【24年秋ドラマ】『全領域異常解決室』第6話 「実はみんな神様でした」というトンデモに宿った説得力
#全領域異常解決室
次々に起こるオカルトチックな事件をカッコよくて頭のいい藤原竜也がスイスイ解決していく普通におもしろいミステリーだと思っていたドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)。前回の第5話でホンモノの神様が登場したかと思いきや、藤原竜也が「僕も、神です」とか言い出して、さぁ大変。人間にまぎれて生活している「よい神様たち」と、「悪い神様」であるヒルコとの全面戦争中だということが明らかになりました。
これにより、普通におもしろいミステリーから、ヘンテコすぎて超おもしろいファンタジーサスペンスへと領域展開したところで、第6話。今回は、これまで起こった事件の種明かしから始まります。振り返りましょう。
■違和感を解消していく
どの事件でも現場に顔を出し、怪しげな挙動をしていた巫女ギャル(福本莉子)。警察は彼女こそがヒルコの正体であるとにらんでいましたが、実は興玉さん(藤原)こと「興玉神」たちの仲間の神様「豊玉毘売命(とよたまびめのみこと)」であることが明らかに。事件現場に顔を出していたのは、ヒルコをおびき寄せるための罠を張るためだったのだそうです。
第1話、「ヒルコが見える」と吹聴していたメン地下崩れのYouTuberは実際にヒルコらしき影を見ていましたが、その時点では「幻覚だろ」的な感じで放置されていました。これ実は、巫女ギャルが空間を歪めてヒルコの影を見せていたのだそうです。
第2話では女子高で起こった集団失神が実は地中から噴き出したメタンガスによるものだったという解決で処理されていました。これも単に「メタンガスが~」とだけ説明されていたので、そんな濃度であんなに人が倒れることがあるのかなという小さな疑問を残していましたが、巫女ギャルが空気中のメタンガスを濃縮して失神させていたという。
第3話ではタイムホールの謎がファフロツキーズ現象によるものであるとして解決されましたが、ここではファフロツキーズだったらそんなに都合よく関係者のところに降ってくるかねというツッコミどころが残されていました。これも巫女ギャルが、意図的にそこに落としたということが明らかになった。
これらの情報をここで開示することで、最初のほうの「普通におもしろかったミステリー」にあったアンチオカルトな空気をパタパタと反転させていくわけですが、それにしても違和感の残し方が絶妙だったなと思うんです。それぞれ気持ちよく解決していたかのように見えた事件に、もうひとつずつ奥行きが与えられる。すべてが神様の思し召しだったことがわかってくる。そして、第1話で残されていた「トリックじゃないほう」の神隠しで死んだ5人に残されていた謎も、実は人間に宿った神様が人間の身体ごと消されていた、つまりは、ヒルコによるホンモノの「神隠し」だったことが明らかになる。そうして、ヒルコ対神様という構図が鮮やかに浮かび上がる。
前回から今回の冒頭への流れは、本当にお見事だったと思います。明らかにヘンテコなことをやってるのに、むちゃくちゃ説得力を持ってファンタジーに転化してる。
■人間ドラマもちゃんとやる
もともとこのドラマはオカルト/アンチオカルトというジャンル以前に、人間ドラマとしても犯罪者や事件関係者の苦悩や欲望の醜さ、愛ゆえの悲劇みたいなところを繊細に描いてきました。第4話まではそれを「トリックを暴く」という作業と並行して語ってきたわけですが、その人間ドラマの描き込みの深度はファンタジーとなった今回も変わりません。
美容インフルエンサーといういかにも現代的なモチーフに対して、「人魚の肉を食べると不老不死になる」という伝説をあてがい、実際に不老不死になった美容家を登場させて、不老不死ならではのステキなファンタジーが語られました。
90年前に「来世でもまた一緒になろう」と約束した神様と不老不死の女性が、今世でもまた会えた。神様は肉体が死んでも転生するから、また来世も会える。その話を聞かされた不老不死の美容家は、直後に記憶を消されることになる。
「構いません。それでも必ず、必ず、彼と出会ってみせます」
キャー、ステキ。
文法としては第2話のキツネツキと同じ、怪しいことやってる悪者だと思っていた人が、実は深い愛情に突き動かされた誠実な人だったという人物配置の反転をやってるわけですが、設定に感情を乗せるのがホントに上手いと思う。
そうやって目いっぱい人間のドラマを見せておいて、最後に今度は興玉さんの部下である小夢ちゃん(広瀬アリス)まで「天宇受売命(あまのうずめのみこと)」という神様であるとか言い出した。天宇受売命は芸能を司る神様で、日本最古の踊り子とされているそうですね。そういえば小夢ちゃん、警視庁のカラーガード出身だったわ。おもろ。
『古事記』とか『日本書紀』とか、あんま詳しくないけどこれだけおもしろいということは、詳しい人にはめちゃくちゃブッ刺さってるんだろうな、これ。やっぱ素養があるとエンタメって何倍も楽しくなるんでしょうね。はー、ちゃんと勉強しておけばよかったと思いました。
あと、見事に伏線回収したって書いたけど、「モザイクスプレー」のことは忘れてないからな。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事