テロリストをぶちのめすという痛快カーアクション映画に路線変更し、これがバカ受け! 以後は世界中のありとあらゆる場所で車が、現実的にはありえないスーパー・アクションを展開するようになる。
車が走るのはもはや道路に留まらず、山、海、空を縦横無尽に駆け抜けた。ついに『ジェットブレイク』ではジェットエンジンを括り付けたポンティアックが宇宙空間にまで飛び出す! ハッタリもここまでくれば大したもんだ!
シリーズを重ねるとともに拡大する一方のスケールに対し、魅力的なキャラクターも次々登場。主要登場人物は58人に上り、かつて敵として登場した人間も戦いを経て仲間、‟ファミリー”になっていく、というのがこのシリーズの特徴で、「タイマン張ったやつはマブダチ」という男気展開は、日本のヤンキーマンガに相通じるものがある。
前作までのキャラや、死んだと思っていたキャラが強引な理由で復活、再登場を果たすのもこのシリーズのお約束で、シリーズ9作目の『ジェット・ブレイク』には『TOKYO DRIFT』で死亡したとされていたハン(サン・カン)の復活は、ファンからの歓喜の声で迎えられた。
サン・カンはジャスティン・リン監督のインディーズ映画『Better Luck Tomorrow』(日本未公開)に出演した縁が出来、『TOKYO DRIFT』に出演、主人公ショーンの良き兄貴分として存在したが、ラストでデッカード(ジェイソン・ステイサム)に殺害される。
リン監督はこの一本でシリーズから離れるつもりだったが、二人がレストランで食事をしていると子供たちがサン・カンを見て「ハンだ!」と近寄ってきたのを見て強い影響を感じ、二人でハンを復活させようと思い立ち、続編の監督を再び手掛けることを決めた。
しかし彼は『TOKYO DRIFT』で死ぬことは決まっているため、時系列において直前となる7作目の『ワイルド・スピード SKY MISSION』でハンは葬儀まで行われた!
ハンの殺害犯であるデッカードはのちにドミニクらファミリーの一員になり、スピンオフ映画『ワイルド・スピード スーパーコンボ』まで製作された! これに納得いかないファンはSNSに「#JusticeForHan」(ハンに正義を)運動を展開し、復活を求めた。
これを受け、リン監督は『ジェットブレイク』でハンを復活させる。「死んだように見せかけていたのだ」という苦し紛れにもほどがある理屈で!
だが車が潜水艦と戦い、宇宙空間にまで飛び出す『ワイルド・スピード』シリーズは少々の無茶は許されるし、文句をいうやつはいない!
大手映画会社のシリーズなのに、現場やファンの意見によって柔軟に対応策が取られることでも知られており、人気キャラのレティを演じてきたミシェル・ロドリゲスはインスタグラムに同シリーズが女性キャラの扱いがひどいと訴えた。劇中、死ぬ役のほとんどは女性で大した活躍もしないのはおかしい、改善されなければシリーズから降板すると投稿。
これが影響したのかどうかはわからないが、『ジェットブレイク』ではレティをはじめ、女性キャラクターが男以上に活躍し、暴れまわり、腕力で男に引けを取らない。なにしろ女性だけの秘密作戦部隊が登場して主人公のピンチを救うのだ!
『ワイルド・スピード』の世界では男は敵であってもタイマン張ったらマブダチだし、女性は完全に男と平等の扱いを受けている。あらゆる法則と常識を無視したカーアクションの数々は最高のひとこと!
車、人種、性差の問題も超越した理想の世界を描いた『ワイルド・スピード』はあと一体どこまで走り抜けるのか!?
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