劇団EXILE 小澤雄太が三谷幸喜からもらった金言「時間はかかるけどいい役者だね」<インタビュー>
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昨年7月、コロナ禍のPARCO劇場再開第1弾作品として上映されたのが三谷幸喜作・演出の『大地(Social Distancing Version)』。そこで、主人公を無慈悲な運命に叩きつける役どころを演じ、観客の心を大いにざわつかせたのが小澤雄太だ。
多くのアーティストを擁するLDHで結成された劇団EXILEに所属し、地道にキャリアを積んできた小澤は、現在再びコロナ禍のPARCO劇場の板の上で芝居を続けている。そんな彼に、今演じている役の話、さらには三谷幸喜との出会いや、芝居への向き合い方について話を聞いた。
「弱さが魅力」の俳優に
――現在上演中の舞台『ピサロ』(PARCO劇場)に入る前は、どんな心境でしたか?
小澤 そのまんまですごしてました。今回は再演で、僕はその出来上がった中に入るので、ちょっと大変だなという気持ちですね。
――この舞台、どういうところが魅力だと感じていますか?
小澤 かっこいいだけじゃないんですよね。自分を貫こうと思えば矛盾が見えてくる。その中で見える人間の弱さの部分が魅力なんじゃないかって思うんですよ。お芝居をする側としては、「うまみ」しかない作品だと思いますね。
――「弱さが魅力」ということですが、小澤さん自身がそういうことを実感することはありますか?
小澤 「弱さが魅力」というのは、『ピサロ』の台本を読んで実感したことなんですけど、僕にもありますね。僕が、22歳で劇団EXILEに入ったとき、周りには15、6歳のかっこいい子たちがいたり、子役からやってる子たちがいて、その中で、社会人やめていきなり入ってきたものが、何ができるのかを考えました。
そのとき思ったのが、「かっこいい」ということだけでは俳優として足りないということでした。それなら「かっこよくないかっこよさ」とか、「プライドがないことがプライドである」ということとかを目指さないといけないなと思いました。そして、日々を積みかさねることでいい結果がでるんじゃないかと。
――もうこの世界に入ったときから「弱さが魅力」になるということを実感していたんですね。
小澤 もともと僕は弱さを見せることに抵抗がないんですよ。というのも、僕は中学3年生のときにいじめられていて。でも、いじめられたことで、絶対に負けないぞっていう野心も生まれたので。そのときに、見えたことがあったのは今考えると良かったと思いますね。
僕がいじめられた理由って、ヘラヘラしてるとか、チャラいっていうことだったんです。女きょうだいの中で育って、女性としゃべることに抵抗がなくて、誰とでも仲良くしてたんですけど、そのことが中学生時代には、チャラいと勘違いされたり、自分の好きな女子と何しゃべってんだって難癖つけられたりしたんです。
――そうだったんですね。そういうフランクな感じは今も変わらなさそうですね。前に劇団EXILEの青柳翔さん町田啓太さん鈴木伸之さんにインタビューしたことがあって、そのときにも、小澤さんは主演舞台をやったら、本当に100人単位で人が見に来るのがすごいっていわれてました。
小澤 ほんとに職種とか関係なく、人として気に入ったら仲良くなるので、いろんな人が舞台は見に来てくれますよ。考え方に賛同してくれる人がいたら、「俺も応援するから、お前も応援しろよ」って感じで友人が増えていって。それは、お互いに将来、形に残ることをやろうぜっていう感じでの友人です。僕たちの職業は、仕事もプライベートもごちゃまぜのようなものなので、その中で、人生を豊かにしないといけないし、その経験を活かさないといけない。でも、友達は十分にできたので、これからは自分がもっと大成していかないといけないなと思っています。
――俳優を始めてからもう10年以上が過ぎましたが、その中での苦労というのはありましたか?
小澤 つらいこともあったけど、それも楽しんでいる感じですね。社会人の方は、月から金で働いて、土日は休みだから充実させようって感じだと思うんです。でも、僕らは土日が永遠に続く感じで、その土日がお金ににならないと、休日はないんです。だから、楽しむだけじゃなくて、それをエンターテインメントにしないといけない。だとすると、けっこう楽ではないんだけど、どんなことも楽しんで、感情表現にも活かさないといけないなと。
――つらいというと、デビューから数年は、思ったように役にありつけないとか、そういうこともあるのかなと思いますが。
小澤 思うようにいかなくても、そのことを良くしていこうと考えれば苦とは思わないんです。でも、この作品に出ることになりましたということがあって、そのときは「やったー」と思っても、この作品で期待以上のものを出さないと次がないということもあります。僕らは、期待にこたえられるようにやっても、評価がダメなときはダメだし、もしも一個何か問題を起こせば明日はどうなるかはわからないし、そういう意味では崖っぷちの仕事ではあります。楽しく続けていくために、気にしないといけないことは多いです。
三谷幸喜との出会いも「次はないなと思った」
――そんな中で、最近の小澤さんの仕事というと、やっぱり三谷幸喜さんとの出会いというのは大きいのかなと思いますが、映画『記憶にございません!』(2019)で、初めて対面したときは、いかがでしたか?
小澤 初めてお会いしたのが、衣装合わせのときで、『ウルトラマンジード』のDVDについている特典のインタビューまで見てくれて、声をかけてくれました。でも実は、三谷さんの息子さんが『ウルトラマン』が好きで、息子さんのおかげみたいなところもあります。
――さきほど、俳優というのは結果を出さないと次がないということを言われてましたが、三谷さんとの仕事でいうと、『記憶にございません!』の次にも、舞台「PARCO劇場オープニングシリーズ『大地』」に呼んでもらったわけですよね。それは、結果が出せたということではないかと思ったんですが。
小澤 実は、『記憶にございません!』のとき、僕の中ではいい結果が残せたとは思えないことがあったんです。映画の撮影の僕の初日のとき、もう台詞も死ぬほど覚えていって、完璧ってくらいだったのに、いざ大御所の方を目にしたら、飛んでしまったんですよ……。僕自身は完璧だと思って入ってるから、台本も楽屋に置いていて、なのにドライ(カメラなしで行われるリハーサル)が始まったら何しゃべったらいいのかわからなくなって。それで、三谷さんの台本を借りて台詞を確認するという、一番やっちゃいけないことをやっちゃったという……。
――そんなことがあったんですね。
小澤 普段は緊張することってないのに、ディーン・フジオカさん、小池栄子さん、草刈正雄さんを目に前にしたら、緊張するもんだなと……。三谷さんも、たぶんワンカットにするつもりだったのを、カットを割ろうということになって。ほんとに一番やっちゃいけないことをやって、次はないなと思ってたんです。
――それなのに次があったんですね。
小澤 映画の撮影が終わって、「もし次やるなら、舞台がいいですか、映像がいいですか」って三谷さんに聞かれて。「小澤さんは舞台もたくさんやってるみたいだから舞台をやりましょう」と言ってくれて、そしたら本当に声をかけてくれたんです。それと、映画の撮影のときは、最初の台詞が、嘘をつかないといけなくて、動揺を隠せないという芝居だったんですね。僕はそのとき、台詞が飛んで動揺していたので、うまい具合に動揺しているのを隠そうとしているような演技ができてたみたいで、三谷さんはそういうところに「人間の真理が見えた」って言ってくれましたね。
――アクシデントが功を奏したんですね。
小澤 完璧に準備していくのがいいんじゃなくて、その場の状況を見て冷静に判断することも必要なんだなと。何が起こるかわからないのがこの世界なので、だからこそ10年やっても面白いし、この先も飽きないんだろうなと思いますね。
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