卵パック、段ボールに防音効果があるという噂は本当? 防音グッズ専門店が解説【前編】
#石徹白未亜 #防音室 #静かに寝たいあなたに
【「おたぽる」より】
「幹線道路が近い」「居酒屋やコンビニが目の前にある」「隣人や上階、階下の人間がうるさい」など、騒音での睡眠不足に悩んでいる人は少なくない。筆者も耳栓の欠かせない生活を送っているが、できれば耳栓なしでぐっすり眠りたい。当連載では過去にヤマハが展開する「防音室」に取材をしてきたが(参照記事:ヤマハの楽器用『防音室』は「寝室」として使えるのか? 公式に聞いてみた!)、そもそも「防音知識の基礎」がわからないため、防音専門店ピアリビング室水房子代表取締役と、梶原栄二東京支店長に話を伺った。
卵のパックに防音効果はあるというネットの噂は本当?
――防音専門店から見て、一般の人たちの防音知識で間違っているな、と思うものはありますか?
室水房子氏(以下、室水) 今はネットでさまざまな防音情報が錯綜していますよね。卵のパックに防音効果があるという情報がネットで流行っていたときもありましたが、卵のパックでは難しいです。
梶原栄二氏(以下、梶原) 段ボールに防音効果があるともよく見ますね。段ボールの場合は、何重にも重ねると確かに防音効果は出てくるのですが、段ボール一箱分くらいではあまり防音効果はありません。
防音の基本は遮音と吸音。しかし遮音と吸音って何?
――御社のホームページを見ると、防音は「遮音+吸音」とありました。字面通り「遮音:音を遮る」「吸音:音を吸い込む」だと思うのですが、違いがよくわからなくて。
梶原 遮音は単純で、それこそコンクリートのような「堅い、重い、厚い」素材ならより一層遮音効果が出ると考えていただければ大丈夫です。
室水 一方、吸音ですが、音は振動でありエネルギーです。例えば、堅い壁にボールを強く投げると、結構な強さで跳ね返りますよね。 でも、布団のようなものに投げたら、ボールは硬い壁にぶつけた時よりは跳ね返りません。これは布団の中の繊維が、エネルギーを吸収するためです。
音も同じです。硬い壁に向け音を出すとそのまま跳ね返りますが、布団のように柔らかいものだと音のエネルギーが吸い込まれて弱くなります。これが「吸音」です。
――跳ね返りが弱くなるほど、吸音効果が高いということですね。
室水 はい。遮音の場合はそれこそコンクリートのような「堅い、重い、厚い」方がより遮音効果は高まります。一方、吸音になると中に音が入り拡散させ、弱めるようなものの方が吸音効果は高まります。
――「遮音」と「吸音」で求められる素材の質感は、ずいぶん異なるんですね。
室水 はい。そして「防音」は「遮音」と「吸音」の両方を兼ね備えてなければいけません。
人間も音を吸い込む――がらんとした体育館で音が響く理由――
室水 「遮音」効果は高いものの「吸音」を何もしていない部屋の例として、打ちっぱなしのコンクリートの、何も家具のない室内をイメージしてみてください。この場合、遮音効果は高いのですが吸音できないため、音は反響を繰り返し、うるさく響き続けます。
――テニスの「スカッシュ」のように、音エネルギーが吸い込まれることなく跳ねかえっていくと。
社長 はい。ただこのコンクリート打ちっぱなしの部屋に人が入ったり、カーペットやソファーなど家具が入っていくと、音の反響はどんどん弱まっていきます。
――人間やソファーも「吸音」するんですか?
社長 はい。人もソファーも、コンクリートの壁よりは柔らかいですから。
体育館をイメージしてみてください。人がほとんどいない体育館で大声を出すと響きますが、人が入れば入るほど声は響きにくくなります。人そのものも、また人が着ている服も吸音するためです。
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