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『おむすび』第42回 嫌われて当然……? 前向きと無神経をはき違えた「ギャル観」

橋本環奈

 昨日は、神戸編の最初の山場だと思っていた「アユ、ついに初めてマキちゃんの墓参りに行く」というシーンがカットされていたことで取り乱してしまいましたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第42回。いやー、取り乱したなー。まさか、視聴者の知らないうちに行ってたなんて。あの糸島での家族会議はなんだったんだろう。

 いや、思い返せばそもそもあの家族会議だってアユ(仲里依紗)は「家族みんなで神戸に移住したい」というような話をしていて「1人じゃマキちゃんの墓参りに行けないから、家族みんなで行きたい」というのも後出しの前言撤回、歴史修正だったんだよな。信じた私がバカでした。

 では、振り返りましょう。

■無邪気と無神経は違う

 今日も元気に専門学校にやってきた結ちゃん(橋本環奈)。運動生理学の実技の授業で、みんなでラントレをやることになりました。結ちゃんは書道部だし、ちょっと農作業を手伝っただけで過労で倒れちゃうような貧弱な子なので、当然ヘトヘト。病院令嬢のカスミン(平祐奈)もヘトヘトだし、モリモリ(小手伸也)もおじさんなので、やっぱりヘトヘトです。

 そんな中、息も切らさずすまし顔のサッチン(山本舞香)。その姿を見て、モリモリは「そういえばサッチンは陸上のインターハイチャンピオンだ」といきなり思い出します。ネットで調べると、確かに4年前のインターハイ1500メートルで優勝していて、五輪候補だったようです。

 勝手に過去を詮索されて気分を害しているサッチンに対し、結ちゃんは「超すごい人やったんやね!」とすり寄ると、「でも、なんで陸上やめたん?」とドストレートな失礼質問。サッチンは言葉を失い、結ちゃんを思い切りにらみつけますが、当の結ちゃんはポカーンとしてます。ポカーン。

 これ、おそらく、たぶん間違いなく、“ギャル魂”の描写なんですよね。あけすけに、無邪気に、前向きに振る舞うこと。どんなに聞きにくいことでも、明るく楽しくポジティブに質問すること。そういうキャラクターを、このドラマは「ギャルらしさ」と設定しているんでしょう。

 サッチンが殺意を込めた視線を向けていることからしても、それが無神経な質問であることは脚本家も演出家も理解しているわけです。このドラマの主人公・結ちゃん、けっこう頻繁に「なんでこんな失礼な言い方をするんだろう」「なんでこんなに性格が悪いんだろう」と感じさせるシーンが出てくるわけですが、糸島編では「震災のトラウマがあるから」で、神戸編では「トラウマを払拭してギャルになったから」なんだよな。性格が悪くて無神経な理由は、ちゃんと設定されているわけです。そこはあんまり、いい加減には作ってない。

 じゃあ、なんでその性格の悪い子が主人公なのかが、けっこうマジでわかんなくなってきました。だって、サッチンに「なんで陸上やめたん?」なんて聞いちゃう子、誰も好きになるわけないじゃないですか。リサポンにパラパラのイラストを描いたノートもらっても、翔也(佐野勇斗)にイチゴジャムもらっても、お礼も言わないでツンツンしてる女の子なんて、みんな大嫌いになるじゃないですか。なんで嫌われるような性格の子を、嫌われるとわかっていて主人公にしているのか。謎です。この子を好きになる瞬間が、ここまで一度もない。

 好きになる瞬間という話だと、翔也と結ちゃんの関係性も見ていてすごく変というか、この人たち、愛し合ってる感じがまるでしないんですよね。そもそもお互いがお互いを好きになった瞬間がよくわからないし、その関係が熟成されていったはずの「メールを毎日送り合った2年間」はカットされてるし、2年ぶりに会ったときも翔也は2年前の神社と同じこと言ってたし、物語の都合上「交際している」ということに疑いようはないのだけれど、描写がないんです。

 今日の、結ちゃんが1週間分の献立を作ってきて翔也に手渡すシーン。受け取った翔也はその充実した内容に大いに感心するし「助かる」と口にするけど、好きな人がここまでやってくれたら、まず「ありがとう」「やっぱり大好き」って気持ちが先にくるものじゃないのかね。目の前にその好きな人がいるんだぜ、思わず抱きしめたくなるもんじゃないのかね。

 まさかNHKの朝ドラで「若い男なんだから性欲見せろ」とまでは言わないけど、好きなら好きの気持ちを描写するくらいやってもいいんじゃないかと思いますよ。なぜなら、ドラマって「好きなら好きの気持ちを描写する」という、描写の媒体だからです。

■アユの件も説明になってない

 アユの「初めての墓参り」についても、一応セリフでは説明されました。以前、神戸に仕事で来たときに、ドラマ的には突然降って湧いた中学の同級生・チャンミカ(松井玲奈)と再会し、夜通しマキちゃんの話をした。そのあと、2人で墓参りに行った。以降、何度か行ってる。

 事実関係は説明されたけど、あれほどナーバスだったはずの「マキちゃんの墓参り」についての心情の説明にはなっていませんでした。

 それに、その話だと先週の金曜の回に神戸に降り立ったアユが道の真ん中で「帰ってきたよ~!」って叫んでいたシーンと整合性が取れないんだよな。何度も神戸に来てたなら「帰ってきたよ~!」なんて感慨があるわけないし、まさか神戸に来るたびに「帰ってきたよ~!」をやってるとしたら、それはもう尿検査が必要になってくる案件ですよ。

 一事が万事この感じだと、一旦ドラマの中で語られた情報すべてを疑ってかからないといけなくなっちゃうんだよなぁ。どうすりゃいいのか。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/11/26 16:00
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