『おむすび』第31回 栄養士になる人のドラマで「初めての弁当」を映さないという大失策
#おむすび
スタートからの6週、1カ月半を「ギャルになる」「ならない」の往復運動に費やしたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第7週に突入。とりあえず「ギャルになる!」ということで、今週は「おむすび、恋をする」だそうです。
ずっとシケた面をしていた主人公の結ちゃん(橋本環奈)が明るい表情になっただけで格段に見やすくなりました。いやー、思い返すもしんどかった1カ月半。
というわけで第31回、振り返りましょう。
■急に早い
先週、偶然にもイケメンカッパ(佐野勇斗)の目の前でバターンと倒れ、助けてもらった結ちゃん。そのお礼をしたいと、いつもの防波堤にカッパを呼び出します。
何かほしいものとかないの? と聞く結ちゃんに、カッパは「スタミナ!」とバカみたいな答え。これを真に受けた結ちゃんは次の日、おばあちゃん(宮崎美子)に豚レバーを使った弁当を2つ作らせ、ひとつをカッパに進呈するのでした。
カッパにあげたのではなく1人で2つ食べたと言い張っていた結ちゃんでしたが、カッパに渡した弁当箱にお礼のメッセージがついていたので、あえなく真相が発覚。ママ(麻生久美子)は「だったら自分で作らなきゃ」と言い出し、結ちゃんの弁当作りライフが始まったのでした。
『おむすび』はギャルが栄養士になるお話と聞いていましたが、ここで急に「栄養士になる」の前振りが放り込まれたことになります。
翌日から、おばあちゃんに手伝ってもらいながら自分で弁当を作り始めた結ちゃん。カッパのリアクションが気になり、昼休みには何度も「センター問い合わせ」(懐かしい!)しちゃうくらいソワソワですし、「うまかった!」とメールが来れば大喜び。ああ、「おむすび、恋をする」ですね。
その後もおばあちゃんと料理本を頼りに毎日お弁当作りに励んだ結ちゃん。カッパとの距離もぐんぐん近づいておりますが、2週間がたったころ、そんな楽しい日々は唐突に終わりを告げることになります。
カッパと野球部の監督が結ちゃんの家を訪ねてきました。監督は「うちのエースを潰す気か」と穏やかじゃありません。
聞けば、カッパの野球部は全寮制で、食事管理も徹底している。それなのに、カッパはここのところ急激に体重が増えて、体のキレもなくなった。問いただしたら、寮が出している食事とは別に、毎日結ちゃんからもらった弁当を食っているという。余計なことをしないでいただきたい。とのこと。
早くも、「結ちゃん栄養士になる」の第1章が完結です。急に話が早くなって、今までのトロトロ運行がウソみたい。
■その弁当を見せろ
栄養士への道を歩き出すきっかけが「男に作ってやるため」だったことは、ご時世的にちょっと議論を呼ぶかもしれませんね。男女における役割の押し付けがどうこうという。個人的には別に不自然には感じませんでしたし、何度も言うけど主人公が楽しそうなだけで大丈夫なんだよな。『おむすび』というドラマは、今そういう状態にある。逆に言えば、物語や設定について深い議論や考察をするほどのものにはなってないと思う。
ただ、結ちゃんが作った弁当を一度もちゃんと映さないのは、ちょっと本気でどうかしてるんじゃないかと思うんですよ。
栄養士になる人が、生まれて初めて栄養を意識して弁当を作った。その「豚と玉ねぎのニンニク炒め」の入った弁当を、なぜ撮らないのか。
このヤバさ、わかってんのかな。例えば『大谷翔平メジャーリーグへの道』というドラマを作るとして、大谷が少年野球で生まれて初めてホームランを打つシーンがあったとしましょう、この弁当を映さないということは、そのボールが柵を超えた瞬間を撮らずに相手チームの一塁手を撮ってるという、それくらいヤバい演出ですよ、これ。
おおむね、ドラマ全体としては今週からすごく見やすくなったし、主人公が能動的に動き出したことは全面的に歓迎したい。でもね、マジで弁当をちゃんと見せなかった演出の意図についてはホントに小一時間問い詰めたい。「それ」からすべてが始まったんだろって。何をおいても「それ」だろって。そんな感じです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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