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【24年秋ドラマ】『海ダイヤ』朝子の恋心に気づいた鉄平、そしてボディブローを放ち続ける土屋太鳳の小技

【24年秋ドラマ】『海ダイヤ』朝子の恋心に気づいた鉄平、そしてボディブローを放ち続ける土屋太鳳の小技の画像1
神木隆之介(写真/Getty Imagesより)

 配信や録画で倍速せずに、じっくり見返したくなるエピソードだったと思います。神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は、第1話、第2話で物語設定やキャラクターの紹介をひとまず済ませ、恋愛ドラマとして盛り上がってきました。第3話「孤島の花」は、「軍艦島」の炭鉱会社に勤める主人公・鉄平(神木隆之介)に、幼なじみの朝子(杉咲花)が恋心を抱くようになった初恋エピソードを中心に描いた珠玉回でした。

 1957年、好景気で賑わう軍艦島に、映画プロデューサーを名乗る男・夏八木(渋川清彦)が現れ、島の若者たちが出演者オーディションを受けようと大騒ぎになるという内容でした。日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業した脚本家の野木亜紀子をはじめ、スタッフもキャストも映画が大好きなんだなぁと思わせる回でした。

 ミニシアター系で大ヒットした『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年)で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督は、イタリアのシチリア島出身で、シチリア島を舞台にしたノスタルジックな映画をたびたび撮っています。小さな島で映画のオーディションが開かれるという第3話は、トルナトーレ監督の『明日を夢見て』(1995年)が元ネタでしょう。

 食堂で働きづめの朝子が、一度も島を出たことがないという境遇なのは、やはりトルナトーレ監督の人気作『海の上のピアニスト』(1998年)を思わせます。映画好きな人たちの心をくすぐるものが『海ダイヤ』にはあります。

ぜいたくな3人ヒロイン制

 映画のオーディション会場で、朝子は「あら、私の初恋の人にそっくりだわ」という台詞のあるシーンを情感たっぷりに演じてみせ、会場に集まったみんなからの拍手喝采を浴びます。杉咲花の芝居のうまさを、改めて実感させた場面でした。

 もう1人、見逃せないのが朝子や鉄平とは幼い頃から付き合いのある百合子(土屋太鳳)です。自分の将来を決めかねている百合子は、両親が営む食堂を手伝う朝子に対して「いいわよね。何も考えずに食堂の娘してりゃいいんだから」など、嫌味の毒針をチクチクと刺してきます。

 映画のオーディションでは、大仰な演技でプロデューサーの夏八木からNGを出され、女王さま気質の百合子には女優としての才能はないことを露呈してしまいます。下手な芝居を演じるのって、逆にすごく難しいと思うんですよ。

 土屋太鳳が芝居の面白さに目覚めたのは、小学校の学芸会だったことが知られています。学芸会で土屋太鳳は日本酒のとっくりに見立てたペットボトルを片手に酔っ払ったオッサンを演じ、観覧していた父母たちから大絶賛されたそうです。その体験が、彼女の女優としての第一歩でした。土屋太鳳は運動神経のよさや体重の増減がクローズアップされがちですが、そうした人間くさい役を演じるのが大好きな女優でもあります。

 鉄平に対する恋心を絶妙に演じて見せる杉咲花に、ジャズシンガーとしての素養も見せたリナ役の池田エライザ。そこに土屋太鳳が加わり、幼なじみとして許されるギリギリ感のある嫌味のボディブローを次々と放っています。鉄平をめぐる3人ヒロイン制が、とてもぜいたくに思えてきます。

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