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「おしゃれ」無残 ニューヨーク5番街の変容 渋滞に響くクラクション、あつかましい歩行者

 高級ブランド店が並ぶ世界有数の「おしゃれタウン」ニューヨーク5番街が混沌としている。米国は11~12月がホリデーシーズンで、例年5番街は買い物客らであふれるが、今年はブランド店が最も集中する地域で工事が行われ、道路が大渋滞しているほか、トランプ前大統領が大統領選で返り咲きを決め、5番街にあるトランプタワーに支持者の街宣車が度々現れるなどけん騒に包まれている。オードリー・ヘプバーン主演の『ティファニーで朝食を』のロケ地でもあるが、おしゃれさを微塵も感じられない街になっている。

 5番街はマンハッタンのほぼ中心を南北に走る目抜き通りフィフス・アベニュー沿いの街をいうが、セントラル・パークの南端から、都心の憩いの場であるブライアント・パークまでの5番街は、高級デパートやブランド店が軒を連ねる華やかなショッピングタウンである。

 その中でもマンハッタンを東西に走る大通りの57th ストリートとの交差点は、それぞれの角にティファニー、ルイ・ヴィトン、ブルガリ、庶民を寄せ付けない超高級デパートのバーグドルフ・グッドマンが陣取る「5番街の中の5番街」だが、その場所が5番街で最も混沌とした地点になってしまった。

 フィフス・アベニューは北から南への一方通行だ。5車線あるが現在は2車線がバス専用レーンとなっており、一般車が通れるのは3車線のみだが、2ブロック先の55thストリートの手前で大掛かりな工事が行われているため実質1車線に制限される。

 さらにティファニーの隣にあるトランプタワーはニューヨーク市警察の重点警備地点で、警察車両が駐車していることが多い。現在はフロリダ州に住むトランプ前大統領がニューヨーク入りする際は、襲撃防止のため頑丈なダンプカーをフィフス・アベニュー沿いにすき間なく並べて駐車させる。このため、大渋滞が常態化している。

 

渋滞する5番街

 フィフス・アベニューは、もう少し北ではセントラル・パークの東端沿いに走る。メトロポリタン美術館あたりから57thストリートを渡り、その先の工事地点を過ぎ去るまで約2キロを走るのに1時間ほどかかることもある。

 マンハッタンは東西に横切る地下鉄は少なく、東西移動は車頼みで、57thストリートも慢性的に渋滞している。このため「5番街の中の5番街」の交差点は、手の付けられないほどの渋滞となる。

 ニューヨークはドライバーのマナーも悪く、その先が渋滞しているにもかかわらず、青信号だということで交差点に進入し、赤信号になって道路をふさいでしまう。これが繰り返されるため、南北も東西も、青信号になっても車が進めず、渋滞がさらに悪化する。

 米国ではむやみにクラクションを鳴らすドライバーが多い。「おしゃれタウン」はいたるところから、いらだちのクラクションが鳴り響き、品のない雰囲気に包まれる。

 品のなさに輪をかけているのは、トランプタワーに訪れるトランプ支持者の街宣車だ。選挙戦中から度々、頻繁に来ていたが、大統領選での勝利で威勢がよくなった。「TRUMP NOW」などと書かれた旗を何本も掲げ、音楽を流しながら行き交う。車体には「Fワード」と呼ばれる汚い言葉でバイデン大統領やハリス副大統領を中傷する文字が並んでいる。

 

5番街に現れたトランプ支持者の街宣車

 中には、渋滞で止まっている最中にオープンカーから体を乗り出して演説を始める支持者もいる。千鳥足の酔っ払いはいないが、東京・新橋のSL広場と似た雰囲気になる。

 

渋滞する5番街とトランプタワー前に現れた街宣車

 歩道も混とんとしている。人とぶつからないように歩くのに神経を使わなければならない。フィフス・アベニューの両サイドの歩道は、それぞれ幅約7メートルだが、警備のための柵などが置かれているため、実際はもっと狭い。

 1ブロックの歩行者数は1日平均で1時間5500人、休日では2万3000人にのぼる。車と歩行者、自転車などすべての交通量を合計すると、交通の70%は歩行者だという。

 現在、5番街のルイ・ヴィトンはビルの外装を商品であるラグジュアリートランクのデザインにしている。巨大トランクの出現は、今年のホリデーシーズン限定の5番街の名所となり、多くの歩行者が交差点で写真を撮っている。

 

トランクをデザインした5番街のルイヴィトン

 夢中になってスマホを向ける観光客の中には、赤信号も省みずに車道にはみ出す人もいる。車道でポーズを取り、ドライバーからクラクションを鳴らされても一切無視するアジア系観光客の姿が数多く見られる。歩行者の品も試されている。

 

5番街の人波
トランプタワーの写真を撮る観光客

 5番街は約200年の歴史があるが、10月、再開発計画が発表された。観光客の増加に対応するため車線を3つに減らし、歩道を現在より46%拡張するという。ニューヨーク市と5番街のビジネス関係者がまとめた構想で、パリのシャンゼリゼ通りのような5番街にするという。

 2028年から工事を始める計画だが、ニューヨークの渋滞事情を置き去りにした構想に、一部のニューヨーカーは「できるわけがない」と冷ややかだ。

言問通(フリージャーナリスト)

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆

ことといとおる

最終更新:2024/11/12 21:00
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