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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『おむすび』誰なんだこの人たちは

『おむすび』第40回 糸島での本気の涙に共感したはずなのに……誰なんだこの人たちは

橋本環奈

 NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も丸2カ月が終わりました。

 第8週の「さよなら糸島 ただいま神戸」では、ギャルとして栄養士の専門学校に乗り込んだ結ちゃん(橋本環奈)が一度はギャルを否定されて意気消沈しつつ、ハギャレンたちに励まされたことで本来の自分を取り戻し、持ち前のギャルマインドを発揮。長期間にわたる農家の手伝いで得た野菜知識も生かして、ピンチを乗り切る様子が描かれました。

 と、プロットだけなら普通に成立している展開でしたが、今日の第30回も細部がアレでしたね。アレだわ。振り返りましょう。

■いったい誰なんだという

 専門学校の調理実習で、同じ班になったサッチン(山本舞香)が先生に班替えを要求したことから、急遽、献立作成をすることになった結ちゃんたち。一匹狼のサッチンが「全部私が作る」と言って完璧っぽい献立を作ってくれば、病院の令嬢であるカスミン(平祐奈)も実家の病院で出しているメニューを丸パクリして提出。班として、どちらの献立を選ぶかをなぜか結ちゃんがジャッジメントすることになりました。

 2つの献立を家に持ち帰ってママ(麻生久美子)に相談する結ちゃん。どっちを選んでも角が立つので、サッチンの和食とカスミンの洋食を雑にミックスするというアイディアを提案。雑なのでサッチンもカスミンも受け入れるわけありませんが、ここは年長者のモリモリ(小手伸也)が「カスミンの洋食の出汁を和風にする」という和洋折衷な折衷案で丸く治めました。ちなみにこのママとの相談中にカラオケ中のルーリー(みりちゃむ)から電話がかかってきて、結ちゃんがみんなの声を聞いて「あの頃」を思い出すという描写があるのですが、その「あの頃」は実際のドラマでは「空白の2年間」としてカットしているので、視聴者的に何か感慨があるわけではありません。

 そうして実際に折衷献立を作ることになった結ちゃんたち。スーパーに買い出しに出かけます。材料の購入費は生徒が立て替えるのだそうですが、そんなことあるのかね。まあ、今日はYahoo!ニュースに「『おむすび』結が直面する栄養専門学校の厳しさ、出てきた授業は全部本当…スタッフはどんな取材をしたのか」という記事が出ていて、制作統括の人が「扱う題材すべてに関して綿密な取材を重ねてきた」とか語っていたので、そういうこともあるのでしょう。知らんけど。

 スーパーに着くと、サッチンが使いたかった小松菜が売り切れています。売り切れだったら仕方ないのですが、サッチンがなぜかモンスタークレーマー化。「どうしてないの!?」などと店員さんにカスタマーハラスメントをしています。どうしても何も売り切れなんですが、「売り切れ」という現象を知らないのでしょうか。

 その様子を見ていた結ちゃんは別の野菜の棚を物色し、小松菜の代用になるスイスチャードという野菜を発見。珍しい野菜ですが、結ちゃんは農家で働いていたので「このスーパー売っとう野菜なら、全部わかる」のだそうです。また結ちゃんの新たな一面が発覚しましたね。神戸に来てからというもの、性格もずいぶん変わったし栄養士を目指す動機も変わったし、まるで別人のようです。いったい誰なんだ、この人。

 急いで実習室に戻ると、もう別の班は料理を完成させて先生に試食してもらったりしています。どう考えても結ちゃん班と同じスーパーで材料を調達したとしか思えないのですが、数十分の時間差が発生しているようです。事実関係から推察するに、サッチンのカスハラが数十分にわたっていたか、「このスーパー売っとう野菜なら、全部わかる」はずの結ちゃんがスイスチャードを見つけ出すまでに数十分かかっていたかのどちらかです。いずれにしろ買い物がヘタすぎる。

 そんなこんなで調理実習は無事に成功。班替えが行われることもなく、結ちゃんはカスミンとモリモリを誘ってプリクラへ。「アゲ~!」とか言ってます。ホント、誰なんだこの人。

 ラストには姉のアユ(仲里依紗)がついに神戸に帰郷。「帰ってきたよ~!」と絶叫して、次週へ。私たちの知っているアユにとって神戸は「マキちゃんの墓参りに行きたくても行けない」というくらいナーバスな土地だったはずですが、誰なんだこいつ。

■要するに逆算ができてない

 ドラマ作りというのは語りたい物語、見せたいシーン、作りたい展開というのがあって、それに沿って矛盾を潰して辻褄を合わせていくという作業なわけですが、『おむすび』というドラマはこの「矛盾を潰して辻褄を合わせる」という部分がすごく雑なんです。

 今日でいえば調理実習の買い物に結ちゃん班だけが時間がかかっていた場面がそうで、作る側としては「時間がない中で、仲違いしていたメンバーが黙々と力を合わせる」というシーンをやりたいわけです。通常、そのシーンに至るまでに違和感を生まないようにお話を整えるという作業が発生するわけですが、このドラマでは誰が見ても「変だろ」と思っちゃうような矛盾や不都合が平気で放置されてるんですよね。

 人物についてもそうで、今からやりたい展開のために、過去に描かれた登場人物たちの言動や心象との間に生まれた矛盾が、矛盾のまま放置されてる。かと思えば、「結ちゃんが野菜に詳しい」なんて誰も知らない設定がいきなり放り込まれたりする。要するに、逆算ができてない。

 こうした人物たちの過去の言動との矛盾になぜ腹が立つかといえば、彼女たちが泣いていたからなんです。アユも、結ちゃんも、泣いてたんだ。声を荒らげて、涙ながらに自分の痛みを吐露してたんだ。いろいろ思うところがありながらも、せめて彼女たちが泣きながら絞り出した声くらいは肯定的に拾い上げよう、あの声こそが彼女たちの本質なんだと理解しようと思って見続けてみたら、全然知らない別の誰かになって再び画面に現れる。

 マキちゃんの墓参りのことですよ。来週やればいいだろと思ってるのかもしれないけど、今回のアユは登場した瞬間にアユ自身の過去を裏切っています。こういう裏切りはキャラクター自身を殺すことになるんだけどな。わかってんのかな。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/11/22 14:00
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