『おむすび』第33回 「震災には真剣に向き合ってます」からの「西方沖地震」スルーって
#おむすび
今週に入ってから、とにかく米田結(橋本環奈)の表情が明るくなったこと、ちゃんと声に出してしゃべるようになったこと、物語のテンポが上がったことで、とりあえず見やすくなってよかったと感じていたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第33回。
前週までの1カ月半は「テンポ上げてほしいなー」と思ってたけど、ここ第33回にきて、2年飛ばしました。びっくりした。
振り返りましょう。
■「一瞬で高3になった気がする」じゃないんだよ
イケメン野球カッパ(佐野勇斗)に「甲子園に行って、米田結に告白する!」と告白され、毎日メールする関係になった高校1年の米田結。カッパもようやく練習に打ち込むようになりましたが、高2の春、夏、高3の春も甲子園出場を逃し、米田結は告白されることがないまま、あっという間に2年が過ぎました。これには結ちゃんも「うちらの高校時代、時間たつの早すぎ、一瞬で高3になった気がするっちゃけん」と、びっくりです。
高3の7月ですので、クラスメートはみんな進路を決め始めています。書道部の恵美ちゃん(中村守里)は教員になるために大学へ、幼馴染の陽太(菅生新樹)はITの会社に就職するんだそうです。リサポン(田村芽実)は東京の大学で、さらにギャル文化の研究に勤しむんだとか。ちなみに2年前にいい感じになりかけていた恵美ちゃんと陽太の関係は、全然変わってないようです。恵美ちゃん、確かに真剣な思いを抱いていたはずなんだけどな。ホント、このドラマは脇役の感情をゴミのように捨てていきます。ルーリー(みりちゃむ)がネグレクトに悩んでいたことも、スズリン(岡本夏美)が栄養失調に悩んでいたことも、単にお話を進めるきっかけとして使い終わったらポイ。「マキちゃんのお墓参りに行きたい」と切実に願って、仕事をほっぽりだしてまで糸島に帰ってきた姉の歩(仲里依紗)も、それから2年間、付き人と2人で温泉巡りを楽しんでいるようです。
じゃあそうやってみんなの事情を捨て置いて、2年間結ちゃんが何をしていたかといえば、男とメールをしていただけで、何も考えていなかったそうです。この期に及んで、進路について“白紙”なんだって。
そんな結ちゃんをカッパは2年ぶりに海辺に呼び出して、「今年は甲子園に行く」と宣言。ハギャレンからはリサポン以外の3人が卒業していて、みんなそれぞれに夢に向かって歩いている。そんな感じで、次回へ。
■2年飛ばしたのはいいんだけど
『おむすび』というドラマの何が気持ち悪いかって、誰も連続した時間を生きてないんです。映ってない間は存在していなくて、カメラが向いたら急に動き出す。高3の7月に結ちゃんが進路について白紙であるということは、マジでこの人2年間、カッパとのメール以外何も考えてなかったってことですからね。そういう人物を描いておいて、ドラマの主人公ですみなさん愛してくださいって提示されても、そう簡単に愛着も共感も持てないですよ。
陽太も野球部だったよね? カッパと同じだけ予選を戦ったはずだし、県内だから予選で当たった可能性もあるよね? 結ちゃんは書道部にも復帰したんだよね? 書道の全国チャンピオンである風見先輩の存在は、結ちゃんに何か影響を与えなかったの? 恵美ちゃんも全国レベルだったよね? 友達なら、いろいろ話してきたんじゃないの?
そして、これを言うのは反則だとも思うけど、平成16年から18年に飛んでるわけですよ。平成17年3月20日、結ちゃんにとっては高1の終わりですね、福岡県西方沖地震が発生して、糸島は震度6弱という大きな揺れを記録していますよね。別にフィクションだから都合よく事実関係つまむこと自体はあり得ると思うけど、『おむすび』は実際の阪神・淡路大震災を大きなテーマとして、物語の根幹に置いているわけです。
糸島の地震は、もし糸島に結ちゃんが暮らしていたとするなら、前を向いて歩きだした彼女にとって、震災の恐怖を思い起こさせるものだったはずなんです。
プロットの段階で、わかってたはずなんですよ。これ糸島が舞台だったら、高1の終わりに大地震がくるけど、どうしようか。震災がテーマだけど、どうしようか。
「ま、いっか」「飛ばしちゃえばいいんじゃね?」「関係ねえか」
そう考えた人間が、『おむすび』関係者の中にいるってことなんだよな。震災に真剣に向き合いましたってスタンスを打ち出しておいて、こういうことをやるんだよ。それが気持ち悪いんだよ。
今日はそんな感じです。明日からは切り替えていきましょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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