政府公認のLGBT専用出会い系アプリ運営会社が米国で上場間近
#中国 #LGBT
この数年でLGBTという言葉がかなり浸透してきた日本だが、LGBTの人々にはまだまだ暮らしにくい世の中ではある。
一方、LGBT人口が約7,000万人ともいわれる中国では、ビジネス業界に一定の規模を持つ市場として認識され始めている。
そんななか、中国最大の同性愛者専用デートアプリ「Blued」運営会社が、アメリカで上場間近だと伝えられた。
「ブルームバーグ」(8月30日付け)によると、中国発の同アプリは世界全体で約4,000万人もの会員を抱え、中国国内の同性愛男性の90%(約2,700万人)が、このアプリに登録しているという。同社は、来年にアメリカ市場への上場(IPO)を目指しており、現在のところ、評価額としての企業価値は10億ドル(約1,000億円)に達しているとされる。
しかし、これまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。
Bluedの前身となるゲイ専用コミュニティサイト「淡藍色的回憶」が誕生したのは2000年のこと。創設者の耿楽氏は元警察官だ。自身も同性愛者であったことや、当時、中国国内で性的少数者に対する偏見が大きかったことなどを理由に警察を辞め、自分と同じ立場の人々のための情報サイトを立ち上げたことが起業のきっかけだった。
当時の中国では「同性愛は精神疾患である」と見なされていたこともあり、開設したサイトに対する苦情の声が当局に寄せられるなどの憂き目にも遭ったという。しかしそんな中、08年に転機が訪れる。当時、中国ではHIV感染やエイズ患者数が爆発的に増えており、政府はその対策に頭を抱えていた。耿氏は、そこに目を付けたのだ。
耿氏は自身の運営するサイトで、エイズに関する啓蒙活動を行うことにしたのである。この選択が、同社を1000億円企業へと成長させるきっかけになった。中国国内のエイズ予防センターなどの医療機関と提携し、会員に対してエイズ検査の受診を積極的に呼び掛けたり、医療機関の情報を提供するなど活動を行っていた。こうした活動の結果、12年、耿氏は中国国務院(日本の内閣に相当)からエイズ予防委員会の正式メンバーとして招集を受けたのである。当初、単なる同性愛者の出会い系サイトと見られていたBluedは、中国政府公認のもと、エイズ予防も行う企業となっていったのだ。
現在Bluedは日本語を含め世界11カ国語に対応するなど、世界的アプリへと成長を続けている。日本でもLGBTの社会浸透をビジネスチャンスととらえる企業や起業家が増えれば、彼ら当事者たちにとって、より住みよい社会に近づくきっかけとなるかもしれない。
(文=青山大樹)
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