【24年秋ドラマ】『若草物語』第4話 周囲の人間を餌食にしていく創作の「下品さ」に自覚的であること
#若草物語
恋愛について興味も経験も全然ない脚本家志望の女性が、いろいろあって恋愛ドラマの脚本作りの仕事に携わっていくことになるドラマ『若草物語 ─恋する姉妹と恋せぬ私─』(日本テレビ系)も第4話。先週の日曜は選挙特番があったので、1週飛ばしの放送となりました。
1週飛ばすと連ドラというのは、どんな感じだったっけ、とけっこう印象を忘れてしまうものですが、はいはい、やっぱおもろいわ。振り返りましょう。
■「文才がある」と誰に言われるか
絶賛制作中の恋愛ドラマを担当する大物脚本家・大平かなえ(筒井真理子)にその才能を見初められ、第3話のプロットを担当することになったリョウ(堀田真由)。大平かなえからは「主人公が自分の恋を自覚する瞬間」の描写がキモになると指導されていますが、実際に恋を自覚したことのないリョウにとっては結構な無理難題で、当然、筆は進みません。
しかも、服飾の専門学校に通う妹・メイ(畑芽育)の学費が50万、住んでいる一軒家の更新料30万という出費が重くのしかかり、精神的にもあんまりよろしくない状態。お金の心配とクリエイティブな作業というのはマジで相性が悪いですからね、集中できないまま書き上げたプロットは大平かなえにあっさり却下されてしまい、リョウは思わず幼なじみのリツ(一ノ瀬颯)に「助けて」なんて弱気なメッセージを送ってしまいます。
リツは優しいし、密かにリョウのことが好きですので、お金を貸そうか? と言ってくれますが、リョウにとってはそういうことではありません。もう仕事もあきらめようかと愚痴るリョウに、リツはお金より尊いお言葉をくれるのでした。
「リョウには文才がある」
こういうのは、誰が言ってくれるかが問題なんですよね。「あなたには才能がある」と言われて、心に灯がともる相手。その人がクリエイターにとってもっとも必要な人なわけです。リョウはリツと話をしていてやる気が出てきましたので、まあそれが恋とは違う関係でももっとも必要な人であるわけですが、そんな自覚はリョウにはありません。だから、このときの会話によって直接「主人公が自分の恋を自覚する瞬間」が描けるようになるわけではない。
ところで、リョウたち姉妹には恋愛体質のママ(坂井真紀)がいて、そのママが急に家に帰ってきました。ママはデイビッドという名前のパイロットと出会い、結婚することにしたと言います。ママにとってそれは5度目の結婚だそうです。デイビッドはお金持ちだそうですが、弟の心臓手術のために30万貸してほしいとママに頼んでいるそうです。
どう考えても国際ロマンス詐欺というやつですし、リョウたちもママを説得して一度はママも納得しますが、姉妹が寝ている間にリョウが消費者金融から借りてきた30万をくすねて姿を消してしまいます。「人に迷惑をかけてでも幸せになってほしい」それがママの残したリョウたちへのメッセージでした。
完全に“詰んだ”状態の3姉妹。メイちゃんも専門を辞める決意をしますが、リョウはこの恋愛体質のママをモデルに「自分の恋を自覚する瞬間」を描き、見事にプロットを通してギャラをゲットしてみせるのでした。
■「才能とは欠落である」とドラゴンは言った
村上龍は小説『ラッフルズホテル』の中で、才能とは過剰ではなく欠落であって、その欠落を埋める作業こそが表現であるというようなことを言っていました(うろ覚え)。このドラマでは、リョウという駆け出しの脚本家の才能がいかにして引き出され、具現化されていくかという過程が描かれていくようです。
今回は、リョウの欠落として「どうしようもないクソ母親」が出現し、それを具現化することで一歩前に進んでいる。その一方で、リョウ自身の欠落についてはまだ本人が自覚していないため、形になっていない。
その形になっていないリョウの欠落が、大平かなえとリツが結託していることで今後、徐々に引き出されていくという予感がある。
一方で、リョウにとってもっとも身近な存在であるメグ姉やメイも不穏な恋愛をしているようです。彼女たちもまた、リョウのモデルとして創作の餌食になっていくのかもしれません。「劇団、本谷有希子」の名作『腑抜け床、悲しみの愛を見せろ』の妹ちゃんみたいな雰囲気も出てきました。
と、若き創作者の成長譚としてとってもおもしろくなってきた『若草物語』なんですが、ところどころすごく下品なんですよね。第1話のトガり切ったリョウの言い分とか、今回のママの暴挙とか、メイちゃんはすぐイケメンと寝ちゃうし、お姉ちゃんの前で平気でキャバクラの求人を眺めてたりするし、ちょっと人としてどうなのよ、と思われるシーンが平気で出てくるんです。
そういうとこ、気に入ってるんですよねえ。そもそもドラマなんて、ウソ人間のウソセリフを書いて、それで金を稼ごうだなんて、下品で不遜なことだもんね。ちっとも美しい行為じゃない。その下品さに自覚的であるところが、この作品を愛せるもっとも大きな理由です。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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