【24年秋ドラマ】『ベビエブ』12話を総括 未来を語り始めたZ世代の殺し屋コンビ
#ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!
現代の「必殺仕事人」の誕生
アルバイト感覚で人殺し業に従事してきたちさまひコンビですが、「新しい戦前」と呼ばれるほど現実社会はますます酷い状況となり、闇バイトが横行し、目先の大金に釣られた犯罪事件が多発しています。世界情勢も混沌としたままですが、ちさまひは自分たちを意識的に変えていき、将来について考えるようになります。親ガチャ、国ガチャ、時代ガチャのせいにしていては、いつまでも自分自身の進むべき道は始まらないからです。
その第一歩が、自分らで身辺調査を行った上で、社員を自殺に追い込んだパワハラ社長(浜野謙太)をあの世送りにするという新規案件でした。まひろの監査部、ちさとの営業部での体験が役立ちました。これまでの請負仕事に比べ、時間はかかり、収入は減りますが、自分たちが納得した上で、悪いヤツをぶっ殺すことができます。現代の「必殺仕事人」の誕生です。まさかの大団円で『ベビエブ』はフィナーレを迎えることになりました。
第7話以降、ちさまひの2人にはずっと「死亡フラグ」が立った状態でした。スーザン・サランドンとジーナ・ディビスが共演したハリウッド映画『テルマ&ルイーズ』(1991年)のような衝撃的なエンディングになることを予測した人もいたでしょう。阪元監督も悩んだと思います。『テルマ&ルイーズ』やタランティーノ脚本作『トゥルー・ロマンス』(1993年)の本来のエンディングのような終わり方にすれば、ドラマ史に永遠に残る伝説にちさまひコンビはなっていたはずです。
でも、阪元監督はちさまひを伝説にすることよりも、日常生活を生きるという道を選びました。まひろが「粛清さん」こと日野に「生きていてほしい」と伝えたように、阪元監督もちさまひに「生きていてほしい」と脚本を書きながら願ったんだと思います。
髙石あかりは2025年後期NHK朝ドラ『ばけばけ』のヒロインに選ばれ、伊澤彩織は俳優として出演した音楽映画『ザ・ゲスイドウズ』が来年2月に公開されることが決まっています。2人が再びコンビを組む機会は当分先になるでしょうが、さらに成長した2人が再共演するための場所、安心して戻ってくることができるホームグラウンドとして『ベビわる』の世界を終わらせなかったのかもしれません。
回収されなかった伏線と予告された続編
全12話で描かれた『ベビエブ』ですが、1本の放映時間が26分だったこともあり、TVシリーズでは回収できなかった伏線も残っています。ちさとの実家で完全休日を過ごした第7話で、今度はちさとがまひろの実家を訪ねるという約束です。格闘スキルに優れたまひろに多大な影響を与えた深川一家の物語は、それだけで充分一本の映画になりそうです。
最終話に登場し、日野を「粛清粛清」した常岡(山口祥行)とちさまひとの決着戦は、『ベビわる』ファンなら誰もが期待しているはずです。オリジナルビデオシリーズ『日本統一』で人気の山口祥行を最終回に登場させたのは、『ベビわる』続編の可能性があることを、阪元監督が示唆したものと思っていいんじゃないでしょうか。その際は、現在も池袋シネマ・ロサなどでロングラン公開中の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』で入鹿みなみ役を好演した前田敦子がどう絡むのかも楽しみです。
2025年3月に『ベビエブ』ブルーレイ&DVDボックスがリリースされることが発表されていますが、願うならば「風林火山編」「ジョブ・ローテーション編」を再編集した上で二本立て上映してほしいところです。そして、『ベビわる』完結編もぜひ劇場公開してほしいと、ファンは願っています。
完結編のちさまひはどんなアクションを見せ、どんな関係性になっているのか。そんな未来をファンたちが語り合い、日常生活を送ることができれば最高じゃないですかね。
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