早く決めなきゃ次のジェームズ・ボンド 多様性か伝統か シリーズの生き残りかける26作目
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次のジェームズ・ボンドが決まらない。スパイ映画「007シリーズ」は最も新しい『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)で25作品目となったが、6代目ボンドのダニエル・クレイグはこの作品でボンド役を去った。7代目ボンドが誰になるのか、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を撮影している最中から注目されてきたが、一向に決まる気配がない。公開から3年以上の歳月が過ぎ、世界中のボンドファンをヤキモキさせている。
「007シリーズ」は1962年にスタートした。ボンド役は初代がショーン・コネリー、2代目がジョージ・レーゼンビー、3代目がロジャー・ムーア、4代目がティモシー・ダルトン、5代目がピアース・ブロスナン、6代目がダニエル・クレイグだ。
ハードなスパイ映画でありながら、「女性好き」のボンドが女性で数々の失敗を犯すというところもシリーズの魅力でもある。しかし、「遊び心」が強すぎたとして、ダニエル・クレイグのボンドでは「遊び心」をなくしてハード路線を追求した。
ダニエル・クレイグ自身、ニヒルな演技が特色の俳優で、にやけたボンドの顔は見られなかった。そんな「堅物ボンド」が5作続いたところでの主役交代は、シリーズの方向性を大きく変える「ターニングポイント」である。
「堅物ボンド」のままで行くのか、柔らかめでエンターテインメント性の高い内容に戻すのか、映画の基本路線から決めなければならない。
それだけではない。「007シリーズ」が生き残るために、根本的な見直しが必要な時でもある。中高年層が主な視聴者となっている「007シリーズ」が、この後も歴史を刻むためには、若年層や女性にも積極的に鑑賞してもらわねばならない。
ハード路線かソフト路線かという議論を飛び越えた「新しいボンドのあり方」を確立しなければならない。
そこで、これまでの「白人男性」にとらわれずボンドを女性や黒人、思い切り若返らせてZ世代にするなど、多様性の時代にマッチしたボンドの登場の可能性が指摘されている。
そんな中、英国の大衆紙「サン」が2024年3月に俳優アーロン・テイラー=ジョンソンがボンド役になることの提案を正式に受けて「今週中にサインする」と特ダネで報じた。
アーロン・テイラー=ジョンソンは34歳。英国の白人俳優で、子役から舞台で活躍している。ハリウッド映画にも出演しており、2014年公開のハリウッド版『GODZILLA』では主役を務めた。
サンの報道で「いよいよ決まったか」という雰囲気が漂ったが、制作側に何の動きもなく、アーロン・テイラー=ジョンソンについての情報はこれ以上伝えられず、真偽のほどが定かでないままに現在に至っている。
そのニュースの10日ほど前には、5代目ボンド役のピアース・ブロスナンがロサンゼルスでのアカデミー賞関連のイベントでBBCの記者に次のボンド役について尋ねられ、キリアン・マーフィーの名前をあげた。
ピアース・ブロスナンが次期ボンドの選考にかかわっていることはないようだが、「ボンドOB」の発言は重く、キリアン・マーフィーにも熱い視線が注がれた。
キリアン・マーフィーは48歳。ピアース・ブロスナンと同じアイルランド出身の白人だ。原子爆弾を開発した物理学者オッペンハイマーの生涯を描いた『オッペンハイマー』(2023年)で主役を務めアカデミー賞の主演男優賞を受賞した。映画界ではある意味「時の人」である。
しかし、新しいボンド役は20~45歳の俳優がターゲットとされており、キリアン・マーフィーは年齢が気になるところだ。
この2人の他に有力候補としてあげられているのは、まず『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に出演し、劇中で新しい007に任命された女優ラシャーナ・リンチ。英国出身の黒人で36歳。テレビドラマ、映画で幅広く活躍するがアクションに強い。10月に第1子を妊娠していることを公表した。
両親ともインド系の英国人俳優デブ・パテルは34歳。テレビシリーズで俳優デビューした後、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)で映画初出演でありながら主役を務め、世界に知られる役者となった。
ロンドン出身の俳優レゲ=ジャン・ペイジは36歳。Netflixのドラマシリーズ『ブリジャートン家』(2019年)で主役を演じて大ブレイクし、人気をさらった。
候補者が多いのはいいことだが、早く決めないと、26作目はシリーズ史上、前作公開から最も時間がかかった作品になってしまうかもしれない。
1作目の『ドクター・ノオ』から4作目の『サンダーボール作戦』(1965年)までは毎年、公開されていた。
5作目の『007は二度死ぬ』(1967年)は公開まで初めて2年の期間を要し、8作目の『死ぬのは奴らだ』(1973年)まで、2年に1本のペースが続いた。
9作目の『黄金銃を持つ男』(1974年)は翌年に公開されたが、10作目の『私を愛したスパイ』(1977年)が公開されたのは前作から3年がたっていた。
その後は16作目の『消されたライセンス』(1989年)まで再び2年に1本のペースでの公開となったが、17作目の『ゴールデンアイ』(1995年)の公開までは6年の期間が空いている。17作品目をめぐってボンドの権利ホルダーと配給側との間で意見が対立し、法廷闘争となったためだ。
その後は24作目の『スペクター』(2015年)まで2~4年の間隔での公開だったが、25作目『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)は新型コロナの感染拡大で公開日が3回延期され、当初予定より1年6カ月遅れの公開となった。このため前作との間隔は6年となった。
これまで最多の6年というのは、特殊なケースの時だけだが、そろそろ新しいボンドを決めないと、「ボンド不在期間」の新記録を打ち立ててしまうことになりそうだ。ファン離れを防ぐためにも、急がなければならず、考えているうちにまた時代が変わってしまえば、新しいボンドの顔に泥を塗ることになる。
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