【24年秋ドラマ】『若草物語』第8話 人の選択を「間違ってる!」なんて言っちゃいけません
#若草物語
ひとことで「夢を追う」といっても、学生のころから絶対そうなるんだと決めている人もいれば、周囲から「向いてるよ」なんていわれて、なんとなく目指し始めちゃう人もいるわけで、後者は折れると弱いよねというお話となりましたドラマ『若草物語 ─恋する姉妹と恋せぬ私─』(日本テレビ系)の第8話。
早めに折れて別の生き方を選んだほうが結果的に平穏を手に入れることができるケースもあるし、しつこく夢を追い続けたがゆえに行き場を失って高円寺の駅前ロータリーで缶チューハイを飲むしかなくなってしまうこともあるのが、夢というやつの難しいところです。
いずれにしろ、その選択は誰かに押し付けられるものじゃないし、その評価は他人が下すものじゃない。間違っても、誰かの選択を「間違ってる」なんて言っちゃうのはよくない。振り返りましょう。
■「エリは間違ってる」
2年間も音信不通だったかつてのソウルシスターにして実の妹・エリ(長濱ねる)を郊外の漁村で発見したリョウ(堀田真由)。その変わり果てた姿に驚愕したのもつかの間、エリはいかにも漁村にありそうな木造平屋建ての自宅にリョウとリツ(一ノ瀬颯)を案内します。
その最悪の空気をとりあえずどうにかしようと、エリとリツは他愛もない雑談をしていますが、リョウのイラつきは収まりません。とにかくなんなんだ、とエリに説明を求めます。
エリは、女優として事務所に所属していたけど、ほとんど仕事がなかったこと、芸能関係者の集まる食事会に駆り出されてホステスまがいのことばかりやらされていたこと、お金がないのでラウンジでバイトしたりしていたこと、ある日プツンと糸が切れてあてもなく電車とバスを乗り継いでこの漁村にたどり着いたこと、そこで出会ったシングルファザーの男と付き合うようになり、その男との子どもができたことをきっかけに家を出て一緒になったことを説明しました。
そして、一度は「結婚しない同盟」を組んで意気投合していたリョウには到底言えなかったこと、リョウが夢に向かって一歩ずつ進んでいることがもどかしかったことなどを切々と明かすと、こんなことを言うのです。
「リョウは自分の価値観以外認めないから、そういうのもほんとはちょっとつらかった」
リョウは共有していたと感じていたその価値観、エリにとっては押し付けられていたものだったという告白です。大打撃だね、大打撃だよ。
変わってしまった最愛の妹に我を失ったリョウは、普通の主婦として田舎暮らしをしているエリの人生を「間違ってる!」と声を荒らげて否定するしかありませんでした。
帰路、バスの中で大いに落ち込むリョウ。言っちゃいけないことを言ったのは自分でもよくわかっています。しかし、物書きですから〆切はやってきます。師匠の大平かなえ(筒井真理子)は「悩みがあっても、書くことで救われることもある」と言いました。
再び仕事に向き合ったリョウは、登場人物のセリフとして、「彩乃が変わっても、僕の気持ちは変わらない。だから、安心して変わっていいよ」と書き留めます。
そしてリョウ自身も、リツとの将来についてゆるやかに考えはじめ、言葉にするようになりました。かつて妹と2人で誓った「結婚しない同盟」という呪い、それが変わっていくことを、リョウ自身が許し始めるのでした。
■嫌われる勇気
それにしても、大衆ウケしないキャラクターを作るもんだなと変に感心してしまいます。リョウという脚本家志望の女性が「大衆ウケより魂の叫びを」というスタンスで創作していることはよくわかりますが、第1回から、この人自身があんまり視聴者から愛でられようとしていないんですよね。
きれいごと書いてもしょうがないだろ、というこのドラマの脚本家の覚悟が察せられるところです。きっとリョウというキャラクターには脚本家自身の反省や後悔が存分に込められているだろうし、「書く場所があるだけ幸せだよ」というメッセージも含まれているように感じます。なんだか、テレビドラマというメディアがひとりの作り手を救っている様を見ているような感触なんですよね。こういうの、あんま伝わらないと思うけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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