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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『インフォーマ 』刑務所撮影の裏にあった危機
沖田臥竜のINFORMA奇譚 EPISODE8

『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』第3話は恐怖の刑務所で三島が奮闘!? その裏にあった撮影危機

  
今年を締めくくるにふさわしい大作ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMAにて毎週木曜日23時から放送中)。ここまでタイ・バンコクを舞台に、国内撮影では考えられないド派手な演出がこれでもかと繰り出されているが、まだまだこんなものではない。第3話では、佐野玲於演じる三島を軸に、現地の刑務所の中で屈強な男たちが入り乱れる中、さまざまなサプライズが連発する。これらのシーンが生まれた裏でも「ヒリヒリする物語」が隠されていたのだ。本作の原作・監修を務めた作家の沖田臥竜氏が撮影秘話を明かす。

タイという地の利を活かした撮影

 『インフォーマ』の続編をバンコクを舞台にしてやることが決まった時、セットアップの段階から欠かせないと考えていたのが現地の刑務所での撮影であった。

 アンダーグラウンドの世界を舞台にしたクライムフィクションを成立させたければ、怠ってはならないのが話題性の追求。つまりはインパクトかつリアリティだ。刑務所という社会の外側は、非日常的でありながら確かに存在する。だからそこに関心や共感が生まれてくるのであって、現実離れし過ぎたものに誰も感情移入はできない。

 しかし、それも物語の中にさまざまな人間模様があってこそだ。だからこそ私はどのような題材であっても、登場人物一人ひとりの人間味というものにこだわり続けている。

 それは復讐心や野心なのかもしれないし、恨みなのかもしれない。平たくいえば、愛や恋といった生み出す人間の側面もあるだろう。映像に映り込むことがなくても、登場人物の数だけドラマがなければならないと思っている。

 だからこそ私は常に耳を澄まし、感覚を研ぎ澄ませ、脳をフル回転させて、そのことばかりを考えている。それなのに不思議なことにあまり儲からないのだ。発狂しそうになるぞ……ウソである。

 ただ、リアリティの追求が絶対的に正しいと言いたいのではない。ファンタジーであっても素晴らしい作品はいくらでもある。だが、『インフォーマ』という作品が持つ力強さとは、実際に起きている社会問題にフォーカスし、そこにリンクできることにあると考えている。

 それなのにプロデューサーのジョニーといえば、いつも満面な笑顔で人を不安にさせてくれるのだ。もちろん、今回の撮影でもそうであった。

 今夜放送の第3話の見所といえば、なんといってもタイの刑務所でのシーンだろう。三島はただそこに存在するだけで、名探偵コナン並みにハプニングに見舞われる。そんな星のもとに生まれた男の本領が、第3話でも遺憾なく発揮されているのだ。その舞台が、屈強な男たちがくすぶる刑務所なのである。すまないが、面白いに決まっているではないか。

今回の一コマ「バンコクでの撮影中に振る舞われたタイメシ」

 あれは、バンコクでの長期ロケの只中、来週から刑務所の撮影という日だった。その日の撮影が終わり、ジョニーとムエイタイの試合でも観に行こうかと考えていると、深刻な表情を顔面に貼り付けたジョニーが近寄ってきた。

「どないしてん~? 嘘くさい顔を作りやがって~。お前の仕事はお芝居ちゃうぞ~。ムエイタイでも観に行こうぜ~」

 そう言っても、ジョニーはくすりとも笑わずに「ちょっと来てもらっていいですか」と、人がいない場所へと誘ってきた。

 6月の夕暮れ時というのに、気温は40度近くあった。日本ではまず考えられない。容赦ない太陽の陽射しを浴びながら、ベンチに並んで腰掛け、ジョニーに尋ねた。

「どないしてん?」

 ジョニーは答えた。

 「実は来週からの刑務所での撮影が厳しい状況になってきたんです……」

 冒頭でも述べたように、刑務所でのシーンは必要不可欠であった。それが今になって、厳しくなってきたというのだ。

 おしゃべりなジョニーのことである。現状、そのことを誰が知っているのか尋ねた。何事にもアクシデントはつきものである。珍しいことではない。問題なのは動揺や不安の伝播することである。

 「はい!まだ沖田さんにしか話してません!」

 ジョニーのその返答を聞き、最低でも20人には知れわたっているであろうことを私は瞬時に察知した。

「よし、わかった。オレは3日あれば脚本も大工事できる。心配はいらん。とにかくみんなを動揺させるな」

 そう言った私が内心では一番動揺していたと思う。だが、私は筆一本でここまでやってきたのだ。そのことについてだけは、自分自身に絶対の信頼を寄せていた。

 結果的には、そこから日本スタッフが粘り強く交渉に交渉を重ね、タイの制作チームも尽力してくれ、予定通り、無事に刑務所での撮影することができた。そして結果だけをみれば、ジョニーは私にいつものように不安を与えてくれただけであった。

 タイムズ編集部には長澤編集長、箱崎デスク、有村記者。警視庁には丸山刑事に高野龍之介。そしてバンコクでは木原慶次郎と広瀬。刑務所には三島とあの男……それにトビオ……彼らがどんな言葉を発し、どんな行動に出るのか。すまん。今回も見どころしかない。

 バンコクの暑さにも負けない熱量が、常に現場にあふれていた。今ではそれを眩しく思い出すことができる。

『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は回を重ねるごとにドライブがかかっていく物語だ。準備はいいだろうか。第3話の幕がいよいよ上がる。

(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)

ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時~ABEMAにて放送
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。

『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』番組ページはこちら

原作小説『インフォーマ2  ヒット・アンド・アウェイ』 
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2024/11/21 15:00
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