【24年秋ドラマ】『わたしの宝物』第7話 「黙れクソ女!」役柄へのヘイトは俳優・恒松祐里への賛辞である
#わたしの宝物
「ミワさんはそれで平気なんですか?」
家から追い出され、3日も町を彷徨って傷心のミワさんを前に、そんなことを聞いちゃうJOKERことマコトちゃん(恒松祐里)。平気なわけないだろそもそもおまえが黙ってりゃ万事丸く収まってたのに勝手に暴走して何もかもブチ壊しやがってクソがシバくぞボケ、と、ここまで『わたしの宝物』(フジテレビ系)を見てきた誰もが思ったことでしょう。
そして思い当たるのです。このドラマは、みんなが「そもそもおまえが」という罪を背負っているということに。そもそもヒロキ(田中圭)が妻のミワさん(松本若菜)にモラハラしていなければミワさんも冬月と不倫することはなかったし、そもそも冬月があの朝、自制心を持ってミワさんを家に送り届けていれば栞ちゃんが産まれることもなかった。そもそもリサ(さとうほなみ)が「死んだのは冬月じゃなくて下原です」とアフリカの医療スタッフに伝えていればミワさんはヒロキと離婚して冬月の帰りを待つことができたし、そもそもヒロキがミワにモラハラするくらい病んじゃったのは上司の真鍋部長(安井順平)がめちゃくちゃパワハラ気質だったことが主な原因でした。
じゃ、そもそも安井順平が悪いんじゃん! と思ったけど、あんまり関係ないや。あとこの人は結局左遷されて、すでに裁きを受けていたね。その後はスポーツカメラマンに転身したようです(TBS系『あのクズを殴ってやりたいんだ』にも出演している)。
これから安井順平以外の「そもそも連」たちも裁きを受けていくことになるのでしょう。その前に、まずは懺悔していただきたい。
第7話、振り返りましょう。
■懺悔した
というわけで、今回は、みなさん懺悔のフェーズとなりました。
JOKERマコトはミワさんから今回の顛末を聞き出すと、ヒロキ宅を訪れて「余計なことしてすみませんでした」と謝罪。しかし、この人は別に反省はしていないようで、「栞ちゃんはどうするんですか?」「このまま(栞ちゃんと)2人で生きていくつもりですか?」と二の矢、三の矢を放ってきます。すごく心配そうな顔をしながら、さらに事態を混乱させる気が満々のようです。
前回、ずっと好きだった冬月にフラれてしまったリサは、気持ちの整理をつけるために会社を辞めることを決意。アフリカで、自分が冬月を独占するために「死んだ」とウソを言ったことを、ようやく冬月に謝罪しました。この会社の社名、あんまり注意して見てなかったけど「tri ambition」っていうんですね。「3つの野望」。冬月とリサと、死んだ下原と、3人の野望を実現するための会社だったんだ。やっぱり小さい組織ってのは、恋愛が絡むと脆いね。どうやら彼らのアンビションはバラバラになってしまいそうです。
ミワさんは病気で死期の迫ったママ(多岐川裕美)に「栞はヒロキの子じゃないの」と告白。「ヒロキも栞も苦しめることになった」と涙ながらに懺悔します。言葉を失い、ミワさんを抱きしめるしかないママ。「ごめんなさい」と声を絞り出すミワさんに、ママも「私こそ、悪い母親ね。ミワを𠮟れない……」と涙に暮れるのでした。
ママがもう長くないことをマコトから聞かされたヒロキは、栞を連れてママの病室を訪れます。このヒロキの行動は誠意や真心というより、ヒロキの中に長年染み付いてきた「外面をキープする」という慣習によるものでしょう。余命の迫ったご老人がいるなら、孫の顔を見せてやるべきである。慣習はときに感情を超える。前回も言ったけど、このドラマが人間が描けていると感じさせるのは、こういうシーンなんです。
ママとしては「うちのミワがバカなことして本当にごめんなさい」と全力で謝りたいところでしょうが、ここは知らないふりをするしかありません。ここの入院費もヒロキの金だし、ママの心境は察するに余りあります。おそらくは人生最大の気疲れだったことでしょう。間もなくママは召されることになりました。
■懺悔の先に、さらなる地獄が待っている
そうしてみんないろいろ整理がついて、懺悔したからには前に進むしかありません。
栞が自分の血を引いた子どもであることを知らない冬月は、ミワさんへの決別の手紙をマコトに託します。マコトはミワさんがそれを読むに値するかどうかを査定した上で、その手紙をミワに手渡します。
「いつまでも心の中で、夏野(ミワさんの旧姓)は大切な友達です」「がんばれ」「ずっと応援してる」
なんにも知らない冬月のしたためた手紙には、「素敵な思い出」「素敵」「素敵」というお気楽な文言が並んでいました。この人は自分のせいで夫婦に危機が訪れていることすら知らないんだよな。わりと前半から「大切な人を守れなかった」とか「夏野のことを守れない」とか抽象的な懺悔を繰り返してきた冬月でしたが、無知こそが罪だね。その懺悔のすべてが上滑りしていたかのように見えてくる。哀れなものです。
一度はミワさんを家から追い出したヒロキでしたが、それは自分がミワさんを裁こうとしていたのだという思いに至り、自らマンションをミワさんに差し出して家を出る決意をするのでした。「離婚しよう」。養育費とか、きっと払ってくれるんだろうな。大人なヒロキと、ただ無邪気に自己陶酔しているだけの冬月とのコントラストが浮かび上がります。そして来週以降、無邪気なピュアボーイが射精責任を問われていくことになるのでしょう。
今回までで、栞の実の父親を知っているのはミワさんとマコト、知らないのはヒロキ、冬月、リサとなりました。
マコトがそれを知る段取りは、作劇的にはけっこう強引だと思ったけど、さらに暗躍させるつもりなのでしょう。このドラマが終わったとき、マコトを演じる恒松祐里さんという俳優にはけっこうなヘイトが集まる予感がします。「もうしばらく顔も見たくない」「どうしてもあのマコトを思い出しちゃう」それって俳優という仕事をするうえで最高の勲章だもんね。とびきりの勲章をつかめ、JOKERマコト!
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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