トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『ベビわる』Z世代の神話になったコンビ

【24年秋ドラマ】『ベビエブ』最終回、Z世代の神話となった“ちさまひ”コンビ…待っているのは生か死か

【224年秋ドラマ】『ベビエブ』最終回、Z世代の神話となったちさまひコンビ…待っているのは生か死かの画像1
『ベイビーわるきゅーれ 』Blu-ray

 女の子の殺し屋コンビのゆる~い日常生活を描いた『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(毎週水曜 深夜1時~、テレビ東京系)も、いよいよ最終回。劇場版『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)から始まった“ちさまひ”コンビの物語は、今夜ついに神話となります。

 先週放送の第11話、殺し屋協会の営業部で働く杉本ちさと(髙石あかり)は、親切な町中華の主人・川原(森下能幸)が殺されたことを知ります。美味しかった絶品チャーハンがもう2度と食べられないと思うと、せつないものが込み上げてきます。

 落ち込むちさとは、さらなる衝撃を受けます。川原は実は人から恨まれるようなことはしておらず、協会の営業スタッフがガセ情報を流し、殺人依頼を成立させたのでした。しかも、劇場版第2弾『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)で死闘を繰り広げた神村兄弟(丞威、濱田龍臣)も、ガセが原因でちさとらに勝負を挑んできたことが分かります。

 営業部がガセネタを流さなければ、町中華のおじさんは美味しいチャーハンを作り続け、神村兄弟は食堂でいちばん高い定食を注文するという未来もありえたのです。営業部の成績さえ上げればいいという営業部の山下部長(後藤剛範)のやり方に「おかしいでしょ」とちさとは抗議しますが、山下部長は営業スタイルを変えようとはしません。ちさとに対し「人殺しにいいも悪いもねぇから」「てめえが今まで飯くって、チャラチャラして生きてこられたのは誰のおかげなんだ」と論破されてしまいます。それまでの柔和だった山下部長とは異なる、恐ろしい顔でした。

 自分たちがやってきた殺し屋業のダークさに、今さらながら気づくちさとでした。

永遠の愛を誓うまひろの言葉

 精神的にボロボロになったちさとが自宅に戻ると、迎え入れてくれたのは学生時代から一緒に暮らす深川まひろ(伊澤彩織)です。まひろは餃子を作りながら、ちさとの帰宅を待っていてくれました。今まではちさとが用意した食事を食べる一方だったまひろが、連日にわたって疲れた顔をしているちさとのために、不器用ながら懸命に夕食の準備をしていたのです。まひろの優しさに触れ、ちさとは我慢しきれずに泣き出してしまいます。

 このシーンを、『ベビわる』ファンは生涯忘れることができないでしょう。泣いているちさとの顔をティッシュで拭ったまひろは、こう宣誓します。

「ちさとを泣かす奴は、私がぶっ殺してやるから。私、殺せるよ。協会の人間だろうと誰だろうと、殺せるよ。やっと分かったんだ。なんで私がこの仕事しているのか。ずっと考えてた。社会になじめないから、人とコミュニケーションすることができないから。それもあるけど、違う。私のこの体は、この足は、この拳は、杉本ちさとを不幸にする人間を、ちさとを泣かす人間を倒すためにあるんだよ。だから、杉本ちさとを不幸にするすべてを私はぶっ倒す。それが私の生きる意味だって、今やっと分かった」

 これはもう、永遠の愛を誓う言葉といっていいでしょう。2人は軽くハグしただけで、それ以上のセクシャルな描写はありませんが、杉本ちさとは深川まひろと究極の愛で結ばれたことになります。ここに至高のシスターフッドドラマが完成しました。

鬼神と化したちさとの殺戮シーン

 生と死を共に分かち合うことを約束したちさまひは、営業部のボスである山下部長と対決します。女ふたりでのカチコミです。浮世の垢を洗い流すコインランドリーが、死闘の場となります。

 久しぶりの休日を過ごしていた山下を銃撃するちさまひですが、山下も隙がなく防弾チョッキを着込んでいました。ちさまひは格闘戦に切り替えますが、体格とパワーで圧倒する山下に苦戦。ちさとは顔面を殴打され、片目を負傷します。それでも、ちさまひ得意の連携プレイを駆使し、洗い立ての洗濯物やシーツを凶器にして、山下を仕留めます。園村健介アクション監督の見事な演出でした。

 続いて、ちさとはボスのいない営業部を襲撃します。このシーン、筒井康隆の短編小説『死にかた』を思わせるものがありました。まさに鬼神と化したちさとは、パワハラ天国だった営業部のスタッフ全員をいっきに血祭りにします。

 その惨劇の様子をベランダでタバコを吸っていた女性営業員・栗原(小島藤子)の目線から、窓ガラス越しにカメラは映し出しています。ちさとが窓ガラスを開ける瞬間のゾワゾワ感は、堪らないものがありました。

モラトリアムを卒業した前田敦子が再登場

 ちさとは殺し屋協会の営業部を全滅させたわけですから、もう殺し屋協会にいることはできません。また、まひろも協会から「粛清」命令が下されていた監査部の上司・日野(柄本時生)を殺さずに見逃していたため、やはり協会にとどまることができません。ちさまひコンビは、協会全体を敵に回したことになります。

 今夜放送の最終回は、どんな展開になるのでしょうか? リドリー・スコット監督による女性版アメリカン・ニューシネマと呼ばれる『テルマ&ルイーズ』(1991年)のような逃亡劇になるのでしょうか。

 最終回には、劇場版第3弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(公開中)に地方在住の殺し屋・入鹿みなみ役を好演した前田敦子が第6話に続いて再登場します。前田敦子はAKB48を卒業した直後、山下敦弘監督の『もらとりあむタマ子』(2013年)に主演し、女優としての評価を高めました。モラトリアム期からの卒業で葛藤するちさまひにとっては、格好のモデルケースとなる先輩です。

 第9話以降は姿を見せていなかった「死体処理係」の宮内茉奈(中井友望)の動向も、気になるところです。女の敵は女なのか、それとも味方なのか。女たちの決断が、物語の行方を大きく左右することになりそうです。

もはや「神」となった髙石あかり。気になる結末は?

 2025年後期のNHK朝ドラ『ばけばけ』のヒロインに選ばれたことで注目度が急上昇している髙石あかり演じる杉本ちさとですが、第11話で片目を負傷しています。これは『ベビわる』生みの親である阪元裕吾監督の意図的な演出でしょう。

 タイトルに謳われている「ワルキューレ」とは、北欧神話に登場する「戦いの神」オーディンに仕える乙女のことです。戦場で戦う兵士たちの生死を選別する役割を負っています。いわば半分は人間、半分は神である「半神」のような存在です。

 半神である彼女たちの主人・オーディンは北欧神話の最高神ですが、知恵を手に入れた代償として片目を失ったことが知られています。つまり、片目を負傷したちさとは、まひろという究極のパートナーを手に入れ、ちさと自身が「神」になったことを示唆しています。

 神となったちさと、その相棒であるまひろ。もはや彼女たちが一般社会に戻ることは許されません。今夜放送の『ベビエブ』最終回は、生きづらさ、働きづらさを抱えるZ世代にとっての「神話」誕生と断言していいでしょう。ちさまひコンビを待っているのは、生か死か……、それとも新しい選択肢か。最後のワンシーン、ワンカットまで、目が離せません。ぜひ「神話」の完成を見届けてください。

最終更新:2024/11/20 12:00
ページ上部へ戻る

配給映画