【24年秋ドラマ】『全領域異常解決室』第4話 「オカルトを科学でぶった切る」のその先にあるロマン
#全領域異常解決室
『全領域異常解決室』というタイトルからして、全部の領域で発生する異常を解決するための組織だと思っていましたし、これまでの3話ではオカルティックな事件に対して、いちおう論理的な解決が与えられ「オカルトに見えても実は科学的に証明できるよ」というニュアンスが発せられていたので「オカルトを科学で解明するドラマ」として見てきたわけです。
第4話、事件が解決したのちに局長の宇喜之さん(小日向文世)が言うんですね。
「丸く収めるのが我々の役目です」
思い返せば第1話から、室長には随時、謎の神様「ヒルコ」の世間的知名度や影響力についてのデータが報告されていました。目下、ヒルコとみられている少女(福本莉子)と局長のつながりもたびたび示唆されてきましたし、主人公の興玉さん(藤原竜也)はたびたび「すべてを知ろうとするのは人間の傲慢だ」と言っている。
どうやらこのドラマに設定されている(と、こっちが勝手に決めつけていた)リアリティラインを引き直さなければならなくなりそうな第4話、振り返りましょう。
■あいかわらず事件は凝ってる
今回は、大手町の超エリートビジネスマンが4人も続けて飛び降り自殺をしているという異常事態を調べることになった興玉さんとバディの小夢さん(広瀬アリス)。4人の業種はそれぞれですが、いずれも国家プロジェクトにかかわるような重職に就いていて、同じ大学の同窓生、さらに、遺品の中に同じ移動販売のパン屋さんのスタンプカードがありました。
例によって、ヒルコからの犯行声明も出ています。それは、4人のビジネスマンに天罰として縊鬼(いつき)という妖怪に憑りつかせて自殺に追い込んだというもの。
このパン屋さんをやっているのは、海外から留学に来た若い女性で、売りはオーガニックのパン。よくいう「小麦の味がするね~」というタイプのパンで、亡くなった4人も足しげく通っていたそうです。
興玉さんたちがそのパン屋さんの調査に来ていたそのとき、すぐ近くで5人目の自殺者が出ました。この5人目も同じく超エリートで、ほかの4人と同じ大学出身で、同じスタンプカードを持っている。いよいよパン屋が怪しくなってきました。
調べを進めると、自殺した者たちはみな「縊鬼」に会ったと言っている。ヒルコの犯行声明とも一致し、オカルトによる連続自殺という形が出来上がりました。
ここから、興玉さんたちがこのオカルトを科学的に突き崩していくことになるわけです。
結論から言って、自殺した5人は薬物中毒者で、うら若き留学生に出資して作った移動販売のパン屋をドラッグ流通の中継点として利用していたのでした。コカインと、パンに含まれていた麦角アルカロイドという病気の小麦が持っている菌の相互作用によって錯乱状態に陥り、自殺したとのこと。5人のうち1人は薬物をやっていませんでしたが、こちらはインスタ映え仮面夫婦をやっているエリート妻がありながらパン屋の留学生と不倫をしていて云々というお話でした。
このドラマの長所として、事件回りの人間関係の配置と描写にすごく気を配っていることがあります。オカルトと科学、という謎解きのテンプレートとは別に、個別の事件それぞれがちゃんと見ごたえのあるミステリーになっているし、事件解決後にも「人間ってなぁ……」という余韻を残すことに成功している。いわゆる「事件にニンが乗っている」ので、事件や関係者そのものに魅力を見出すことができる。
そのうえで、今回も「科学で解決」はそれなりに納得感のあるものでしたので、たいへん満足いたしました。
■「オカルトvsオカルト」へ
それはそれとして、全領域異常解決室が解決を目的としているわけではなく「丸く収める」ことが役割だという話。
今回、解決室の“非正規職員”だというデリバリー男の芹田さん(迫田孝也)に特殊能力があることがわかりました。走り去った車がどこに行ったのか、頭に手をかざして「うーん」とやると、わかるという能力です。
こうなってくると、「オカルトvs科学」という構図から「オカルトvsオカルト」に変わってくるわけです。「オカルトを科学で解決」のその先まで見えてくるということです。
オカルトを科学ぶった切るのは爽快感あるけど、オカルトはオカルトでロマンもありますからね。その両輪をどんなバランスで組み上げていくのか、さらに楽しみになってきました。
(文=どらまっ子AKIちゃん)
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