【24年秋ドラマ】『あのクズを殴ってやりたいんだ』最終話 奈緒、「ボクサーという生き物」の顔になる
#あのクズを殴ってやりたいんだ
アラサー市役所ガールのほこ美ちゃん(奈緒)が、自分をコケにしたクズ男・海里(玉森裕太)を殴るためにボクシングを始め、やがてプロのリングにたどり着くまでを描いたドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)。
主人公はあくまでほこ美ちゃんですが、描かれたのはひとりの妖艶なクズ男が真人間になるまでの失われた時間の回復の物語。玉森裕太のファンにとっては、いろんな玉森が見られる眼福な作品だったはずです。
その一方で、クズ男がクズになった原因を「ボクシングで人を殺した」と表現し、競技中に起こった事故を「罪」「加害」として一面的に描いていたことに終始モヤモヤしつつ、最終回。振り返りましょう。
■それは控室でやれ
海里くんがかつて“殺した”相手の平山大地(大東駿介)の弟・悟(倉悠貴)が仕組んだスパーリングでノックアウトされ、脳震盪を起こして入院中のほこ美ちゃん。足も捻挫しているし、家族にも心配をかけたし、せっかくプロテストに受かったけれどボクシングを続けるかどうか悩んでいます。
一方、自分のせいで大好きなほこ美ちゃんが危ない目にあったことで、ハートブレイクな海里くんは、カメラマンの仕事も何もかもを放り出し、べそをかきながら夜の街をさまよっていました。公園でうずくまっていたところを拾ってくれた近所の町工場で、住み込みで働き始めています。
死んだ目で、死んだような日々を過ごす海里くん。通りすがりのチンピラにボコられても、なんの感情もわきません。そんな海里くんの居場所を突き止めたほこ美ちゃんは、海里くんにもう一度立ち直ってもらうためにボクシングを続けることにします。1日でも早く試合をして、その姿を海里くんに撮ってもらいたい。ほこ美は練習に明け暮れながら、足しげく海里くんを訪ねては励まし続けるのでした。
その姿に、徐々に勇気づけられていく海里くん。悟ともう一度向き合い、その思いを伝えます。
そして迎えたほこ美のデビュー戦。海里くんはカメラを手に会場に向かって全力疾走していました。なんで遅刻しそうになってるのか、電車で行けばいいのにどうして徒歩(疾走)なのか、よくわかりませんが、とにかくエモーショナルに走っています。
会場では、すでに試合開始のリングが鳴っていました。最初は好調だったほこ美ですが、相手のパンチによってスパーリングのトラウマが蘇ってしまい、その隙をつかれて先にダウンを奪われます。
ほこ美がマットに倒れ込んでいると、ようやく海里くんが到着。その姿を見たほこ美は立ち上がり、見事、逆転ノックアウトで勝利を飾るのでした。
リングサイドでシャッターを切り続けていた海里くんに駆け寄るほこ美。その場で抱き合ったり、おでこをくっつけ合ったり、一緒に写真を見たりとイチャイチャしています。別にいいけど、それは控室でやったほうがいいね。
そうして再びカメラマンの道を歩き出した海里くん。ほこ美ともいい感じで付き合い直すことに。あと、ほこ美にフラれた市役所の大葉さん(小関裕太)はほこ美と同じジムに入門し、トレーナーのゆいさん(岡崎紗絵)に乗り換えるようです。ゆいさんもまんざらでもない感じで、万事ハッピーエンドとなりました。
■そういえばロッキーも
「リング禍=殺した」という扱いについては、もうさんざん過去回で文句を言ってきたので今回はそれ以外の話。
ボクシングの試合をドラマのクライマックスに持ってきたからには、この試合をどう撮るかが、やっぱり作品の評価そのものにつながってくると思うんですよね。試合のシーンがシャバかったらシャバいドラマになるし、バシッと決まってたらいい作品になる。
結果、全然シャバくなかったですね。
奈緒ちゃんすごく練習したと思うし、最後、逆転の右アッパーを振ったシーン、その顔にはちゃんと迫力があった。ボクサーという生き物の顔をしていたと思います。そういえば『ロッキー』(76)のロッキー・バルボアがその映画のクライマックスでアポロにブチ込んだのもサウスポースタイルからのアッパーだったね。あれは右じゃなくて左だったけど、ボクシングのドラマを作って、見ている人が「そういえばロッキーも……」なんて、あの50年近く前の名作が思い浮かんでるわけですから、それは成功している、ボクシングを撮り切っているといっていいと思いますよ。
ひとつのシーンで、そのドラマの印象がガラッと変わることがあります。全話を通して玉森のセクシーさ、玉森の切なさ、玉森の愛らしさ、玉森の健気さ、そしてまた愛しさと切なさと、心強さと。玉森オンパレードの作品でしたが、最終回の試合のシーンできっちり「2人のドラマだったね」という印象を残すことになりました。
初回のレビューで「ボクヲタはプヲタより陰湿ですからね、ナメたことすると大変です」と書きましたが、結果、全然ナメてなかったと思う。おつかれさまでした!
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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