『HiGH&LOW THE WORST X』は若手俳優の『有吉の壁』だった──ハイロー放談前編!
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映画『HiGH&LOW THE WORST X』の公開に連動して展開してきたサイゾーのハイロー特集。最後に『HiGH&LOW THE MOVIE』から掲載している恒例の座談会をお届け! ヤンキーマンガや映画を長年見続けてきたライター・藤谷千明氏と、アクション映画やバイオレス映画に造詣の深いライター・加藤よしき氏によるハイロー放談、まずは前半戦です。
(以下、映画『HiGH&LOW THE WORST X』のネタバレを含みます)
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『クローズZERO』をどう更新するか? ヤンキーマンガ論から観る映画『HiGH&LOW THE WORST』(後編)
現在公開中の『HiGH&LOW THE WORST』について、ヤンキーマンガや映画を長年見続けてきたライター・藤谷千明氏と、アクション映画やバイオレス映画に造...「ザワクロ」は「アクション映画」としての完成形か
──「HiGH&LOW」の新作が公開されるたびに行っているこの対談、『HiGH&LOW THE MOVIE』(2016年/以下『ザム』)から始まってもう6年目ですね。そして前作『HiGH&LOW THE WORST』(2019年/以下『ザワ』)以来の3年ぶりです。だいぶ空きました。
藤谷 お久しぶりですね。
加藤 ご無沙汰しております。
──まずは全体の感想から始めていきましょう。
加藤 僕は『HiGH&LOW THE WORST X』(以下『ザワクロ』)、すごく楽しかったです。シリーズで一番好きかもしれません。理由は単純で、完全に文法がアクション映画になっていたからです。これまでのハイローはアクション以外にも、いろいろやりたいことがありましたよね。広い意味での人間ドラマだったり、「バイクや車をかっこよく撮りたい」とか「ライブシーンをかっこよく撮りたい」とか。それが今回はシンプルに学校同士のバトルものにして、その他の要素を全部削ぎ落としていた。だからアクション映画好きの自分はより楽しめたんだと思います。今年のベスト10に入るくらい好きですね。多分、僕はこの対談のたびに「この作品こそ『HiGH&LOW』シリーズの入門にベストだ!」って言ってる気がするんですけど、またそれが更新されたなと。これまでで一番ワケがわかりますから。
藤谷 同意します。本作から入るのはアリなのでは。ただ、我々はハイローに脳を殴られすぎてるんでちょっと自信がないところではありますが……。なんにしても今年ベスト級なのは間違いありません。アクションと話の運びも整理されていて退屈なシーンがないし、観ていて「目が足りん」とは相変わらず思うけど「なんもわからん」みたいな壊滅的な箇所はない。エンドロールの鎌坂勢が何をやっているのかは一目で理解できませんでしたが……。ただ、これは後編で詳しく話しますが、むしろその「気持ちよさ」に私はやや引っかかってもいます。
加藤 もちろん粗はゼロではないし、ちょくちょく気になるところはあります。でも僕は絶賛ですね。「Stand by you」が流れるところで泣きそうになったんですよ。こんなこと言うと失礼ですけど、ハイローのこれまでの楽曲の中で毎回バラードがいまいちピンときてなかったんです。『ザム』の“1000人”が殴り合った後で、しっとりとした曲が流れても「この状況で流す曲か?」という感じがあって。でも今回は詞の内容と映画のシーンが合っているし、それと、高校生のケンカには不似合いなほど異様に壮大なイントロですよね。あの過剰なドラマチックさがピンときました。
藤谷 演出の意図と連動してる。
加藤 アクションも、この期に及んでまだ観たことないものが出てきた。中盤で、三校連合が道を塞いでガーッと歩いて来るシーンがあるじゃないですか。
藤谷 そのシーン、震えましたね。宇宙イチ格好いい「チャリで来た」ならぬ「徒歩で来た」ですよ。
加藤 神がかってるなと思いましたね。もう、災害パニック映画ですよ。ああいうシーンは何度も観ましたもん。よくあるやつですよね。なぜか渋滞が起きて車が動かなくなってて「なんだなんだ?」って見に行ったら、怪獣か何かにブン投げられた車がブオーン! って飛んできて「うわー!」ってなるシーン。それを不良少年でやっている。普通の映画では絶対にないシーンなので、あれだけでも劇場で体験する価値があります。
藤谷 あそこで『クローズZERO』に出演していたやべきょうすけさんが出てくるのも絶妙で、大好きですね。高校生が歩いてきてるだけなのになんであんなにびっくりしてるの? と思いつつも、やべさんのリアクションが最高ですね。これまでのハイローシリーズといえば、すごいバイクとかすごいトラックとか、乗り物のインパクトで勝負していたところもあるじゃないですか。「ザワ」はそれが元から薄いというのはありますが、ここに来て徒歩。
加藤 不良たちの横一列の徒歩移動。
藤谷 北海道の暴走族か?(※北海道の暴走族は冬は雪でバイク暴走できないため、徒歩で練り歩くという話があります)
加藤 そのあと、鬼邪高の生徒が襲われるのが学校内じゃなくて街なかなのも好きでした。『ザ・レイド2』で監督が当初「シラット使いたちの市街戦をやりたい」って言ってたんですけど、結局できなかったんですよ。つまり『ザ・レイド2』ができなかったことを『ザワクロ』はやってる。「観てるか、ギャレス・エヴァンス。お前ができなかったことを、極東の不良少年たちがやってるぞ」と思いました。
藤谷 あのくだり、完全にテクノスジャパンの『くにおくん』シリーズにしか見えない。非現実的な明るい色の制服の人たちが街なかで殴り合ってるって、ほぼ『ダウンタウン熱血物語』でしょ。さすがに鉄アレイは投げてませんでしたが……。
加藤 あっ、たしかにそうですね。『くにおくん』だ。
藤谷 『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』なんよ! って、観てる間ずっと思ってました。小学生時代、きょうだいで殴り合って「れいほう」(登場する学校のひとつ「冷峰学園」。ゲームバランスが狂っているのでこのチームを取ることで勝利がほぼ確約される)を取り合ったことを思い出しました。ちなみに『クローズZERO』の中国版・台湾版タイトルが『熱血高校』なのは有名な話です。ハイローも『熱血街頭』だし、つながってしまったわね……。
加藤 つながりましたね。街中なかで喧嘩すること自体はほかの作品でもあるんですけど、大体はもっと泥臭い戦いになったり陰湿な感じになるんです。でも『ザワクロ』ではあくまで全員がアクション映画的に動くというか、アクロバティックに動いていて、しかも全員がかっこいい。現実vs虚構とは、まさにこのことですよ。そのあたりにワンダー観があって、初めて見る映像だという感じがしました。そして至る所に「ここは俺に任せて先にいけ」があるじゃないですか。なかでも清史(うえきやサトシ)の散り様が大好きで。
藤谷 あれも『クローズZERO』の拳さんのオマージュですかね。
加藤 そうですよね。「ここは通さんぞ」って。あのときの泰志(佐藤流司)と清史のほんのわずか数秒の芝居がすごくよかったです。
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