『おむすび』第32回 機動力に定評のあるカッパ、今日も真っ白なユニで会いに来る
#おむすび
6週目までの陰鬱な表情から一転、主人公の米田結(橋本環奈)がイキイキしてきたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第32回。今週は「おむすび、恋をする」ということで、今回は地元新聞に取り上げられるような高校野球のスター候補生の野球カッパ(佐野勇斗)と結ちゃんが両思いになった様子が描かれました。
急にラブコメだ。振り返りましょう。
■震災はエサまきでした
2週間にわたって毎日、カッパにお弁当を作っていた結ちゃんでしたが、野球部の監督から「余計なことすんな」と言われて意気消沈。カッパは毎朝毎夕、結ちゃんに会いに来てましたし、呼び出されればすぐ来ますし、ユニフォームもピカピカだし、あんまり練習してないみたい。寮から出る食事のほかに結ちゃんのお弁当を食べてたら、体重が激増しちゃったんだって。
そんなカッパが夕食時間に結ちゃん家を訪れ、外に呼び出して「震災の話してくれたべ」とか言いながら、あんなに落ち込んでいた結ちゃんが作ってくれるお弁当を残すわけないなどと真剣な表情で伝えます。そういえば、震災の話を聞いてしくしく泣いてましたね、カッパ。ここで、やっぱりこのドラマが震災当日を描くシーンをラブコメのエサまきとして使っていたことが明らかになりました。
この会話を経て、カッパのことが好きになっちゃった結ちゃん。すっかりハギャレンのたまり場となった結ちゃん家の居間でメンバーたちに「告っちゃえ」とそそのかされ、カッパを呼び出します。
機動力に定評のあるカッパ、またすぐ来ます。
しかし、結ちゃんが告白する前にカッパは「ごめんなさい!」「交際できません!」と先手を打ちます。いわく、自分は甲子園を目指しているから、甲子園に行ったら「米田結が好きだと言う」のだそうです。
カッパに「おむすびに手を出したら殺す」みたいなことを言ってた幼なじみの陽太(菅生新樹)も結ちゃんのことはすっかりあきらめたようで、書道部の恵美ちゃん(中村守里)を誘って海釣りなどしています。恵美ちゃん、意気消沈中の陽太の缶ジュースを空けてあげるなど、ちょっと陽太に気があるのかもしれません。
結果、お付き合いはしないけどメル友になりそうな結ちゃんとカッパ。どうなっていくのでしょうか。
■先週までより100倍いいんだけど
とにかく主人公が明るくなって、ちゃんと思ってることをしゃべってくれるだけで先週までよりずっと見やすくなってます。朝は朝ドラを見る、と決めて我慢してきた方々は、とりあえずひと安心してるんじゃないんでしょうか。まあ、これくらいでいいっちゃいいんだよな。テンポも驚くほど上がってるし。
テンポを上げることの弊害として、ますます脇役たちの生活や心境が見えなくなってきているということはあるんですよね。
例えばリサポン(田村芽実)は結ちゃんとカッパがデキてるっぽいという話を陽太から聞いたと言ってるわけですが、今まで陽太とリサポンが仲良くしてた描写はひとつもないし、むしろ敵視して、結ちゃんに距離を取らせようとしていたはずなんです。結ちゃんがギャルになるって決めたから敵視するのをやめるところまでは理解できるとして、結ちゃんのいないところでリサポンにゴシップを流すというのは、どういう心境なのか。そのくせ恵美ちゃんの前ではメランコリックに振る舞っているのは、いったいなんなのか。
15分のドラマでそんなこといちいち説明してる時間がないってことなんだろうけど、私たちは6週間のダラダラダラダラした停滞を体験していますのでね。テンポアップは歓迎だけど、カッパにしろ陽太にしろハギャレンにしろ、あんまり時間や距離や生活を無視して結ちゃんの都合だけで動かしてると共感できませんよという話です。脇役に共感できないと、主人公が裸の王様になっちゃうからね。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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