『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』銃撃シーンに込められた「モノづくりの執念」…これこそホンモノだ
#沖田臥竜 #インフォーマ
11月7日にABEMAでスタートするや大きな話題を呼んでいる『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』。今夜、その第2話が放送される。舞台の中心はタイ・バンコク。国内の撮影では実現しなかった様々なアクションシーンも大きな見どころだ。同作で原作・監修を務めた作家の沖田臥竜氏が、そんな中でもこの撮影地だったからこそこだわれた、銃撃シーンに込めた狙いと想いを振り返る。
タイという地の利を活かした撮影
今夜放送される『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の第2話の個人的な見どころとしては、なんといっても内トラ(映像業界用語で、スタッフや関係者らがエキストラとして出演すること)で、ABEMAの古賀プロデューサーが出演しているところである。
あの日、私は異国の地・バンコクで食中毒に襲われ、生死を彷徨っていた。はっきり言って食中毒をバカにしていた。
「ハッハハハハ! 食中毒で動かれへんかったんやと! そんなもん、ただの腹痛やけんけ! 腹痛なんて病気ちゃうぞ! ハッハハハハ!」
先に現地入りして食中毒になって動けなかったという『インフォーマ』の助監督であるフクの苦しむ声を聞いて、LINE電話越しに大笑いしていた。そのバチが当たったのだろう。食中毒は立派な病気であった。はっきり言って、あれは地獄だ。フクの言う通り、動けなかった。それでも、古賀プロデューサーの内トラがある。
ホテルから「ヒィヒィ」言いながら現場に向かい、ナイトクラブで女性たちに興じるという古賀プロデューサーの熱演シーンをこの目で確かめると、すぐさまホテルに戻ったのだ。そこから三日三晩、筆舌に尽くしがたい日々を、本当にだな、一歩でも動くと………すまない。第2話の見どころである。
第1話で何かに導かれるように、バンコクへと渡った木原慶次郎とポンコツこと三島寛治。バンコクで待っている者の実態が第2話から少しずつ明らかにされていくのだが、何より私がタイの地の利を活かし、こだわって監修したのが拳銃の撃ち方だった。
クライム・ノベルといったアンダーグラウンドの世界を描くときに欠かせないのが拳銃である。
だが、それらの作品が映像化されたときに、実際にどれだけ銃撃シーンの演出にこだわれているかといえば、皆無といってもいいのではないだろうか。街中で拳銃を無闇矢鱈にバンバンバンバンッと撃てば撃つほど、観てる側からすると興醒めしてしまうのだ。あれでは当たらないと。というか、トリガーに指をかける位置からして間違っているである。
多くの場合、右手人差し指の第1関節でトリガーを絞っていることが多いのだが、撃って見ればわかる。その撃ち方では、指先部分が巻き込まれて、引き金を引くのに邪魔になってしまうのである。
本来は、指先のももで絞るのだ。そして、トリガーには遊びがあるので、指先にかかる重さの変化を感じながら、銃弾を放つのである。その時、銃口がでかければでかいほど、反動で大きく上へと跳ね上がり、揺れるのだ。横揺れではない。縦揺れしか引き起こさないのだ。
次に目である。狙いを定めるのは、両目ではない。右目だけである。
スナイパーを想像すればわかるだろう。スコープを両目で覗き込んでいるか。いないだろう。片目で見るからこそ、標的に焦点を定めやすいのだ。
地の利を活かしたというのは、タイ・バンコクでは観光客用に射撃場があって射撃できる点だ。撮影までに、スタッフや俳優部の人たちに、実際に射撃を体感してもらえる。それがあるとないとでは、出来上がる映像がまったく違う。私が去年5月にシナハンでタイに行った時には、すでにそのことを考えていた。すまない。あなたは天才ですか?と言ってやってほしい。
第2話からは発砲シーンが多いので、そのディティールひとつにおいても、こだわっているところも見ていってもらいたい。作品づくりとは、そういった一つひとつの積み重ねが大事であり、それが作品のリアリティを高めていくのだ。
木原慶次郎とポンコツがトゥクトゥクで爆走するシーンや、第2話で姿を現した男は、シーズン1に出てきたあの男と同一なのか? そしてゆっくりと躍動し始める二宮和也演じる高野龍之介。重なり合う鬼塚拓真、二階堂、優吉……これ以上はよそう。喋り過ぎてしまいそうだ。
渋谷の街頭だけじゃなく、大阪でも地上波のCMでもSNSでも、インフォーマ・ジャックが続いている。これだけ盛り上がっているドラマを、すまないが、私は見たことがない。
ドラマが盛り上がれば、小説やマンガなどに携わってくれた人々にも響鳴して、それが大きな渦となり、世の中にムーブメントを起こそうとしている。誹謗中傷やスキャンダルで世間の耳目を集めているのではない。正々堂々と作品の強さで、これだけの盛り上がりを見せているのだ。それが、人々が熱狂する時の、本来あるべき姿ではないのか。商業メディアが「売らんかな」で作り上げる他人の不幸で盛り上がるのには、もう飽きただろう。
戦いの火蓋はもう切って落とされた。今夜の第2話も楽しみにしていてほしい。『インフォーマ』は決して裏切らない。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)
ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』
毎週木曜日23時~ABEMAにて放送
週刊タイムズの記者・三島(佐野玲於)は、世間を騒がせている〈闇バイト殺人事件〉の黒幕を調べるために、編集長の命でタイ・バンコクへ飛ぶことに。そこで三島を待ち受けていた人物は……2年前の〈火だるま殺人事件〉で三島に地獄を味わわせた、“インフォーマ”の木原(桐谷健太)だった。木原に翻弄されながらも取材を進める三島。そして2人の前に、インフォーマを名乗る謎の男・鬼塚(池内博之)が立ちはだかる。木原と三島は、〈闇バイト殺人事件〉で盗み出された”謎のブツ”をめぐり、鬼塚・そして現地マフィアと壮大な情報戦に巻き込まれていく——。
原作小説『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』
沖田臥竜・作/サイゾー文芸・刊/1400円+税
amazonなどネット書店、全国書店で発売中
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