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日刊サイゾー トップ > 社会  > 元加害者の僕が再びモラハラした話
「モラハラのトリセツ」第11回

元モラハラ加害者の僕が、再びモラハラ問題を起こした話(前編)

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※これまでの話はこちらから

 こんにちは。メンズカウンセラーの中村カズノリです。

 半年間の予定で始まったこの連載も、終わりが近づいてきました。連載経験のなかった僕が無事にここまでたどり着けたのは、サイゾー編集部と読者の皆さんのおかげです。

 最後は僕自身の近況を、2回に分けてお話ししたいと思います。「元モラハラ加害者で離婚を経験」という経歴はこれまでにも書いてきましたが、ある意味では、今なお当事者です。

 ここ1年以内に、僕は今の結婚でモラハラの問題を起こしています。DVやモラハラ当事者のカウンセリングをしているにもかかわらず、です。これまでの記事で「モラハラは、条件さえそろえば誰にでも起こり得る」と書きましたが、それは僕も例外ではありません。

 昨年の秋頃……この連載のお話を頂く少し前の話です。その頃の僕は、常にどうにも落ち着かない、はた目から見てもピリピリしている印象を与えてしまう状態に陥っていました。

 そういうときは妻に話を聞いてもらってモヤモヤの原因を探り当て、さらに思い切って妻に甘えることでエネルギーをチャージするのが常だったのですが、ちょうどその時期、妻は少し体調がすぐれず、寝かしつけで子どもより先に寝てしまうこともしばしば。朝は僕が妻ほど早くは起きられないので、夫婦の会話の時間は思うように取れませんでした。

 逆に子どもはすこぶる元気で、夜はなかなか寝てくれず、妻といい雰囲気になったとしてもフライングボディアタックで乱入してくるありさま。仕事をしていても何かにつけ邪魔されて、ついつい疎ましく感じてしまい、親なのにと自己嫌悪に陥る――。そんな悪循環が起きていました。

 やるべきことができない無力感と、妻とすれ違って自分が大事にされていないような不安感。普段なら自己処理もできたはずのそれらが奇妙に絡み合って膨らんで、ある日パーンとはじけてしまった――そんな感じでしょうか。

 具体的に説明すると、夜、妻と子どもが寝入ったあとに、過去に妻にプレゼントした美顔器と、自分のお下がりのスマホを、台所のゴミ箱に思い切り放り込んでしまったのです。良かれと思って贈ったのに期待したように喜んでもらえなかった、「してあげた」ことが報われなかった空回りの象徴だったと思います。

 また、なかなか寝付かない子どもに対し腹を立て、一度、怒鳴り声を上げてしまったこともあります。

 しかし、感情を爆発させてもそれで気分が晴れることはなく、1週間ほど不機嫌オーラを出し続けてしまいました。

 その時の自分の感情としては、「もう離婚になってもいいや…!」というヤケクソ感と「やらかしてしまった……。嫌だ、このまま問題が大きくなってしまうのはつらい。寂しい。怖い」という強烈な不安。複数の感情を同時に抱いていたのを覚えています。

 妻と子どもに対して非常に申し訳なく思いながら、強烈な自己嫌悪に陥ってしまいました。僕は過去の結婚でも、自分のモラハラが原因で破綻させてしまった経験があります。そんな自分を脱したいと望み、グループワークやカウンセリングでトレーニングを何年も積んできました。自分と同じ問題を抱える人に対する支援者になるための勉強も重ねました。モラハラがなぜ起こるか、どう防ぐか、起きてしまったらどう対処していくか、それを知り、語ってきたにもかかわらず、自分自身の中の再発因子は消せていなかったということです。完全に消し去れるものではないとわかってはいても、改めてそれを現実として突きつけられてしまうのは、とてもつらいものでした。

 やらかしてしまった際に僕が感情にのまれかけながらも、冷静な部分で考えていたのは「僕は何がしんどいんだ?」という点でした。激しい感情に突き動かされながら、その一方で冷静に考えている自分もいる……そんな状況でした。一度感情に突き動かされると、理性では止められないことを改めて思い知らされる体験でもありました。

 そんな状況に陥った僕がまず考えたことは「これ以上、勢いにまかせて突き進んではいけない」でした。このまま感情にまかせて行動し、今回のような爆発が日常化してしまうと、取り返しのつかないことになってしまう。そんな危機感を強く感じ、なんとか踏みとどまる必要がありました。

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