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【24年秋ドラマ】『海ダイヤ』斎藤工の退場劇 最終章は「シュアード・ユニバース」もある?

【24年秋ドラマ】『海ダイヤ』斎藤工の退場劇 最終章は「シュアード・ユニバース」もある?の画像1
神木隆之介(写真/Getty Imagesより)

 日曜の夜は、SNS上で激しく考察バトルが繰り広げられています。日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は第8話を迎え、大いに盛り上がっています。第7話の世帯視聴率も8.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とちょっぴり持ち直してきました。今夜からは最終章に突入。かつては理想のコミュニティーとしてキラキラ輝いていた「軍艦島」は閉山へと向かい、登場キャラクターたちはバラバラになっていくことになりそうです。

 先週放送の第7話「消えない火」は、ディザスター映画のような緊迫感があふれる54分間でした。1964年8月17日、不気味なサイレンが島に鳴り響き渡ります。炭鉱内に充満していたガスに火がつき、大火災が発生したのです。

 前年の福岡県三池炭鉱では、炭鉱内事故で450名もの死者が出ています。島で暮らす鉄平(神木隆之介)たちは気が気ではありません。食堂で働く朝子(杉咲花)や幼なじみの百合子(土屋太鳳)はおにぎりや冷たい味噌汁を用意して、鉱員たちを励まします。

 鉄平の兄・進平(斎藤工)らが坑内に潜り、懸命に消火活動にあたるものの、ガスの勢いは止まりそうにありません。炭鉱長の辰雄(沢村一樹)は断腸の思いで、坑内に海水を引き込むことでの消火を決断するのでした。

 炭鉱を放棄することは、炭鉱町としての「閉山」を意味します。みんな、島で暮らすことができなくなります。排水ポンプの停止ボタンを押す役割を負った鉄平のつらさは、計り知れないものがあります。

あまりにも恐ろしすぎるタイトル回収

 悲劇はそれだけでは済みませんでした。進平はリナ(池田エライザ)との間に子どもが生まれ、幸せいっぱいの日々を過ごしていました。軍艦島が閉山すれば、過去にワケありなリナは暮らす場所がなくなります。炭鉱を守ろうと最後まで消火活動をしていた進平は、ガス中毒で倒れてしまいます。

 波に飲まれて行方不明になった前妻の幻覚を見る進平が不憫でした。かねてから死亡フラグが立っていた進平ですが、まさか進平そのものが「海に眠るダイヤモンド」になってしまうとは……。なんとも恐ろしいタイトル回収です。

 リナと子どもと暮らすことで、幸せをつかんだように思えた進平ですが、心の中では前妻のことを忘れることができずにいたようです。兵役経験のある進平は、戦地で起きたことも誰にも話すことがありませんでした。第5話ではリナを守るために、殺人および死体遺棄という罪を犯しています。進平は多くのものを背負い過ぎていたのかもしれません。

 神木隆之介主演の特撮映画『ゴジラ-1.0』(2023年)でも描かれていましたが、戦地からの引き揚げ者たちは現代人の想像を絶する体験を味わっています。亡くなった人たちに対する罪の意識が、生き残った人たちを仕事人間へと変え、日本は驚異的な戦後復興を果たしたのではないでしょうか。昭和世代の人たちが、仕事漬けの生活を送り、外で酒を飲んで回っていたのは、忘れたい過去があったからなのかもしれません。

日本映画史に残る大ヒット作と重なる展開に

 炭鉱長役の沢村一樹も名演を見せました。人命を優先するために、炭鉱内での消火活動を断念することを島内放送で島民に告げることになります。厳粛なシーンでした。

 このシーンを見ていて、パニック映画の名作『日本沈没』を思い出しました。2021年に日曜劇場で放映された小栗旬主演の『日本沈没 希望のひと』や樋口真嗣監督の『日本沈没』(2006年)ではなく、1973年に公開された森谷司郎監督のオリジナル版『日本沈没』です。日本列島が海に沈むことが分かり、総理大臣の山本(丹波哲郎)はひとりでも多くの日本国民を海外に脱出させようと尽力します。「私は日本人を信じています」という名言を残す総理役の丹波哲郎と、炭鉱長役の沢村一樹が重なって思えたのは自分だけでしょうか。

 オリジナル版『日本沈没』では、主人公の藤岡弘(現・藤岡弘、)といしだあゆみは生き別れたままエンディングを迎えてしまいます。劇場公開時は未完のまま終わった『日本沈没』に不満に感じたのですが、それから50年後に放映される『海ダイヤ』の最終章は、『日本沈没』の第二部を思わせるものがあります。島を離れていった人たちはどう生きていくのか? 鉄平、朝子、それぞれの決断から目が離せません。

日本社会の問題点をえぐる野木亜紀子のシナリオ世界

 最終章では軍艦島が閉山に至るまで、そして現代パートの主人公である玲央(神木隆之介:二役)は島出身者と血縁があるのか、いづみ(宮本信子)はどのようにして鉄平の日記を手に入れたのかが明かされることになりそうです。

 1974年に行われた軍艦島の閉山式の記念写真には、鉄平は写っていませんでした。しかし、鉄平は今も生きている可能性があります。とはいえ野木亜希子脚本では、朝子の50年後であるいづみと鉄平が再会してハッピーエンドという安直な展開にはならないはずです。

 日本が太平洋戦争に踏み切ったのは、資源&エネルギー不足が大きな要因でした。80年後の今も、その問題はまったく解決していません。化石燃料に今後も頼り続けるのか、それとも原発を再稼働させるのか。炭鉱の世界を題材にした『海ダイヤ』は、現代の日本社会の根底に関わる問題を描いています。

 今年は野木脚本、塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーによる映画『ラストマイル』も、大きな話題を集めました。「2024年物流問題」をモチーフにした社会派サスペンスですが、満島ひかり、岡田将生ら人気キャストを起用したこともあって、興収55億円の大ヒットを記録しています。また、野木&塚原&新井が組んだ人気ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』(共にTBS系)のキャストも『ラストマイル』には登場し、「シュアード・ユニバース」としても注目されました。

 今夜放送の第8話は、火災事故から4カ月が経ち、鉄平と朝子は島を離れて長崎市内でデートを楽しむことに。しかし、その後はシビアな展開が待っています。

 フィナーレに向かって、ますますシリアスさが増していきそうですが、『海ダイヤ』も「シュアード・ユニバース」作品なのかどうなのかもにも着目したいところです。現代パートでも殺人事件が起きないと『アンナチュラル』『MIU404』の顔ぶれは登場できそうにありませんが、いづみの長女(美保純)の婿(宮崎吐夢)あたりが変死体で発見されれば、その可能性も浮上しそうです。いづみの秘書・澤田(酒向芳)が、実は潜入捜査官だった……、なんてのは深読みのし過ぎでしょうか。

 残りの話数を考えると、過度な期待はできません。でも、『ラストマイル』で宅配ドライバー役を好演した火野正平さんは今年11月に亡くなられましたが、現代パートの時制が2018年から2024年に変わり、息子役の宇野祥平がいづみ宅にクリスマスプレゼントかお歳暮を届けに現われればいいなぁ、などと個人的には思っています。どんな結末が待っているのか、想像が膨らむばかりです。

(文=長野辰次)

最終更新:2024/12/15 09:00
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