【24年秋ドラマ】『ライオンの隠れ家』第9話 待ちに待った向井理のターン その無双ぶりに慄く
#ライオンの隠れ家
いやー俄然盛り上がってまいりました『ライオンの隠れ家』(TBS系)も第9話、残り3回となって、プロデューサーの松本友香さんが取材に応えて「今回の9話は、ちょっとだけ覚悟のいるビターな回かもしれません」とおっしゃっているニュース記事がありましたが、「ちょっとだけビター」なんてもんじゃなかったね。ビッタビタにビターでした。
振り返りましょう。
■向井理おいしいです
ヒロト(柳楽優弥)が逃亡先のペンションに戻ってみると、部屋は荒れ放題。愛生(尾野真千子)とライオン(佐藤大空)は姿を消しており、みっくん(坂東龍太)はパニック中。どう考えても、DV夫の橘祥吾(向井理)の仲間の顔が怖いやつ(後藤剛範)が連れ去ったに違いありません。
その顔が怖い樺島のアストロの後部座席で、手をつないで覚悟を決めたような顔をしている愛生とライオンくん。フェリーが佐渡から本州に到着すると謎の男「X(岡山天音)」がクルマの前に立ちふさがりますが、怖い樺島にひとひねりでやられてしまいました。「X」もまた、過去にDV被害を受けていたようで、樺島の暴力でフラッシュバックを起こしていました。
フェリーの着いた直江津から橘祥吾の待つ山梨までロングドライブとなった愛生とライオン。実は、樺島は暴力的に2人を連れ去ったのではなく、橘祥吾が「離婚の手続きをしたいから連れてきて」とお願いして迎えにきていたのでした。部屋が荒れていたのは愛生が抵抗したからでしたね。このへん、上手いなぁと思いました。荒れた部屋を見せておけば「強引に連れ去られた」とミスリードできるし、それが愛生の抵抗によるものだったとしても「愛生ならやりそう」というキャラ付けができている。ホント、細やかな演出が効いてます、『ライオンの隠れ家』。
料理旅館で待っていた橘祥吾はおとなしく離婚届を出し、届けに行くまで一緒にいたいと申し出たようです。「X」とヒロト、みっくんは橘の自宅を訪れますが、すれちがってしまい、一旦茨城に帰ることに。
ここから、向井理ショーの始まりです。
まずはバックグラウンドとして、橘祥吾は身寄りがなく、たちばな建設に養子として入ったことが語られます。病弱な御曹司に代わって経営者になるはずでしたが、御曹司が回復したことで居場所をなくし、一族企業の息子なのにヒラ社員です。家族と呼べるのは、愛生とライオンだけでした。
そんな橘祥吾が「離婚をする」と言って愛生を呼び戻したわけです。DVについて反省しているし、死んだふりまでして自分から逃げようとした愛生を解放してやろうというわけです。
最後の日々を家族3人で、せめて楽しく過ごそうとする橘。その脳裏には、本当に楽しかった頃が蘇ります。DVの記憶もあるし、よそよそしかったライオンも、ほんの少しの優しさを見せてくれたりします。
深い悲しみを見るわけです。本当は離婚したくないけれど、愛生とライオンのためを思って身を引くしかない。それは自分が招いたことだし、ひとりぼっちになっても仕方ない。そういう悲哀を、向井理が切々と演じ上げます。
そうして離婚届を出す当日、やはりあきらめきれなかった橘は、愛生にライオンの親権を要求します。当然、愛生がそれを受け入れることはありませんが、橘は土下座をします。最後のあがきです。ここまでやって許してもらえないなら、仕方ない。そういう潔さを感じさせる土下座です。
と、思ったら、「愁人(ライオン)の親権をよこせ、それが離婚の条件だ」などと言い出し、次のシーンでは顔面をボコにされた愛生が物置に監禁されていました。
怖。
異変を察知した「X」とヒロトが橘の不在を狙って合鍵を使い、愛生とライオンの救出を試みますが、いないはずの橘がゆら~っと現れ、真っ黒なビー玉みたいな目ん玉でヒロトを追い返すのでした。
■やっと仕事した
ようやく、向井理がお芝居をするターンが来た、という印象でした。これまで、複雑なサスペンスパートの中で不穏な空気だけを放ってきた橘でしたが、今回の「あれ? 情状酌量の余地ありかな?」と思わせておいての闇堕ちはすごかったですね。ドラマそのものの質量がドーンと上がりました。
もう何度も言ってるけど、もっとシンプルにできなかったかなと思うんですよね。別にサスペンスパートに大きな矛盾があったり失敗したりしているわけではないんですが、今回の向井理の無双ぶりを見るにつけ、もったいなかったなと思ってしまう。この感じで向井理が中盤からヒロトたちとからんでこれれば、質量だけでなく濃度の面でもむちゃくちゃ濃いものができてたような気がしちゃうんです。
それはもちろん、現状でもすごく出来がいいからこそなんですけど。今回の風車のところでヒロトが泣き崩れて、みっくんが肩を叩きながら深呼吸をさせるシーンなんて強かったね。口開けて見ちゃいましたもん。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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