【24年秋ドラマ】『わたしの宝物』第4話 偶然を巧みに操る精神的スプラッター 生き地獄ショーが始まる
#わたしの宝物
不倫相手との間にできた子どもを夫の子だと偽って育てていくことを決意した“托卵妻”を描くドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)も第4話。こういうの、黙ってりゃバレないんだろうし、不倫相手とももう会わなきゃいいだけなんですけど、ドラマですから、そうはいきませんね。偶然出会っちゃうし、いずれバレちゃう。
今回は、バレちゃう寸前までの段取りをつける回となりました。振り返りましょう。
■それはもう不倫じゃないのだけど
前回、アフリカで死んだはずの不倫相手・冬月(深澤辰哉)が突然目の前に現れてしまい、抱きしめられてしまった“托卵妻”のミワさん(松本若菜)。表では旦那が子どもを抱いて待っていますし、なんとかその熱烈な抱擁を振り払ったものの、心は乱れに乱れてしまいます。
なんにも知らない夫のヒロキ(田中圭)はそんなミワさんを気遣い、「産後うつ」について調べてみたり、馴染みの喫茶店のマスターやミワさんの親友であるマコト(恒松祐里)に相談したり、夜な夜な寝床から這い出してミワさんの大好きなシチューを作ったり、改めて「ありがとう」とか「愛してる」と言ってくれたり、以前の凶悪モラハラっぷりがウソのような最優秀イクメンとなっています。
一方、こっちもなんにも知らない冬月はミワさんに電話もメールもシカトされてハートブレイク気味。「夏野(ミワさんの旧姓)が幸せならそれでいい」「最後に会って話したい」との思いも、ミワさんには届きません。
こうしてミワさんは冬月への思いを断ち切り、ヒロキと幸せに暮らしました。
だったら話は簡単なのですが、ドラマなのでそうはいきません。ミワさんがマコトの経営する雑貨屋でハーブティーを飲んでいると、偶然、フェアトレード商品の売り込みにきた冬月と再会してしまいます。
互いに知らない人同士のフリをするミワさんと冬月でしたが、雑貨屋のスタッフとミワさんとの雑談から、冬月はミワさんに赤ちゃんが生まれて、旦那と楽しく暮らしていることを知ってしまいます。
知られたからにはちゃんと話そうと思ったミワさん、冬月に電話をかけて、2人の思い出の場所である給水塔の広場に呼び出しました。改めて旦那と暮らしていくことを冬月に告げるミワさん。冬月はしくしくと泣き始め、ミワさんに抱きついてきます。そんな冬月を、優しくよしよしするミワさん。それはもう不倫じゃないし、恋愛感情でやってるわけじゃないんですが、忘れ物を持って追いかけてきた親友のマコトに目撃されてしまうのでした。
次週、「ヒロキさんは私の推し」と公言するマコトが、夫婦に波乱を巻き起こすようです。
■ご都合主義満載なわけですが
黙ってりゃバレないし、もう不倫相手とも会わなければいいだけ。ミワさんはその基本的な原理原則を堅実に守ろうとしていますが、ドラマは偶然によって冬月と再会させるし、偶然によって抱擁現場をマコトに目撃させます。
このあたり、徹底的にご都合主義なわけですが、私たちは待ってるんですよね。全部がバレて、ぐちゃぐちゃになるところを見たいと思ってる。そういう視聴者の期待を作り手側が理解しているから、こういう「偶然」の乱発を押し通してくる。そういう作り手と視聴者の共犯意識をうまく利用した作劇が行われているわけです。
文法としてはホラーなんですよね。恋人同士がイチャイチャしてたら、無差別殺人鬼の登場を待ち焦がれてしまう。偶然でもなんでもいいから、そこに現れて殺しちゃってほしいと思ってしまう。それと同じことが行われているわけです。
ホラーなら死んじゃえばいいんだけど、ミワさんやヒロキは殺してはもらえませんので、そこらへんのホラーより恐ろしいことが起こっていくことになる。
生きたまま人間を焼いたら、どうなるだろう。人間の肛門を、他人の口と縫い合わせて何人もつないでムカデみたいにしたら、楽しそうだな。このドラマを作っている人のメンタリティは、どちらかといえばそういうスプラッターな趣向だと感じます。
さぁ、生き地獄ショーの始まりです。楽しみですねえ、次回。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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