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『金ロー』を独自視点でチェック!【13】

『ゴジラ-1.0』が地上波初オンエア、山崎版ゴジラの誤った“破壊目標”

『ゴジラ-1.0』が地上波初オンエア、山崎版ゴジラの誤った破壊目標の画像1
(写真/Getty Imagesより)

 山崎貴監督の大ヒット映画『ゴジラ-1.0』(2023年)はまだソフト化されておらず、Amazon Prime ビデオでの配信しかなかったので、テレビ放送を待ち望んでいた人たちは多いことでしょう。11月1日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、地上波初放映となる『ゴジラ-1.0』の登場です。本編ノーカット、35分拡大でのオンエアになります。

 ゴジラ生誕70周年記念作となる『ゴジラ-1.0』は、庵野秀明監督による前作『シン・ゴジラ』(2016年)の国内評価が高かったことから、山崎監督はかなりのプレッシャーを感じていたとのこと。しかし、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)や『寄生獣』(2014年)などでCGと実写をうまく融合させてきた山崎監督だけに、ゴジラが放射熱線を吐くシーンなどは大変な迫力があります。

 米国のアカデミー賞では、アジア初となる視覚効果賞を受賞。世界興収は140億円を超える大ヒット作となりました。そんな『ゴジラ-1.0』の見どころと、気になる問題点を改めて考察してみたいと思います。

戦没者たちがモンスターとなって日本を襲う

 これまでのゴジラは、オリジナル作『ゴジラ』(1954年)の続編としてシリーズ化されてきました。太平洋戦争に敗れた日本は、1950年代以降に目覚ましい高度経済成長を遂げますが、戦争や災害のメタファーである大怪獣ゴジラが平和になった日本を襲うというのが定番でした。『ゴジラ-1.0』は戦後間もない1946年~47年の物語となっています。まだ戦争の傷が癒えない時期に、ゴジラは容赦なく襲ってくるのです。

 山崎監督は『三丁目の夕日』で東京タワーを建設中の1950年代、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』(2011年)で東京五輪が開催された1960年代、『永遠の0』(2013年)や『アルキメデスの大戦』(2019年)で第二次世界大戦を描いています。まだきちんと描いていなかった終戦直後の日本を物語にしてみたかったのかもしれません。

 主人公となるのは、元特攻兵の敷島(神木隆之介)です。零戦の操縦は得意だったものの、米軍に特攻することができずに生きて戦地から戻ってきました。しかし、東京をはじめ日本はありとあらゆるところが、焼け野原状態。死んでしまった戦友や家族に対する罪の意識に敷島は苦しみます。ちなみに「敷島」とは、「大和」と同じような日本の古い呼び名でもあります。

 そんな敷島が闇市で出会うのが、典子(浜辺美波)です。戦災孤児となった乳児の明子を抱えた典子を放っておくことができず、バラック小屋での血の繋がらない3人の擬似家族の生活が始まります。機雷処理という危険な仕事を請け負うことで敷島は生活費を稼ぎ、典子、明子と暮らすことが彼の生きがいとなっていきます。

 敷島がようやく幸せの予感を感じ始めた矢先に、ゴジラが現れます。終戦直前にもゴジラに遭遇していた敷島の目には、1946年の米国による水爆実験で放射能を浴びて巨大化したゴジラは、戦争で亡くなった人たちがモンスターになって甦ってきたように映ります。

日本政府も米軍も当てにならない

 重巡洋艦「高雄」とゴジラとの海上での交戦に続き、東京に上陸したゴジラが銀座で暴れ回るシーンは、『ゴジラ-1.0』の大きな見せ場です。有楽町にあった日劇ホールは、ゴジラによってあっけなく破壊されます。さらにゴジラは放射熱線を吐き、国会議事堂も木っ端微塵にしてしまいます。この熱線を吐く様子は、ゴジラの背びれがカチッカチとせり上がり、まるでカウントダウンが進んでいくかのような緊張感があります。山崎監督のこうした特撮マインドにはうっとりさせられます。

 本多猪四郎監督の初代『ゴジラ』は核開発競争を、庵野監督の『シン・ゴジラ』は東日本大震災および福島第一原発の暴走をモチーフにしていました。山崎監督の『ゴジラ-1.0』はコロナ禍で企画が進められたこともあり、コロナ禍でコロコロと政府の対応が変わったことへの不信感が根底にあるそうです。日本政府も米軍も当てにせず、日本の民間人の底力を見せてやろうぜ、というのが『ゴジラ-1.0』のメインテーマとなっています。

 制作費10億円ちょっとで、これだけの特撮大作に仕上げてみせたことが高く評価され、米国のアカデミー賞視覚効果賞ほか多くの賞を受賞しました。大ヒット作となり、称賛の声一色になっていきましたが、公開当初は問題点を指摘する声も少なくありませんでした。後半はそうした部分を取り上げてみたいと思います。

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