『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』ついにラスト2話!限界突破の先にあるもの
#沖田臥竜 #インフォーマ
『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』もついに佳境に突入する。闇バイト事件を発端としたさまざまな謎が解き明かされつつある中、主人公・木原慶次郎をかつてない危機が襲う――。その一方で、『インフォーマ』の原作者である沖田臥竜氏も災難に見舞われたが、それが自身の創作へのモチベーションを再認識する大事な機会にもなったようだ。
創作への情熱は止まらない、第7話前夜
闇を切り裂く足音は、姿現し獣の咆哮。今夜、第7話、ついにあの男が姿を見せる――。
先週は、自分も知人も、体調面ですさまじく過酷な1週間だった。風邪や感染症の恐ろしさを目の当たりにさせられたのである。懇意にしている『ザ・ファブル』の南勝久先生は高熱で倒れ、『ムショぼけ』のマンガ家、信長アキラ先生はインフルエンザにかかり、来年夏からスタートする企画の編集担当も体調不良で2日間寝込み、ドラマ『インフォーマ』シリーズのプロデューサーのジョニーはリンパを腫らして入院することになった。
もしかすると、わたしがもつ求心力によって、人ではなく、病原菌が一堂に会してしまったのかもしれない。
かく言う私も、39.6度まで熱が上がり、病院に駆け込んだが、コロナもインフルも陰性だったものの、結果はまさかの肺炎だった。高熱、インフル、リンパに肺炎。これではまるで、病原菌の百貨店である。
ただ、我々はクリエイターである。寝込みながらも仕事はしていた。当たり前ではないか。身を削ってでも仕事するとは、そういうことなのだ。作品作りにおいて、休みたいを思ったりとかゆっくりできるなんてことはなく、それは自分にとって特別なことでもない。
代わりはいくらでもいる世界である。休むなどして隙を見せれば、仕事は奪われてしまう。しかし、私は誰にも渡す気がない。だからこそ、仕事するのは当然のことだ。
熱が上がる前、藤井道人監督から、映画『正体』の舞台挨拶を私の地元・尼崎でやるということで、劇場への招待を受けた。足を運んでみると、映画館の最前列には私ひとりが腰かけているだけ。なんとも不思議な気持ちだった。プライベートでずっと通っていた映画館の最前列で、私は藤井監督と主演の横浜流星さんの挨拶を聞かせてもらっていたのだ。
そしてそこで2人は、『正体』の舞台挨拶にもかかわらず、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の宣伝もしてくれたのだ。映画の本編で私を泣かせて、その後の挨拶でも私を泣かせようというのか。私は2人の人間性に心が揺さぶられ、いたく感銘を受けた。同時に2人の姿が輝いて見えた。舞台上での堂々とした2人の姿は、自信に満ち溢れていた。
こんな窮屈な時代でも、彼らは映画『正体』という作品で、真っ正面から世の中に向かって想いを届け、人々の心を魅了してみせている。私が小説家になろうとペンを握った時に感じた感動がそこにあったのだ。今、伝えたい映画がここにある。藤井道人監督、横浜流星さん主演、映画『正体』。忘れていたものを思い出すことのできる映画だ。
舞台挨拶の翌日の火曜日は、『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の第6話で挿入歌を歌ってくれたケイスケサカモトさんがホストを務めるラジオ番組への出演があった。
医師から処方された薬で熱を下げて、なんとか喋り通した。私の話なんかで人が笑ったり、喜んでくれるのだ。そんな有難い話があるだろうか。水曜日は、朝からzoom会議などが詰まっていて、翌日の木曜日は『インフォーマ』の舞台としても使用させてもらっている尼崎市にある「焼肉 光(みつ)」で、RIZINファイターの皇治選手と語りあった。
皇治選手には、ドラマ『ムショぼけ』と『インフォーマ』シーズン1に出演してもらっており、『インフォーマ』の出演をキャスティングしたのは私だった。
2人でいろいろなことを語り合ったが、皇治選手は本当に気持ちのよい男らしい男だ。そんな男と重ねる杯は、うまいに決まっている。
焼肉 光のお客さんたちもみんな喜び、皇治選手はお願いされた人、全員と笑顔で写真を撮ってくれていた。私にとって当たり前なことだが、こういう気持ちのよい人たちとまた一緒に仕事がしたいと思うのだ。
第6話の放送が終わった日、前回の当コラムで書いた通り、この回にかかわってもらった猫組長からも南勝久先生からもケイスケサカモトさんからも、喜びの連絡があった。これが私にとって報われた瞬間、頑張ってよかったと思える瞬間になるのだ。
辛いとか忙しいとか気分が乗らないとかで、私は筆を止めるようなことはしない。自分の作品を求め、待ってくれている人がいるような環境にたどり着くまで、何年かかったと思っているのだ。ありがたいではないか。私が紡ぐ物語を待ってくれている人たちがいるのだ。どんなことがあろうが、書くに決まっているではないか。
今週からは、来年春に出版する予定の小説の推敲作業が始まる。戦い切って、また「仕掛けてきたか!」と、みんなを驚かせることが発表できたらと思っている。
そして、『インフォーマ −闇を生きる獣たち−』もいよいよ後半戦。残すところ、あと2話となった。私の場合は、作品を世に出してホッとする気持ちと、作品が終わってしまうさみしい気持ちとが入り乱れる。
ただ、物作りにおいて、常に前進していることを感じることはできている。ここでもしも朽ち果てたとしてもーーという気持ちで、私はいつも物語を生み出している。
それが後退していると感じ、過去の自分のほうが熱量があったと私が思うようならば、作品作りとして限界を超えてきていないということだ。それはつまり、私の思うプロではないのだ。どこかで妥協があったからこそ、そう思うわけで、私はまだ新しい物語を生み出すとき、過去の自分と対峙して、いつもそれを超えてきていると思っている。どうせなら、限界の先にどういう景色が待ち受けているのか、見てみたいと思っているのだ。
第7話には、ついにあの男が姿を見せる。その男も闇が生み出した獣だろう。存分にソーシャルメディアを『インフォーマ』で埋め尽くしてほしい。
龍之介の「チップが日本に入ったという連絡がありました」という声も、今夜あたりに聞けるのではないか。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時~ABEMAにて放送
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中
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