【24年秋ドラマ】『全領域異常解決室』第8話 「神様が自殺するレベル」の世界を、私たちは生きている
#全領域異常解決室
──なぁ、おまえはどう思う? 神様はいると思うかい? ちげぇよバカ野郎、いるか、いねぇかなんて聞いてねぇよ。いるか、いらないかを聞いてんだよ。
「フィッシュオン」という曲で、そう歌ったのは竹原ピストルでしたね。
さて、気が付けば登場人物の大半が神様だったドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)も第8話。今回は、「神様だって人間なんだ」というお話でした。もう前回、前々回あたりから、あらすじを書いても内容が伝わる気がしておりませんので、さらっといきましょう。
振り返ります。
■「もう神様はいらない」と神様が言う
月夜の下でなら時間を操ることができる神様・月読命(石田ひかり)。前回はその能力を使って小夢ちゃんこと天宇受売命(広瀬アリス)の命を救ってくれましたが、今回は闇堕ちし、神様としてあってはならぬことをしてしまいます。
一般人4人の前に現れ、彼らの時間を早回しすることによって一瞬で餓死させるという連続殺人を犯していたのです。彼ら全員が月の出る夜に殺されたことは言うまでもありません。
月読命は、佃未世(つくだ・みよ)という女性として現代を生きていました。未世にはひとり娘がありましたが、その娘がネット炎上事件であらぬ疑いをかけられ、激しいバッシングにさらされてしまいます。気を病んだ娘は自室で首を吊って縊死。死んだ4人は、その娘に対して誹謗中傷を書き込んでいた人物でした。神様による、人間への復讐。当然、許されるはずもなく、月読命は、天石戸別神の手によって黄泉の国へと送られることが決定します。
天石戸別神とは、あらゆる世界の境を守り、この世と黄泉の国をつなぐ門「黄泉戸」を守っている重要な神で、いなくなっちゃうと八百万の神々すべてが黄泉の国へと引きずり込まれてしまうのだそうです。
ヒルコの狙いは、この天石戸別神でした。天石戸別神の正体を知り、それを消すことで修理固成、つまりは神々の総入れ替えをしようというのです。
天石戸別神の姿はほかの神々も見たことがありませんでしたが、その正体こそが興玉神を名乗っていた解決室の室長代理・興玉雅(藤原竜也)でした。えーっと、簡単に言うと、普通の人間だと思っていた主人公が実は神様で、その中でもいちばん重要な神様だったということが明らかになったわけです。
いろいろあって黄泉送りを逃れた月読命は、ヒルコに天石戸別神の正体が興玉さんであることを伝えます。その情報と引き換えに、ヒルコは月読命の娘を最初に誹謗中傷した男を特定。月読命は最後の復讐に打って出ることになります。
しかし、ヒルコから「月読命が殺しに来るぞ」と教えられていた男は月読命をナイフで一刺し。「正当防衛~」「ふざけて書いただけなのに~」などと言いながらひとしきり月読命を蹴り回すと、揚々と去っていくのでした。
月読命は能力によって「未世の体」を治癒することもできましたが、人間界に絶望し、自ら「事戸渡し」を施して神様としての記憶を消し、その生涯を閉じるのでした。
つまり、神様がもう人間を助けることをやめて、自殺してしまったということです。
さらっと言いつつ、やっぱ文字数を使ってしまいましたね。まだまだ説明できてないところはあるけど、興味があったら見てください。FODでもNetflixでも全話見られるので。
■おおまかにいうと「神様vsテクノロジー」の対立
ここにきて、ヒルコの目的が明らかになりました。天石戸別神の存在を消し、この世にいる神様を片っ端から黄泉に送ること。そして、「神様の総入れ替え」という言葉の意味もおぼろげに見えてきています。
ヒルコを名乗るのは、ビッグデータを扱う会社のCEO・寿正(野間口徹)。いわば、テクノロジーの権化です。
SNS、GPS、そうした簡素なアルファベットを、読めない漢字が並ぶ名前の神様たちと置き換えていく。ネット上にアップロードされた情報を収集し、解析することで世の中をコントロールしていく。ヒルコの目的は、おおよそそんなところでしょう。
「戦やってたころのほうが、まだ人の心ってもんがあったよね」
そう言って、月読命は神様としての永い生涯を閉じました。ここでいう戦とは、騎馬と竹槍と、せいぜい火縄銃くらいの時代の戦争のことでしょう。今は戦争だって、位置情報をもとに無人ドローンが飛んでいく時代です。
神様だって、もともとは人間が作ったものです。長い時間をかけて“よすが”となり、文字通り神格化されるに至りました。誰が何を考えていて、どこにいて、どうなるのか、何もわからなかった時代には、確かに必要なものだったのでしょう。
遠隔の防犯カメラやGPS、人々を思うがままに操ることができるSNS、それは確かに世界を変えたし、昔の人からしたらまるで信じられない、神の御業としか思えないものに違いありません。
そういう時代であるということを丁寧に、エンタメに昇華しながら語りつつ、このドラマはこの時代に「神様がいるか、いらないか」の話をしているわけです。
まったく、そんなお話になるなんて第1話では想像もしてなかったよね。これも黒岩勉神の御業ということでしょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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