【24年秋ドラマ】『ライオンの隠れ家』第5話 穏やかなホームドラマと情報過多のミステリーが両輪で回ってない
#ライオンの隠れ家
前回、キャバクラの外階段でタバコをふかしていた橘愛生(尾野真千子)を見て「生きていた橘愛生は新宿でホステスをやっているようです」と書きましたが、バックヤードでしたね。オノマチならキャストでいけると思い込んじゃってたな。
というわけで、ドラマ『ライオンの隠れ家』(TBS系)も第5話です。振り返りましょう。
■ようやく合流
ASDの青年・みっくん(坂東龍汰)と、その兄の市役所職員・ヒロト(柳楽優弥)が穏やかな暮らしを営んでいた家に、突然、天真爛漫な正体不明の未就学児・ライオン(佐藤大空)がやってきて、てんやわんや。みっくんはライオンとの交流を通して自らの世界を広げはじめ、そんなドタバタを兄のヒロトも「疲れるなぁ……」なんて言いながら喜ばしく思っている。
リニア利権がうごめく山梨の山村で一組の母子が姿を消す。その母、橘愛生はヒロトの姉であり、ライオンの母親であるらしい。愛生は自らの血液を付着させた衣服を現場に残し、自死もしくは事故死を偽装して姿を消す。そして謎の男「X(岡山天音)」の協力を得て夜の新宿に潜んでいたが、事件を追う週刊誌記者・工藤楓(桜井ユキ)によって生存していることが暴かれてしまい、また新たな逃亡生活が始まる。
という2本の大きなストーリーを同時並行でお送りしてきた『ライオンの隠れ家』でしたが、今回、ようやく関係者が一堂に集まるところまでやってきました。
謎の男「X」は、愛生が依頼した“逃がし屋”でした。愛生はライオンに「迎えに行く」というメッセージを託してヒロト家に避難させ、自身は死んだことにして一時的な逃亡生活に入っていた、ということのようです。しかし、ライオンへの思いが募り、「X」との契約を打ち切ってヒロトに連絡を取り、ライオンに会いに行くことにします。
白昼、千葉の遊園地。ヒロトはみっくんとライオンを連れてきています。愛生は帽子を深くかぶって、向こうから歩いてきました。ヒロトが事件に関わっていると睨んで尾行してきた記者の工藤もいるし、ヒロトの同僚で「X」ともつながっている牧村さん(齋藤飛鳥)もやってきて、母子の再会を阻止しています。ついでに山梨の警察もきて、愛生を逮捕しちゃいました。
あいかわらず情報量が多いし謎だらけですが、ようやくミステリーパートも配置の説明を終えて解決に向けて動き出したようです。
警察に連れていかれた愛生は、取り調べに対して「私が息子を殺しました」とか言ってましたね。どうやら母子とも死んだことにしたいようで、夫(向井理)から逃げるためなのかな、という感じで次回へ。
■疲れるなぁ……
遊園地で仲良く遊んでるみっくんとライオンを見ながら「なんだよ、疲れるなぁ……」と穏やかな表情でつぶやく柳楽優弥が今回のハイライトでした。
予定外の事態が発生すると、必ずパニックを起こしてしまうみっくんとずっと暮らしてきたヒロトは、何事もなく、平穏であることを最優先に生きてきました。
そんな生活にもすっかり慣れ、みっくんのASDに対処しながら生きていくことに「疲れなく」なっていたところに、ライオンが現れたわけです。
それからというもの、ヒロトとみっくんの生活はイレギュラーだらけ。みっくんのパニック発動回数も飛躍的に増えたわけですが、その一方でみっくんの見たこともない表情を見ることができたし、みっくんが初めて自分たちを絵に描いてくれるという僥倖もあった。
ようやくライオンを母親に会わせる日が来ましたが、ヒロトはやすやすと愛生にライオンを引き渡すつもりはない。愛生の現状や考えを聞いたうえで、判断しようとしている。だから、「疲れたなぁ」じゃなくて「疲れるなぁ」なんですよね。現在進行形なわけだ。
このへんの丁寧なセリフ回しと俳優部の柳楽・坂東・佐藤のすごい芝居があるので、そっちの平和な世界観に浸ってるほうが心地いいんだけれども、「X」とか桜井ユキとかが出てくると「あ、そうかミステリーだ」とリセットがかかってしまう感じがある。右耳と左耳から、違う物語を聞かされているような感じというか。
これ、おもしろいかおもしろくないかでいえば、けっこうおもしろいと思うんですが、気持ちいいかどうかでいうと、けっこう気持ちよくないんだよな。ミステリーとしても出来が悪いわけじゃないけど、両輪で回ってない。邪魔してる印象が否めない。まあ、第2話でも書いたけど、坂東龍汰のASD芝居が、当初の作り手の想定を超えて視聴者に刺さってしまっているということなんだと思いますけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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