【24年秋ドラマ】『わたしの宝物』第8話 不穏すぎる「主文後回し」演出、松本若菜の芝居がすごすぎた
#わたしの宝物
裁判の判決を言い渡す際、一般的には「被告人を~~の刑に処する」という主文を告知し、その後に裁判官が判決理由を読み上げることになります。
まれに、この主文と判決理由の読み上げの順序が逆になることがあります。これを「主文後回し」と呼ぶわけですが、主文が後回しされるケースの多くは「死刑」が言い渡される場合だそうです。
『わたしの宝物』(フジテレビ系)第8話では、通常、ドラマの最後に流れるクレジットロールが冒頭にフルで表示されました。なんと不穏な演出でしょう。ああ、主文が後回しにされている。これから死刑が言い渡されることになるのです。
不倫、托卵という許されない罪を背負ったミワ(松本若菜)と冬月(深澤辰哉)の2人は、首つり台から笑ってみせることができるのでしょうか。振り返りましょう。
■JOKERマコトはお役御免
いろいろあって冬月との不倫でできた子どもを夫・ヒロキ(田中圭)の娘として育てることにしたミワ。黙ってりゃ赤ちゃんも成人まで平穏に暮らせたかもしれないし、その後、機が熟したころに「栞、実はおまえは本当の子じゃないんだ」「それでも私はパパの子よ」なんて心温まるシーンが訪れていたかもしれません。
まずそれをぶち壊したのは、ミワの親友であるマコト(恒松祐里)でした。よからぬカンを働かせて赤ちゃんの栞ちゃんがヒロキの子ではないことを見抜くと、感情の赴くままに夫婦の間に立ち入り、次々に禁則事項を暴露。ミワとヒロキは離婚を決意し、後戻りできないところまで来てしまいました。
ひとしきり暴れまわって満足したのか、今回、マコトはミワに「栞ちゃんを手放しちゃダメ」「私でもそうしてたかも」などとしおらしく説教をしていました。そもそもおまえのせいだろって話ではありますが、今回の件でマコトちゃんも別に幸せにはなってないので、責めるのも忍びないところです。この人だってバツイチだし、離婚したときにはそれなりの修羅場もあっただろうし、ひとりで立派に息子ちゃんを育ててるからね。
マコトちゃんに代わってヴィランと化したのは、冬月の部下のリサ(さとうほなみ)でした。ずっと好きだった冬月にフラれ、会社も辞めることにしたリサ。あのフリマの資料からミワの名前を見つけ出すと、「こいつが冬月の“大事な人”か」とあたりを付け、ミワにコンタクトを取ってきます。
「奥様に直接お話を伺いたいんです」とミワにかけた電話口でキマりきった顔のリサはもう、かつての快活で勤勉で優秀な冬月の部下ではありません。
一方のヒロキも、どうしても不倫相手のことが知りたくなってしまいます。こちらもフリマ、図書館、母子手帳の栞といった点在するヒントをもとに不倫相手である冬月の捕獲に成功。根城である喫茶店に拉致してきました。
向かい合う、リサとミワ。ヒロキと冬月。首つり台の上でミワと冬月は、しこたま不貞について糾弾されるのでした。
リサはミワを「子どもだっているのに」と責めますが、それが冬月の子であることを知りません。そして、自分がアフリカで冬月死亡説を流したがためにこんなことになっていることも、まったく知らない。だから無遠慮に「あなたは冬月を傷つけた」などと言えてしまえます。
ヒロキは栞ちゃんが冬月の子であることに気付いていますが、冬月は自分の子であることを知りません。
すべてが明らかになったとき、さらなる修羅場が訪れることは火を見るよりも明らかです。次回予告もなかなか激しいことになってましたね。
■女優だなぁ
女優っていう呼び方はよくないんですよね。今は男性も女性もまとめて「俳優」って呼ぶ風潮になっています。でもね、「女優だなぁ」って思っちゃったんだよな、今回の松本若菜。
ミワを呼び出したリサの建前は、ミワが参加したフリマについての事後取材でした。どんなきっかけで、出店して見てどうだったか、何か問題点や気づいたことがあれば、なんでもおっしゃってください。
その取材に応えているミワは、完全にオフィシャルな顔をしているんですよね。社会人の、仕事の顔をしている。私たちにとっては初めて見るミワですし、記者会見やインタビューで見慣れた松本若菜の顔をしているんです。堂々としていて、とっても美しい。
それが、リサが冬月との不倫についての話を始めると、松本若菜の目の中から光が消えるんです。一瞬でミワに戻る。キラキラのトップ女優の顔から、薄汚い(言い過ぎ)不倫托卵妻の顔になる。このドラマは田中圭のお芝居がずっとすごいんですが、今回は松本若菜もすごかったですね。ノッてんなーと思いました。
というかね、そういう見方をしていないと、ちょっとこういう激しいのは見慣れていないので正視できないんだよな。次回以降、いろんなことをみんなが知ることになって、あとは落とし前です。どう落とし前を付けるんだろう。おもしろいな、これ。
いやー、もうマスターが栞ちゃんを育てればいいんじゃないかと思いますけど、どうですかね。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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