あなたの夫は「ユニクロのフリース」か?──W不倫マンガ『あなたのことはそれほど』から学べること
#マンガ #雑誌 #結婚 #離婚 #あなたのことはそれほど #稲田豊史 #いくえみ綾
──サブカルを中心に社会問題までを幅広く分析するライター・稲田豊史が原作を務めるマンガ『ぼくたちの離婚』(集英社)が、3月18日に刊行される。これを記念して「月刊誌サイゾー」で連載中の「稲田豊史のオトメゴコロ乱読修行」から、「結婚・離婚」にまつわるテーマを選りすぐって無料公開します!
※本文中にはネタバレがあります。(サイゾー2015年11月号より転載)
データ漏えいを恐れて自殺者も出た不倫マッチングサイト「アシュレイ・マディソン」(男性登録者3100万人)の例を出すまでもなく、「不倫」には国家・人種を超えた麻薬的な魅力があるようだ。
そんななか、我が国が誇るW不倫マンガ、待望の最新刊が10月に発売された。既刊3巻(以下続巻)で累計35万部突破、いくえみ綾の『あなたのことはそれほど』である。掲載誌は女性向けの『FEEL YOUNG』(ともに祥伝社)。しかし男も読める、否、男も読むべき問題作だ。未婚男性も既婚男性も、職場の同僚やマンションのパパ友と、輪読会で議論を交わすのに格好のテキスト。今まで育んできた女性観の棚卸し作業に、ぜひ勤しんでいただきたい。
大事なことなので先に言っておこう。男性諸氏がこのマンガで学ぶべきは、不倫の仕方や妻の不倫を防ぐ方法ではない。ズバリ、男と女が結婚相手を決める根拠の決定的な差である。本書は「不倫」という行為について綴りながら、4人の夫婦がそもそもなぜ現在の配偶者をセレクトしたのかを、残酷にあぶり出す物語である。
主要登場人物は2組の夫婦だ。まず、ヒロインの三好美都(みよし・みつ)29歳と渡辺涼太の夫婦(子どもなし)。そして美都の不倫相手である有島光軌(ありしま・こうき)と戸川麗華の夫婦(作中で第一子誕生)。このうち、美都と光軌が不貞を働く。
病院の受付事務員である美都は、とりたてて特徴もないが、そこそこの美人。ある時、小中学校時代に片思いだった同級生の光軌と偶然再会し、不倫の泥沼にズブズブと足を埋めていく。
その光軌はいわゆるイケメンのモテ男。学生時代から女性関係であまり苦労したことはない。それゆえ、もともと美都には取り立てて思い入れもない。しかし美都からのアプローチに応じ、素直に据え膳を食った。
次に、それぞれの配偶者を見てみよう。美都の夫、涼太はインテリア関係の会社の総務職、35歳。生真面目で穏やか、几帳面で料理が得意な男。「安パイ」という言葉の似合う、無難な善人そのものである。
問題は光軌の妻、麗華である。彼女は「地味でパッとしない容姿の女性」として描かれている。高校時代は光軌と同じクラスで委員長。表情は固く、愛想がなく、男子に人気があるとは言いがたい。もちろん男っ気はゼロ。父親が失業して家出中の貧困家庭に育っており、常に物事を冷静に見ている。しかし内なる情念はすさまじく、一昔前のストーカー女的な雰囲気を持っている。
冒頭で提起したように、ここで考えるべきは、なぜ美都と涼太、光軌と麗華が結婚したかということだ(特に男性読者は、なぜ光軌が麗華を選んだのか理解に苦しむだろう)。結論から言えば、女は「タイミング」で結婚を決意し、男は「ステータス」で結婚を決意する。だからこそ、この2組の夫婦は夫婦たりえた。
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