トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『わたしの宝物』親友がJOKERに

【24年秋ドラマ】『わたしの宝物』第5話 因縁なき復讐という恐怖 「親友」が「JOKER」に変わるとき

田中圭(GettyImages)

 もとはといえばあの図書館で、ミワさん(松本若菜)と冬月(深澤辰哉)という初恋同士が再会しなければ、何も起こってないわけですよね。

 あの再会がなければミワさんは冬月に誘われてフリマに参加することもなかったし、そこであんなに楽しそうにしていることもなかったし、モラハラ&ストーカー気質全開だった旦那のヒロキ(田中圭)に、家では決して見せない笑顔を見られることもなかったし、ムカついたヒロキに雑に抱かれることもなかったし、それに傷ついて冬月に抱かれることもなかった。

 その世界線を辿ってみると、ヒロキは相変わらずモラハラを続けていただろうし、精神的にもぶっ壊れていただろうし、ミワさんは離婚もできないで闇落ちしたままだろうし、そういう最低な暮らしの中で、アフリカでの初恋の人の訃報をニュースで見たのかもしれない。

 それはそれでかなり悲惨な感じですが、ずっと我慢できる程度の不幸なままがいいのか、一度は幸せ家族生活を経験したあとに地獄に突き落とされるのがいいのか、そういうことを考えてしまいますね。しかもこっちの世界線には、なんにも知らないでただ生まれてきただけの赤ちゃんがいますからね。複雑なもんです。

『わたしの宝物』(フジテレビ系)も第5話。いよいよミワさんの“托卵”がヒロキにバレました。振り返りましょう。

■つじつまが合っちゃうという恐怖

 今回は、ミワさんの親友であるマコト(恒松祐里)がミワさんとヒロキの神崎家を地獄に叩き落すため、八面六臂の働きを見せました。

 ミワさんと冬月が抱き合っているところを目撃したマコト。それは2人にとって、冬月の言葉通り「感謝のハグ」だったし、「さよならのハグ」でした。しかしマコトはそれを性的なハグもしくは行為に及ぶ前の前戯と断定。2人が不倫しているとヤマを張って、事実関係の確認作業に入ります。

 まずはミワさんを自らが営む雑貨店に雇い入れ、そこに以前から取引を持ち掛けられていた冬月を呼び出します。

 そしてマコトは、思いがけず顔を合わせたミワさんと冬月の表情を観察すると、次なる実験に移るのです。ミワさんが旦那との娘として育てている赤ちゃん・栞を、遺伝子上の父親である冬月に抱っこさせようとしてみます。

「やめて!」

 もう辛抱たまらんミワさん、マコトの手から赤ちゃんを奪い返すしかありません。

「もしも冬月くんが栞を抱いたら、私は壊れてしまう」

 帰路、ベビーカーを押しながらそうひとりごちるミワさんでしたが、栞ちゃんはそんなミワさんの心中を知る由もありません。ベビーカーのベルトをちっちゃいあんよでモゾモゾしたりして、ゴキゲンです。

 かつてのモラハラっぷりがウソのようなイクメンになったヒロキ。会社では昇進も決まり、ワークライフバランスもカンペキです。そんなイクメンかつイケメンのヒロキを、マコトは喫茶店に呼び出すのでした。

 思い詰めた表情でヒロキを見つめるマコトから繰り出されたのは「ずっとヒロキさんのこと好きでした」「ミワさんはヒロキさんを裏切ってますよ、不倫してます」からの「それだけだって許せないけど、栞ちゃん……(も不倫相手との子どもだぜアレ)」という必殺の3連コンボ。ヒロキにとっては超ラブなミワさんがそんなことをしているなんて、にわかには信じられないし、喫茶店のマスターも「愛してるなら白黒つけようとするな」とオトナな進言をしてくれますが、ヒロキの頭の中でつじつまが合ってしまうんですね。

 妊娠を告げられたとき、ミワさんが全然うれしそうじゃなかった。ミワさんが夜な夜なベッドから這い出してリビングでiPadを見ながら頭を抱えていた。母子手帳の「父」の名前が、なぜかしばらく空欄だった。

 それでもなんとかマスターの言葉を守って今まで通り暮らしてきたけど、栞ちゃんの爪を切ってあげているときに「遺伝子検査だ」と思い当たってしまうんですね。この爪には、栞ちゃんが自分の子なのか否か、その情報が確かに入力されている。

 結果はもちろん「否」でした。栞ちゃんのハーフバースデーまでは自我を保っていたヒロキでしたが、家族3人での写真を撮ろうとしたところでついに決壊、泣き出してしまいます。

 翌朝、ミワさんが目を覚ます前に、ヒロキは栞ちゃんをチャイルドシートに乗せて、海に向かって車を走らせるのでした。

■それは、因縁のない復讐

 神崎家の何もかもをブチ壊したマコト。彼女はシングルマザーで、夫の浮気が原因で離婚した過去がありました。それでもがんばって働きながら子育てをして、自分の手で雑貨店を開くところまで来た。

 そんなマコトが子なし裕福専業主婦のミワさんと親友でいられたのは、「自分は母親をやっている」という優越感があったからに違いありません。しかし、ミワさんが子を産み、何もかもを手に入れてしまった。母親になったミワさんにマコトが「親友だから」「親友だよ」とわざわざ言葉にして何度も言っていたのは、親友ではなくなり始めていることを自覚していたからでしょう。

 そして何もかも手にしたミワさんがさらにイケメンと不倫していることを知り、復讐を決意したわけです。なんの因縁もない者たちを襲う、ただ個人的な復讐ほど恐ろしいものはありません。神崎家にとって、マコトはJOKERそのものです。でも、JOKERだってJOKERになりたくてなったわけじゃない。

 このドラマを見ていると、何度も、何度も「ヤバいことになったな、でも自業自得だもんな」と思わされます。しかも、「自業自得といっても、あの状況だったらしょうがないよな」も付いてくる。

 登場人物の感情と行動に矛盾がないんですよね。これだけグチャグチャの状況になっても、誰の行動にも「まあ、しょうがないか。自分でもそうするかも」という理解が生じている。だから、ミワさんと冬月のハグをマコトが目撃していたり、冬月が仕事先でヒロキと出会ったり、そういうご都合主義の偶然があんまり気にならない。簡単にやっているように見えて、すごく難解な作劇が行われているし、それが成功していると感じます。

 次回予告では絶望したヒロキが「来世では本当の親子に」とか言いながら、栞ちゃんを抱いて海に入っていってました。

「ヤバいことになったな、でも自業自得だもんな」

 いや、自業自得ではあるけど、ヤダ超かわいそうヒロキ。ヒロキィィー!

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

どらまっこあきちゃん

記事一覧

Twitter:@dorama_child

https://note.com/dorama_child

最終更新:2024/11/15 14:00
ページ上部へ戻る

配給映画