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警察官向け「UFO対応ガイド」! 未確認異常現象に真剣に取り組み始めたアメリカ

※イメージ画像:GettyImagesより

 米国の警察内部に、未確認飛行物体(UFO)の「目撃情報」などに対応する手引書が存在することがわかった。主要都市の警察トップらによってまとめられたもので、市民と現場の警察官の安全を守るための心構えなどが記されている。米国では未確認異常現象(UAP)について、軍や連邦議会が真剣に取り組み始めた。市民と直接向き合う警察も未確認異常現象への対応に迫られている。

 手引書は11ページのカラー刷り。表紙には夜の町を照らす強い光と警察官の後ろ姿のイラストが描かれ、「Reference Guide(参照ガイド)」のタイトルの下に未確認異常現象を示す「Unidentified Anomalous Phenomena(UAP)」とある。

 ニューヨークやロサンゼルスなど米国の70の主要都市と、トロントなどカナダの9都市の警察本部長らで組織する「大都市警察署長協会(MCCA)」が今年6月にまとめ、両国の警察署長に配布された。

 セクション1から11で構成され、セクション1には未確認異常現象について報じられたニュースの要約を掲載し、セクション2には警察としての考え方が示されている。セクション3は過去の政府の取り組み、セクション4は内部告発者の証言内容などが紹介されている。セクション5は連邦議会の、セクション6は国防総省の、セクション7は他国の、セクション8は米航空宇宙局(NASA)の、セクション9は米連邦航空局(FAA)の、それぞれの取り組みが並び、セクション10には通報機関について記され、セクション11で重要点をまとめている。

 セクション1では、中国の偵察気球などを含めた未確認異常現象が国の脅威になっていること、米国では西部で未確認異常現象の報告が多い傾向にあることなどを紹介している。
またセクション3では、全米にUFOブームを引き起こした1947年の「ロズウェル事件」や、1964年の米中央情報部(CIA)によるUFOについての見解など、過去の注目度の高いトピックを記した。

 警察としての対応のあり方などが盛り込まれたセクション2では、「未確認異常現象は、その現象が及ぼす力と起源が不明なため、国家の安全保障に対する明らかな脅威になっている」との政府機関の考え方を紹介した。

 そのうえで「これらの現象や物体が外国の政府や団体によるものの可能性もあり、(米国の)機密データを収集し、攻撃を仕掛けてくる可能性もあると一部の政府機関は推測している」と指摘し、中国やロシアなどによる軍事・偵察活動であることも念頭に置かねばならないことに言及している。

 そして「これまで未確認異常現象によって民間人に危害が加わったことは報告されていないが、その脅威の度合いは不明であることから、未確認異常現象の傾向を把握することは警察組織のためになることだ」として、情報取集の重要性を現場に伝えるよう促している。

 また、警察組織内に共通の情報収集システムなどはなく、どのようなシステムが必要かどうか、まだ結論がでていないと現状について記している。

 手引書は、具体的な行動指針を定めるのではなく、政府機関や連邦議会、軍の取り組みを列挙することで、現場警察官の未確認異常現象への関心を高めることが狙いだ。

 未確認異常現象については、軍などの中ではタブー視されていた。特に空軍のエリート戦闘機パイロットは、訓練中などに正体不明の物体を目撃しても、上官などに報告することはしなかった。

 「UFOを見た」などと報告すれば、「どうかしてしまった」と軍内で扱われ、エリートパイロットとしての仕事をなくしてしまう恐れがあったからだ。

 ところが、未確認異常現象や物体の中には、中国やロシアが開発した兵器が含まれている可能性があった。

 戦闘機のパイロットが目撃したことを軍に報告しなければ、米軍内での分析も行われないため、中国やロシアにとっては「やりたい放題」となる。

 こうした状況に気づいた米軍は、2015年に大きな軌道修正に踏み切った。これまでに正体がわからない物体や現象があったことを認め、未確認異常現象を積極的に報告するよう軍内に呼びかけた。同時に現象や物体についての分析をして、現象などの特定を進めている。

 こうした中で、警察が未確認異常現象についての市民からの通報を真剣に受け取らなければ、いつか警察が批判の的になってしまう恐れがある。

 2023年5月、ラスベガスの住宅の裏にUFOのようなものが墜落し、巨大な生物がいるとの通報があり、警察官が現場に駆けつけた。証拠はなく、捜査はすぐに打ち切られたが、メディアで大きく取り上げられ、ソーシャルメディアで世界に伝わった。

 警察は「未確認異常現象」というつかみどころのないものと、荒れ狂うと手に負えないソーシャルメディアでの拡散に身構える。

 米国の調査会社ギャラップの調査では、UFOの存在を信じる人は2019年に33%だったが、2021年には41%に増加した。英国の調査会社YouGovが米ニューズウィークの調査数字と比較した統計では、1996年に20%だった「UFO信者」は2022年には34%になった。フランスに本社があるIpsosの2023年の調査では42%の米国人がUFOや宇宙人の存在を信じている。

言問通(フリージャーナリスト)

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆

ことといとおる

最終更新:2024/11/10 10:00
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